石見地方のやきものめぐり(1)

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2016年04月07日 公開

江戸時代から続く石見地方のやきもの

 

島根県の西側に位置する石見地方。

良質な陶土が採れることから、江戸時代よりやきものの産地として知られてきました。

かつての面影をたどる、やきものめぐりの旅に出かけてみませんか。

 

やきもの

民藝運動の創始者・柳宗悦は、著書『手仕事の日本』のなかで、石見の気風を「荒くして強く、力を感じます」と評しました。県内のやきものの産地として知られる松江の布志名(ふじな)が松江藩の庇護のもと、茶陶を中心に発展してきたのに対し、石見では「はんどう/はんど」と呼ばれる大きな水がめや、日本三大瓦のひとつに数えられる「石州瓦」など、暮らしに欠かせない質実剛健なやきものが焼かれてきました。その理由を求めて、まずは石見地方に残る巨大な登り窯を訪ねてみましょう。

 

温泉津やきものの里

やきものの里

東西に長くのびる島根県の中央に位置し、「温泉津」と書いて「ゆのつ」と読むこの地は、かつて石見銀山の積み出し港として北前船の往来で栄えた温泉街でした。街の中心から10分ほど坂道を上った山の方面に、現存するもののなかでは国内最大級とされる登り窯が修復、保存されている「温泉津 やきものの里」があります。

 

現存する日本最大級の登り窯

現存する日本最大級の登り窯

やきものの里に着いてまず目に飛び込んでくるのは、赤褐色の石州瓦の屋根が連なる、大きな2基の登り窯。手前の「笹屋窯」は15段30メートルと圧巻です。かつては20数段あったとされ、昭和40年代までは活躍していました。

登り窯

さらにその奥にある10段20メートルの登り窯は、いまも現役。春と秋の年2回開かれる「やきもの祭り」にあわせて火が入り、窯焚きの様子を見学することができます。

窯正面

温泉津 春のやきもの祭り

窯焚きの見学の他、登り窯から窯出ししたばかりのやきものを買える即売会など様々なイベントが開催されます。

【会期】平成29年4月15日(土)・16日(日)
※登り窯は16日のみ。[窯出し]8:30~/[即売会]10:00頃~
【場所】温泉津 やきものの里周辺

詳しくはこちら
http://blog.yunotsu.org/?eid=1010827

温泉津 やきものの里「やきもの館」
〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ22-2 [MAP]
TEL:0855-65-4139
【開館時間】9:00~17:00(創作体験の最終受付は16:00、予約不要)
【休館日】年末年始(12月29日~1月3日)、臨時休館あり
http://yakimono.yunotsu.org/

 

良質な陶土が生んだ暮らしのやきもの

数々の水がめ

「温泉津やきものの里」の登り窯の脇に積まれた、数々の水がめ。これらは以前、温泉津でつくられていたものです。

すり鉢

展示室にも一部並んでいますが、こね鉢やすり鉢、おろし皿といった台所用品も石見のやきものが得意とするものでした。それらはいずれも、毎日使ってもちょっとやそっとでは壊れなさそうな頼もしい姿をしています。

水がめ

石見地方では現在、温泉津焼と石見焼というふたつの産地が知られています。この地域一帯では昔から、きめが細かく、高い温度の焼成にも耐えられる良質な陶土が採れました。高い温度で焼けるということは、丈夫で水漏れがしないやきものができるということ。耐久性や耐水性にすぐれていたため、水がめや瓦などとくに耐久性や耐水性が求められるやきものが焼かれるようになったのです。また来待石(きまちいし)と呼ばれる赤褐色に発色する釉薬も豊富で、燃料となる松樹にも恵まれていたことも、やきものが盛んになった理由でした。

 

北前船で栄えた温泉津港

静かな海
複雑な地形によって波が打ち消され、静かな水面をたたえる温泉津(ゆのつ)港。

「温泉津やきものの里」を見学したら、今度は海の方面へ向かってみましょう。坂を下っていくと、その先には山々に囲まれた静かな入り江が現れます。温泉津港は、入り組んだリアス式海岸の地形を利用して開かれた天然の良港。大型の船舶が寄港できることから、石見銀山で採れる銀の積み出し港として栄えました。石見地方で焼かれたやきものもまた、銀やそのほかの産物と一緒に北前船に積まれ、ここから日本海沿岸各地へと運ばれ、その名を全国に広めたのでした。

温泉街2

最後は、港から温泉街へ。夕暮れどきになると、大衆浴場や旅館が建ち並ぶ通りにぽつぽつと明かりが灯り、昔ながらの街並みは一層、風情を増します。かつて港に行き交う人々でにぎわったお湯で、ちょっと旅の疲れを癒してみるのもまた一興です。

 

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