日本遺産認定 津和野百景

有形、無形の文化財をつなげて1つのストーリーとして紹介する「日本遺産」に初認定された「津和野今昔~百景図を歩く」。決め手となったのは、幕末の津和野藩の風景や風物を描いた『津和野百景図』と、今も往時の面影を残す町並みや風習の数々。ならばと、百景図を片手に、江戸の城下町の痕跡を探しにいざ出発!

漫画で日本遺産の町 津和野を読む

津和野百景図ってなに?
漫画で日本遺産の町 津和野を読む

島根県 津和野町のイラスト

津和野の成り立ちと町の全貌を知ろう!

町歩きを始める前に、まずは津和野町の歴史と町の全体像をチェック。城下町としての津和野の歴史は、鎌倉時代までさかのぼります。蒙古襲来の警備のためにやって来た、吉見氏によって津和野城が築かれたのがその始まり。江戸時代になり、新たに藩主となった坂崎出羽守直盛のもとで城の大改築が行われ、あわせて城下町も整備されました。1616(元和2)年に「千姫事件」で坂崎氏が失脚すると、代わりに因州出身の亀井家が明治維新まで11代にわたって津和野藩を治めました。

『津和野百景図』は、津和野藩の最後の藩主・亀井茲監(これみ)の業績をまとめた「以曽志乃屋文庫(いそしのやぶんこ)」に納められた文書の1つです。御数寄屋番だった栗本格齋がおよそ4年の歳月をかけ、町の風景から自然、祭事、名産品に至るまで丁寧に描いた100枚の絵とくわしい解説は、往時の町のにぎわいを克明に写し取っています。

町の中心となるのは、なんといっても標高367メートルの城山に築かれた津和野城。山をぐるりと取り囲むように流れる津和野川は、いわば天然のお堀です。

津和野町の古い絵図を見てみると、城から山を下りたところには御殿があり、大きなお屋敷があります。これは、藩主の亀井氏が執務を行っていた藩邸。非常時に備え、御殿の裏手からは山城へつながる道がありました。

御殿の右手には、弥栄神社を挟んで家老たちの屋敷が建ち並ぶ一角があります。ここは、もともと藩邸があった場所。1625年の大火によって焼失したのを機に、御殿は先の場所へ移り、その跡地が藩主の下屋敷として、幕末には家老たちの屋敷になりました。

城山の山裾には、津和野藩の菩提寺である永明寺、藩の安泰を祈って建てられた太皷谷稲成神社が並んでいます。また、裏鬼門である城山の南側、津和野川が大きく湾曲している地には、津和野の守護神として崇められた鷲原八幡宮があります。

家老たちの屋敷があった殿町通りから、鷲原八幡宮まで徒歩でも30~40分ほど。山城を中心にお屋敷街から寺社まで、コンパクトにまとまっている町並みへくり出しましょう!

続きを読む

鳥瞰図

  • 津和野城下絵図
  • 大正3年 栗本格斎 作
  • 津和野郷土館蔵

津和野百景図を持って町を歩こう!

城下町編

二十六 殿町總門(とのまちそうもん)

百系図
二十六 殿町總門
実際の写真

本町と殿町を隔てる交差点。江戸時代には武家地と町人地を隔てる立派な惣門がありました。残念ながらいまやその面影はありません……。

実際の写真

と思ったら、永明寺(ようめいじ)に移築されたと言われている門を発見!かつてはこの風格ある門の先に町家が連なっていたんですね。

殿町通り

住所鹿足郡津和野町後田
TEL0856-72-1771(津和野町観光協会 9:00〜17:00、年中無休)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/4460

永明寺

住所鹿足郡津和野町後田ロ107
TEL0856-72-0137
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/4477

二十三 殿町

殿町通りを望むと、手前には百景図と同じく堂々たる筆頭家老の多胡(たご)家の門。外を見張る物見部屋も健在です。白漆喰となまこ壁の塀が隣の門までつながっているところも百景図のまま!

