歴史ある町の蔵を再生し、
日本酒を堪能できるあたらしい宿
明治時代創業、140年以上の歴史を持つ「酒持田本店」。
木綿街道に蔵を構え、受け継がれてきた伝統の製法で丁寧な酒造りを行っています。
島根県だけで栽培される酒造好適米“佐香錦”を使った、銘柄「ヤマサン正宗」が有名です。
この歴史も人気もある酒蔵が、蔵を改装した宿「RITA出雲平田 酒持田蔵」を開業。まだ出来立てほやほやの新しい宿です。
宿のテーマは、やっぱり日本酒。
様々な小物は、酒持田本店を思わせるものが置かれています。誇張せず、しっくりと馴染んで、インテリアとして溶け込んでいます。
情報過多のせわしない日常を離れ、ゆっくりと語らう時間や、自分と向き合う時間を過ごしてもらえるように、お部屋にはテレビがありません。代わりに地下に小部屋があり、普段できないコミュニケーションを取れる最高の時間が過ごせます。
ひとりで静かに読書をするのにもいいですし、瞑想したり、お酒を酌み交わしたりするのも良いでしょう。古いものが並ぶしっとりとした空間なのにどこかモダンで、とても落ち着きます。
頭上に太い梁を見上げながら眠れる、屋根裏部屋のようなベッドルーム。吹き抜け部分があるおかげで狭さを感じさせません。
木綿街道を連想させる気持ちの良い綿の寝間着が用意され、眠りの質も上がります。
蔵といえばひんやりとしているイメージがありますが、内装もあたたかみがありエアコンも設置されているので快適に過ごせました。ベッドもふかふかで、知らないうちに眠ってしまいました。
リビングにはグリーンや落ち着いた色のファブリックを用いたソファ。
用意されたお茶を飲んだり休憩したりするスペースです。部屋には、同じく木綿街道に店を構える「來間屋生姜糖本舗」の生姜糖もありました。お茶うけに一緒に食べると、生姜成分でからだがポカポカします。
風呂場には日本酒が用意されています。
これは、日本酒風呂専用としてオリジナルで作られたお酒で、浴槽に注いで入浴することで、からだの芯まであたたまります。
特に香りが良いのが特徴で、湯気と一緒に日本酒の良い香りを楽しめます。
アメニティも充実していました。
スキンケアコスメも日本酒ベースのものが用意されていました。
※アメニティの内容は変更になる可能性があります。
倉庫として使われていたというこの和蔵。
こぢんまりとした空間だからこそ使い勝手が良く、お忍び感、おこもり感も満載です。
日本酒の魅力を多方面から実感できるだけでなく、のんびりと静かな滞在ができました。
酒持田本店
https://www.sakemochida.jp/
RITA出雲平田 酒持田蔵
https://rita-izumo-hirata.jp
日本酒×イタリアンのペアリングで
新しい喜びに出会う夕食
夕食は、宿から数軒となりにあるイタリアン「トラットリア814」で。
日本酒とのペアリングを楽しめる、イタリアンコースをいただきます。
人気があり予約が取りにくいイタリア料理のお店が、宿泊のセットになっているのはうれしいですね。
店内はドライフラワーがたくさん飾られた、雰囲気のある内装。店内奥には船川が見えて、情緒も感じられます。
酒持田本店のお酒がずらりと並びました。
この日のコースに合わせる日本酒は前菜からデザートまで、何度も試食・試飲を繰り返して考案された、珠玉のペアリングです。
「日本酒仕込みの梅酒」は、米のまろやかさを感じられます。
酸味がちゃんとあり、甘すぎない梅酒に合わせるのは、塩気と旨味のパルマ産生ハムと揚げパン。
スッキリとした梅酒のおかげで、素材の味が引き立ちます。
桃太郎トマトソースとサルサ・ヴェルデを添えた島根県産イサキのカルパッチョ、干しだらのリエットとポレンタ(とうもろこしの粉)には、「ヤマサン正宗 純米吟醸(佐香錦)」を。
純米吟醸に感じる米のまろやかさは、カルパッチョに使われた辛味のあるソースをまろやかに包み込み、また、ポレンタの穀物風味ともぴったり合います。
生酒の「萌」。華やかでまろやか、香りもありスッキリと飲めるお酒。
これには島根県産豚のプロシュートコット、同県産アスパラと真イカをペアリング。
なめらかでやさしく、しっとり仕上げられた豚肉。
フレッシュな野菜や上品なイカとすっきり系日本酒との相性もぴったり。
パルミジャーノ・レッジャーノと豚バラの出汁を加えた丸茄子、赤海老のラグーソーススパゲッティーニ、益田産アムスメロンとブッラータチーズの3皿には、低アルコール純米吟醸原酒「ヤマサン正宗 うさぎ雲」。
優しい口当たりのお酒を挟むことで、メインに備えます。
メインには島根和牛ランプのロースト ひよこ豆のピュレとマデラ酒のソース。
どっしりと深い味わいがある長期熟成酒の「ヤマサン正宗 古滴 純米大吟醸原酒」。
デザートには「出雲柿酒」。
貴腐ワインのような甘さがあって、濃厚。
酒粕とピスタチオのジェラート2種。
旬の素材と島根の幸が盛り込まれたイタリアンコース。
