出雲そばは色が黒い。そば粉を臼(うす)でひく際、一番粉から三番粉まで、つまり甘皮まで一緒にひいて使うからである。こうしてできたそば粉は、そばの実の中心部のみを使った白い上品なものに比べて香りが格段に強く、味にもコクがある。このそばを、丸い朱塗りの割子に入れ、小口ねぎ、のり、削りがつお、おろし大根などの薬味をのせ、その上にだしを注いで食べるのが割子そばで、ざるそばとは逆である。よその土地に行ってはじめてざるそばを注文した人が、つい割子のつもりでざるの上にだしを注いでしまった、という笑い話があるはどで、出雲でそばと言えば割子そばのことである。
割子3枚が一人前だが、そば好きの人は7、8枚は平気である。また、割子の上にうずらの玉子、とろろ、なめこなどの具をのせた変わりそばもおいしいものである。
だしは少なめにつけて、あまり噛まずに喉(のど)越しを楽しむ、とはそば通なら誰でも言う言葉。店によってだしの味に個性があるので味見をしてから好みの分量を注げばよい。頼むとたいがいの店で出してくれる熱いそば湯にもだしを落とし、割子を食べながらすすれば、なお一層出雲そばを堪能できるというものだろう。
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