実際の写真
百系図
二十三 殿町

殿町通り

住所鹿足郡津和野町後田
TEL0856-72-1771(津和野町観光協会 9:00〜17:00、年中無休)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/4460

十六 弥栄神社

殿町を抜けて右に折れると、城の方角を向いて立っている神社が出現。弥栄神社は、津和野城の鎮護のために、吉見氏によって城の鬼門にあたる地に勧請されました。百景図に描かれている拝殿右手の大欅は、樹齢600年と言われ、今なお健在です。

実際の写真
百系図
十六 弥栄神社

弥栄神社

住所鹿足郡津和野町後田
TEL0856-72-1771(津和野町観光協会 9:00〜17:00、年中無休)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/1157

十七 祇園会鷺舞(ぎおんえさぎまい)

古くは京都の祇園会で演じられ、戦国時代に山口を経由して、津和野の弥栄神社に伝わった神事。本家の京都では絶えてしまいましたが、その間も津和野では連綿と受け継がれてきました。重要無形民俗文化財にも指定され、雄雌の鷺に扮した舞には、時代を超えた美しさがあります。

実際の写真
百系図
十七 祇園会鷺舞(ぎおんえさぎまい)

二十二 大橋

殿町と市街を結ぶ大橋は、さすがにコンクリートに変わっています。橋のたもとにある松の大木は百景図に描かれた松の二代目ですが、百景図が描かれた当時の様子を彷彿とさせます。

実際の写真
百系図
二十二 大橋

七十 森總門(もりそうもん)

森總門は、大橋の先に設けられた城郭内へ入るための門。時の遺構は残っていませんが、近隣の民家の石垣から往時の門の姿を思い浮かべてみたり・・・・

実際の写真
百系図
七十 森總門

十二 藩候館前(はんそうろうかんまえ)

百系図
十二 藩候館前
実際の写真
実際の写真

藩邸の表門の左手にある建物2つが、現存する物見櫓(ものみやぐら・左)と馬場先櫓(ばばさきやぐら・右)。物見櫓は移築されて場所は動いているけれど、外観はどちらも百景図のまま。藩主はこの物見櫓から鷺舞などの祭礼を見学していました。物見櫓の裏手には、百景図にも登場する藩邸の庭園が一部「嘉楽園」として残っています。

藩候館前:津和野藩御殿跡

住所鹿足郡津和野町後田
TEL0856-72-1771(津和野町観光協会)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/976

十四 候館前錦川のいだ

いだは川魚の一種。藩邸の表門は現在、津和野高校の旧門に。川の水量を調節する井堰(いせき)、橋ともに移動して風景はだいぶ変わった模様。でも、川沿いのこの松はもしや……。百景図とよくよく見くらべると、松の根元の石垣が当時のものであると判明!

実際の写真
百系図
十四 候館前錦川のいだ

四 勢溜り

勢溜り(せいだまり)とは、人の勢いが溜まる場所のこと。ここは津和野城の大手(正面)に至る道の入り口。攻めてきた敵の勢いを減じるため、かつては門と高い石垣、堀が築かれていました。

実際の写真
百系図
四 勢溜り

三十一 常盤橋

百系図
三十一 常盤橋
実際の写真
実際の写真

外堀の終点に位置する常盤橋を描いたこの絵には、なんと森鴎外が10歳まで過ごした家が! 右手に連なる家の一軒(何軒目かは特定が難しい)が今も残る森鴎外旧宅。百景図の中央奥に描かれている石垣を、向かいの駐車場の脇にわずかに発見。

常盤橋:森鴎外記念館

住所鹿足郡津和野町町田イ238
料金一般600円・中高生400円・小学生250円
営業時間9:00~17:00(最終入館16:45)(12月~3月中頃は月休(祝日の場合・翌日))
TEL0856-72-3210
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/4467
石垣

石垣に注目

石垣は、百景図時代の痕跡を探す重要な手がかり。たとえば、殿町通りの鯉が泳ぐお堀に近寄って、石垣の部分をよく見てみましょう。なまこ壁の下に見えている石垣は、そのまま水の中まで続いていますね。じつは、もとの通りは現在の道よりも一段低く、現在の水路の底の位置にありました。それを知って百景図二十三を見返すと、石垣はいまより高さが!格齋の観察眼の確かさに脱帽です。

城下町をぶらぶら散策したら、津和野城のある山方面に足を伸ばしてみよう!

鳥瞰図

  • 津和野城下絵図
  • 大正3年 栗本格斎 作
  • 津和野郷土館蔵

津和野百景図を持って町を歩こう!

