出雲市平田町の「平田木綿街道」沿いに、ひときわ歴史を感じる主屋や蔵を持つ造り酒屋があります。酒持田本店は、ここ平田の地で1877(明治10)年から140余年にわたって「ヤマサン正宗」という商号の日本酒を作り続けてきました。
平田地区には酒造りの神を祀り、日本酒発祥の地ともいわれる「佐香(さか)神社」があります。神々に見守られた地域で酒造りと真摯に向きあう酒蔵が2015年、新しい商品を開発しました。
それが「ヤマサン 梅酒の梅ジャム」です。

出雲産の梅の実を使い日本酒ベースで作られるヤマサン正宗の「日本酒仕込みの梅酒」。甘すぎずすっきりとした味わいで人気の梅酒です。これを作る過程で出る梅の実からできたのが、このジャムです。
本来、日本酒造りには無駄がありません。日本酒の米を削った糠も肥料や飼料、上新粉として活用され、また酒を搾った後の酒粕も食用、漬物用として使われます。そしてさらに残った酒粕は粕取り焼酎になり、最後に残った粕は、肥料として土に循環されていくのです。
梅酒にもこの考え方を取り入れ、全てを使い切る、という老舗のプライドをかけて作られた商品です。丁寧にアルコール分を飛ばし、保存料は一切使わず、無添加・手作りで作られた梅ジャムです。アルコール分はしっかりと抜けていますが、日本酒の風味が感じられ、梅の実の美味しさを余すことなく詰め込んでいます。

古来より梅は花を愛でるだけでなく、薬としても使われてきました。漢方のひとつとしても利用され、胃腸を整えたり、消炎、殺菌作用があるとして塗り薬として使われたりしてきました。先人たちは日常の知恵として、疲労回復や夏バテ防止などのため、食事の薬味としても大いに活用してきました。
梅の実には、美肌や美髪のために必要なミネラルがたくさん含まれています。また、クエン酸を豊富に含んでいますので、新陳代謝を良くし、血行促進や免疫力アップなどの効果も期待できます。
日本古来より、私たちの食卓になじみ、また、薬膳の食材としても効能が期待できる梅からつくられた梅ジャム。梅酒を漬けこんだ後の梅から作られますので、梅の実は柔らかく、熟成し、酸味もほどよく残る程度で、胃にも優しい風味豊かなジャムができ上りました。
ヨーグルトに添えていただくと、フルーティーな梅の果肉と梅酒の風味が爽やかなヨーグルトの酸味とマッチングして、朝のスタートに最適なオシャレな美肌メニューになります。また、夕食後のひと時にチーズやクラッカーと共におつまみにして、日本酒や洋酒とマリアージュするのもいいですね。
歴史ある酒蔵が梅ジャムを作るという、一見変化球のようにも見える取り組みは、日本酒へのさらなる理解を深めるきっかけになっていくかもしれません。
パッケージも鮮やかで、健康と美容を気づかう人にぜひお土産にしたい一品です。


文:西村 愛
監修:島根県立大学 看護栄養学部 今中美栄 教授
梅ジャム
問い合わせ先 | 酒持田本店 0853-62-2023 |
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