恋山


仁多町に「鬼の舌震い」と呼ばれている場所があります。

斐伊川の支流の大馬木川をさかのぼった所にあり、
川の流れをせき止めるかのように、
大きな岩が川の中にたくさんころがっている渓谷です。

どうしてそのような名前が付いたのでしょうか。

昔、阿伊村に玉のように美しい
タマヒメノミコトという女神がいました。

ある日、この姫を好きになった一匹のワニが
、 姫に会うために、はるばる日本海から川をさかのぼって来ました。

この様子を見たタマヒメは、たくさんの岩で川の流れをふさいで、
ワニがさかのぼることができないようにしました。

たくさんの岩が邪魔をして、ワニはもはや進むことはできません。
ワニは、タマヒメの姿を見ることもできず、
岩をへだてて、ただただ恋しい思いをつのらせるばかりでした。

やがて、ワニは舌を震わせながら、すごすごと帰っていきました。

そこで、この地のワニが恋いしたうという
言葉にちなんで「恋山」と呼んだり、
ワニが舌を震わせたので「舌震山」と呼んだりしたのです。

いつしか、ワニが鬼となり、「鬼の舌震い」という地名が生まれました。

出典:「ふるさと読本いずも神話」より

詳しい神話