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語り:大田 サダさん(鹿足郡柿木村椛谷 明治30年生・昭和37年収録) |
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わたしのおじいさんのそのまたおじいさんの昔からあった伝えですが、それは「人に飲まし食わしを惜しゅうじゃあ、その家に福が来ん」ということです。
トシトコさまは片足の神様で、居間の神棚に片足の草履をあげるものとされています。どうしてトシトコさまが片足しかないのかといいますと、それには次のようなわけがありました。
昔、ある家のおばあさんが昼前に味噌をすっていましたら、神棚におられたトシトコさまが、
「やれ来い。今ごろ飯がはなわるけえ(準備ができるから)、早う来いよ」と言って人を呼んでいました。それを見たおばあさんが、
「こんな外道が、いつもいつも人を呼おでこれ(この家)の飯ゅう食わす。これは貧乏になる。これにはそねいに人に食わする米はなあ」と言って、トシトコさまに味噌をすっていたレンギ(す擂り粉木)を放りかけたら、トシトコさまの足に当たって折れてしまい、片足になられたそうです。
それ以来、そこの家は一方から貧乏になって行き、人も来んようになって全滅してしまったと言われています。
そういうことだから「人に飲まし食わしを惜しんだりして欲を言うちゃあいけん。人に食わするほどはこの家にあるの」と昔のおじいさんは言っていました。
わたしはよく聞かされていたものです。
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