「庭園日本一」 足立美術館の魅力とは

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2016年10月07日 公開

島根県安来市の郊外に、2003年から13年連続で庭園ランキング日本一に選ばれている美術館があります。国内外から年間50万人以上が訪れる、人気の秘密を探るべく、足立美術館にお伺いしてきました。

足立美術館 枯山水庭(秋)

枯山水庭

 

日本一の庭園の秘密

足立美術館は、横山大観をはじめとする近代日本画を中心に総数約1500点を所蔵しているほか、5万坪の日本庭園は、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による庭園ランキングで、13年連続日本一に選ばれました。

このランキングは、「いま現在鑑賞できる日本庭園としていかに優れているか」を基準に調査・選考されており、特に足立美術館は、広大な庭園の細部にまで維持管理がゆきとどいている点が高く評価されているそうです。

足立美術館外観と庭園

このように高い評価を得た背景には、毎朝開館前に全職員が1時間かけて掃除をするなどの、美術館の徹底した「おもてなし」の姿勢がありそうです。年中無休のため、掃除は365日休むことなく続けられ、雨の日にもカッパを着て行われるとのこと。

庭園の赤松

庭園の赤松

年中美しい庭園を観ていただくため、専属の庭師による赤松の剪定作業も行われます。古葉を手作業で摘み落として樹形を整え、最後に竹製の手箒ぼうきでこすって古皮をはがしていきます。こうすることで、赤松の鮮やかな幹肌が現れるそうです。毎年7月末から約2ヶ月かけて行われます。

園内には赤松が約800本植わっていますが、太くなり過ぎたり状態が悪くなった際にすぐ交換できるよう、別の場所にスペアの松が用意され、赤松だけでも約400本があるそうです。

苔に埋め込まれた炭

苔に埋め込まれた炭

庭園に使われている苔も、雨が降った際にしずくが落ちて苔に穴をあけて痛めてしまうのを防ぐため、炭が埋め込まれています。さらに松同様、苔にもスペアが準備されているという徹底ぶりには驚くばかり。

 

庭園と日本画にかけた創設者・足立全康の思い

そもそも、足立美術館がこれほどまでに庭園に情熱を傾ける理由は、どこにあるのでしょうか。それは、創設者・足立全康(あだちぜんこう)の、日本画と庭園に対する強い信念から来ているのです。

創設者・足立全康

創設者・足立全康

足立美術館は、事業家として成功した足立全康の「郷土に恩返しがしたい」という思いから、昭和45年に設立されました。横山大観をはじめとする日本画に深い思い入れを持つ足立全康は、まず日本庭園を通して四季の自然の美を感じてもらい、その感動をもって横山大観などの作品にふれることで、日本画の魅力を理解してもらおうと考えたのでした。館内に入るとまず「枯山水庭」や、「白砂青松庭」など6つの美しい庭園が広がっているのはこのためだそう。

 

四季折々の姿を魅せる6つの庭園

足立美術館 枯山水庭(夏)

枯山水庭

枯山水庭の中心部分には縦長の岩があり、そこから流れる滝の水が緑の刈り込みや島の間を通りながら、一番手前の白砂の海へ流れ着く様を水を用いずに表現しています。背後の山を借景とすることで、庭園を実際以上に広く、奥行きあるものに見せています。

白砂青松庭

白砂青松庭

白砂青松庭は、横山大観の名作「白沙青松」をイメージした庭。白い砂と松のコントラストが印象的です。庭の奥には「亀鶴の滝」があって、その渓流が手前の大きな池へと注いでいます。この滝も横山大観の「那智乃瀧」という作品をモチーフとしています。

 

庭園もまた一幅の絵画である

生の額絵(秋)

生の額絵

「庭園もまた一幅の絵画である」という信念のもと、足立全康は91歳で亡くなるまで庭園に深い愛情と情熱を注ぎ続けました。館内には、日々刻々と変化する庭園を絵画に見立てて鑑賞できるよう、「生の額絵」や「生の掛軸」などの楽しい仕掛けがあります。

寿立庵と生の掛け軸

「茶室 寿立庵」(左)と「生の掛軸」(右)

池庭の近くには足立全康の生家が残されており、掛軸が飾ってあった床の間の壁を、足立全康自らが金槌で穴をあけて「生の掛軸」にしたといいます。またある時は、社員旅行に出かけた際、電車の中から見かけた松に足立全康が一目惚れ。急きょ社員旅行を中断し、松探しをすることになったというエピソードもあるほど、庭園にかけた情熱は大変なものでした。一度思い立ったことはやりとげずにはいられない性格だったようです。

 

日本一の横山大観コレクション

横山大観「紅葉」

横山大観「紅葉」(左隻)昭和6年 足立美術館所蔵

足立美術館は、時に「大観美術館」とも呼ばれるほど横山大観のコレクションが充実しており、その数は120点と質・量ともに日本一を誇ります。足立美術館のシンボルともいうべき存在である、大観の「紅葉」は、朱を用いて表現した紅葉の濃淡や当時としては型破りだった余白のない大胆な構図など、大観作品の中でも最も絢爛豪華な趣を持ち、毎年この作品を観るために来館される方も数多いそうです。

横山大観「龍躍る」

横山大観「龍躍る」昭和15年 足立美術館所蔵

「『海山』が出たら目をつむっても買え」という足立全康の遺言もあり、実際に2002年、横山大観「幻の名画」と呼ばれていた「海山十題」の内の2点「海潮四題・秋」「龍躍る」が発見された時には、その遺言通り両作品を購入。季節ごとに展示替えがなされる際に、この幻の作品も展示室に並び、私たちも目にすることができます。

足立美術館 展示

横山大観の他、竹内栖鳳、橋本関雪、上村松園、原紫峰ら近代日本画コレクションをはじめ、院展作家を中心とした現代日本画、北大路魯山人、河井寬次郎らの陶芸、さらに童画、木彫、漆芸などの魅力的な作品があります。
毎年季節ごとに様々な企画展も催されていますので、ぜひ世界に誇る足立美術館の魅力をご堪能ください。

足立美術館

足立美術館
〒692-0064 島根県安来市古川町320[MAP]
TEL:0854-28-7111
【開館時間】
[4月~9月] 9:00~17:30、 [10月~3月] 9:00~17:00 ※新館の最終入場は閉館15分前
【休館日】
年中無休 ※新館のみ展示替えのため休館日あり)
【入園料】
[大人]2,300円、 [大学生]1,800円、 [高校生]1,000円、 [小中学生]500円
[2年間パスポート]6,000円  ※土曜日は小中高生無料(要学生証提示)
【公式サイト】
https://www.adachi-museum.or.jp/