日本酒とのペアリングで新鮮な感動やおどろきを感じられる、楽しい時間でした。
日本酒の新しい楽しみ方も提案してもらえ、満足度高い夜の時間を過ごすことができました。
トラットリア814
https://www.instagram.com/trattoria814hachiichiyon/
緻密な線を描き出す紙上の表現
「吾郷屋」
宿から歩いて行ける木綿街道の小さな古民家。
ここに、手製のノートや切り絵アートを置く吾郷屋があります。
ここは工房兼ショップとなっていて、沢山の創作力にあふれる作品は、このお店を開業した吾郷さんのデザイン性や緻密性を感じる、息をのむものばかり。店内に見やすく配置され、ゆっくりじっくり見ていきたい作品が並びます。
印刷かと見まごうカラーの表紙は、吾郷さんの手作業のカットによるもの。
例えばこの2冊は、カットした2枚の色紙を互い違いにしてあります。ノートそのものもすべて手作りで製本されています。
ご夫婦などで買われていく方が多いそうです。
紙を選び、大きさを決めてカット、糸を通してまとめてそれらに背表紙をつけていく…。
全てを手掛ける吾郷さんの商品は日々使うものにこだわりたい人にぴったりで、紙や糸を好みの色で選び、自分だけの一冊をお願いすることも可能です。
さらに、創作のすばらしさを感じるのが、小さな作品「豆帳」。もちろんこのサイズのノートも手作り。
そして、単行本などにはさまっている“スリップ”をデザインした色紙で、くり抜いた文字をカラフルに見せる仕組み。スリップは色の差し替えができ、好みの文字と色を組み合わせられます。モチーフになっているものもあります。
抜き文字は五十音、数字、アルファベットがあります。
さらに極小の世界がこちら。
2ミリ、1ミリ角の小さな色紙を1枚ずつ貼り付けていくという、根気を形にしたような作品。
貼る側の紙も同様に格子にカットされておりそこにはめ込んでいくという、強靭な集中力によって作られたもの。
凸と凹が紙の厚さの世界ではまり込んでいるので、触ってみると表面は1枚の紙のようななめらかさ。
切る道具から手作りするというこだわりで、唯一無二の世界観を表現しています。
日常の中からいろんな発想や空想をメモし、それを書き残しているという吾郷さんのノートには、これから作るもの、今ある作品の構想になったものが書かれています。
このノートから新たな作品が生まれ出てくるのですね。
デジタルに頼る日常が当たり前になり、なかなか手書きしなくなった時代。
ここでは紙の感触や書き心地を思い出す、そんな時間になりました。大切な1冊を持ち歩きたくなる、誰かに教えたくなるお店です。
「いきもののちから」をデザインに落とし込んだ
テキスタイル小物をおみやげに
水曜日から土曜日までオープンしているギャラリーショップ「ミツトリヒトギ」。
カフェも備えたくつろぎの空間で、静かな場所でゆっくりと時間を過ごせるお店です。
赤瓦を乗せた大きな古民家は、築150年ほど前に建てられた質の良い材が使われた家。展示されるのは、オリジナルの大判のテキスタイルやオリジナルデザインの手ぬぐい、小物など。
2人のデザイナーが生み出す自然のモチーフを映し出した意匠は“意志ある描写”。作品にしっかりと伝えたいことが込められた、主張のあるデザインが特徴です。
ポーチや眼鏡ケース、マスク、御朱印帳など、日常的に持ち歩けるものから、お部屋のインテリアになるタペストリーやカレンダーまで。
店内は広大な田園風景が一望でき、ランチやカフェも楽しめます。
季節の移ろいを感じる、開放的な雰囲気です。
ここで提供されるのは、おかず3種がついた「揚げおにぎりランチ」。
カラフルな創作おかずと薬味、揚げおにぎりが2つ付いたセットメニューです。
カリッと揚がったおにぎりをそのまま楽しむもよし、お出汁に浸して崩しお茶漬け風に食べるもよしの、食べ方のアレンジもできる満足感たっぷりのセットです。
薬味を足して好みの味にもできます。
冷えた緑茶とともに、爽やかなデザートもいただきました。
キャラメルが入ったホーキーポーキーアイスにナッツ。香ばしさをプラスしたコーヒーゼリーです。
大きな広間は畳敷きで、子どもを遊ばせながらゆっくり過ごしたりカフェを楽しんだり、また、シルクスクリーンや小物づくりの体験などもできます。
田舎風景に癒されながら、作品づくりのこだわりを聴きながら商品を選ぶ幸せな時間がゆっくりと流れていきました。
ミツトリヒトギ
https://hitogi.com/
- 一畑薬師(醫王山一畑寺)
- 島根半島の山内、標高約200mにある臨済宗妙心寺派の仏教寺院。“目のお薬師様”として「一畑薬師」と呼ばれ、長年崇敬を集める。漁師の与市が海の中から引き揚げた薬師如来像がご本尊と伝わる。参道である1,138段余りの石段を使った過酷なマラソン大会が開かれることでも有名だが、参拝の際は山頂まで車で登ることもできる。
一畑薬師
https://www.kankou-shimane.com/destination/20400