山城編

城下町からリフトに乗って、かつて三本松城と呼ばれていた津和野のシンボル、津和野城の跡へ。そこから山道を北へ下れば太皷谷稲成神社、南へ下れば鷲原八幡宮。山道をハイキングするもよし、レンタサイクルで自転車を借りてまわるのもよし。歩きやすい格好でいざ山城へ!

一 三本松城

百系図
一 三本松城
実際の写真
実際の写真

格齋さんも真っ先に描いた津和野城。その面影を宿す高くそびえる人質櫓の石垣(写真右)や、太皷丸から見る三十間台の入り組んだ石垣(写真左)など、見どころはたくさん。複雑な構造を今に伝える壮大な石垣群をたどれば、ちょっとした武将気分に。

二 三本松城出丸

見通しが悪い城の北側を見張るため、突き出た尾根に配置された出丸(織部丸)。残された石垣に百景図を重ね合わせて、当時の姿を想像してみましょう。

実際の写真
百系図
二 三本松城出丸

八十 妹山の景

城跡からは津和野の町が一望できます。正面には、丸みを帯びた女性的な姿から「妹山」とも呼ばれる青野山。百景図にもたびたび登場する、津和野のランドマークです(写真は津和野城跡より撮影)。

実際の写真
百系図
八十 妹山の景

津和野城跡

住所鹿足郡津和野町後田
交通手段JR山口線津和野駅から車5分、リフト5分、本丸まで徒歩20分。
TEL0856-72-1771(津和野町観光協会 9:00〜17:00、年中無休)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/971

城跡観光リフト

運行時間9:00~16:30
運行期間3月~11月(但し土日祝は運行)臨休あり
料金中学生以上450円小学生以下400円
TEL0856-72-0376
URLhttp://goo.gl/M07hBx

二十一 太鼓谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)

百系図
二十一 太鼓谷稲成神社
実際の写真
実際の写真

1773(安永2)年、津和野城の鬼門に当たる太皷谷に建てられた太鼓谷稲成神社。開運厄除けの守護神として、多くの参拝客が訪れ、初詣の時期は特に賑わう。奉納された約1000本の鳥居も圧巻!

太鼓谷稲成神社

住所鹿足郡津和野町後田409
TEL0856-72-0219
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/1154

三十四 鷲原(わしばら)大夜燈

鷲原八幡宮の前で出迎えてくれるのが、大きな石造りの常夜燈。寛政10年、近くに住む足軽が奉納したとされ、百景図では「今でも現存する」との記述が。21世紀の今でもあるよ、と格齋さんに教えてあげたいですね。

実際の写真
百系図
三十四 鷲原大夜燈

三十八 鷲原馬場

百系図
三十八 鷲原馬場
実際の写真
実際の写真

全長270mの流鏑馬の馬場は、県指定史跡に指定されています。百景図にはこのほか馬場の松や桜、モミジを描いた絵も。三つが一度に見られる場所があったので写真をパチリ。

三十六 鷲原のやつさ

毎年4月第2日曜に今も行われている流鏑馬神事。鎌倉時代の狩装束をつけた射手が疾走する馬上から、石垣に立てられた三つの的を射る姿は迫力満点。時代を超えて拍手喝采が送られてきました。

実際の写真
百系図
三十六 鷲原のやつさ

三十五 鷲原八幡宮其の他

約600年の歴史がある鷲原八幡宮。戦国時代に建てられた朱塗りの外壁と茅葺屋根が特徴的な楼門は、今も百景図に描かれた姿のまま。本殿、拝殿とあわせて重要文化財に指定されています。

実際の写真
百系図
三十五 鷲原八幡宮其の他

三十七 鷲原愛宕神社の大杉(わしばらあたごじんじゃのおおすぎ)

神社の西側から山道を少し上ると、巨大な杉の木が。1554(天文23)年の津和野城攻めの戦火によって神社は焼けたが、この木は焼け残り、以来幾多の火災や落雷にも耐えてきたのだそう。格齋さんが描いた時から一段と大きく成長している!?

実際の写真
百系図
三十七 鷲原愛宕神社の大杉(わしばらあたごじんじゃのおおすぎ)

鷲原八幡宮

住所鹿足郡津和野町鷲原
TEL0856-72-0650(津和野町観光協会 9:00〜17:00、年中無休)
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/4469

百景図の世界にどっぷり浸れるグルメ&お宿

散歩の合間に幕末の味を堪能!

うずめ飯

見たところ、何の変哲もないお茶漬け……ですが、かき混ぜるとふわりと三つ葉が香り、中からしいたけ、豆腐、かまぼこなどの具が出現! ご飯に具を「うずめ」てあるところから、その名がついたうずめ飯。贅沢を禁止した江戸時代に、役人の目を逃れるために考えられたと言われています。だし汁でいただく具だくさんのお茶漬けは、今も昔も津和野を訪れた人々をもてなす定番料理です。

お食事処ふる里

  • うずめ定食 1,200円(税込)
住所鹿足郡津和野町後田ロ-277-6
TEL0856-72-0403
営業時間11:00~15:00 不定休

鮎弁当

津和野川が流れ込む高津川は、古くからの鮎の名所。百景図でも、左鐙(さぶみ)の集落での鮎釣りの様子を「左鐙の香魚」と題して紹介しています。津和野の駅構内にある「駅弁くぼた」では、鮎を丸ごと一匹使った贅沢な鮎弁当を販売。焼いてから昆布だしと醤油で炊いたという鮎はふっくらとして、炊き込みご飯との相性も抜群。昔ながらの気取らない盛りつけや包みも旅情をかきたてます。

駅弁くぼた

  • 鮎弁当 870円(税込)※SL運転日のみの販売。数が少ないので要予約。
住所鹿足郡津和野町後田イ-68 津和野駅待合室
TEL0856-72-1139
営業時間10:00~16:00 木休

わらび餅/まめ茶

ひと休みにおすすめなのが、わらび餅。わらび餅の原料は、わらび粉というワラビの根にあるデンプンからつくられる粉。百景図ではワラビの絵とともに、旬になると人々が少し離れた山里まで採りに出かけたとの解説があります。津和野駅近くの「みのや」では、カップ入りを提供。サービスのお茶は、古くから津和野の人々に愛飲されてきたまめ茶。 マメ科のカワラケツメイを使うこと、「健康になる」を意味する「まめになる」という津和野の方言が名前の由来だとか。ちょっとしたお土産にもどうぞ。

みのや

  • わらび餅 400円(税込)
  • まめ茶(小) 210円(税込)
住所鹿足郡津和野町後田イ75-1
TEL0856-72-1531
営業時間9:30~17:30 水休

夜は、時を感じるお宿でのんびり

町家ステイ 戎丁

散策を楽しんだ夜は、昔の町家暮らしを体験してみてはいかが。「町家ステイ 戎丁(えびすちょう)」は、明治時代半ばの長屋を改装し、2015年2月にオープンしたばかり。一棟を丸ごと貸し出すスタイルなので、家族や友人と気兼ねなくくつろげます。使い込まれた梁や柱に和モダンな家具、最新設備が調和した居心地のよい空間で、旅の疲れをゆっくり癒して。

古い調度類が整えられたお座敷。日本建築の凛とした佇まいを体感できます。
ミニキッチンも完備。火気厳禁なので料理は不可ですが、夕食や朝食のデリバリーは可能。
総ひのき張りの浴槽。ひのきのいい香りに包まれて、風情あるバスタイムを。
坪庭は、長屋建築のひとつの魅力。お座敷にいながら季節を感じられます。

町家ステイ 戎丁(えびすちょう)

  • 標準期:宿泊料金(1棟料金・2名の場合)
    24,000円~
住所鹿足郡津和野町後田イ302番地
TEL0856-72-1771(受付時間:9:00~17:00、年中無休)
HPhttp://tsuwano-stay.jp/

歴史散歩のシメはここ!

津和野町郷土館

津和野藩の資料はもちろん、縄文時代の考古資料から、津和野が輩出した西周や森鴎外などの遺品まで膨大かつ貴重な資料を展示、収蔵。藩の学びの場だった藩候養老館の御書物蔵を利用して1921(大正10)年に設立され、1940(昭和15)年から現在の建物に。この建物自体が国の登録有形文化財という、まさに津和野の歴史が凝縮された空間なのです。

津和野町郷土館

住所鹿足郡津和野町森村ロ127
TEL0856-72-0300
開館時間8:30~17:00
休館日毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
入館料一般400円/中・高生300円/児童150円
URLhttp://www.kankou-shimane.com/ja/spot/detail/2089
ページトップへ