EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ

最高の昼飯が食べたい。
萩・石見空港から直行すべきランチ名店

旅先の昼ごはんが好きだ。地元の生活に溶け込む感じがする。お酒も入って盛り上がる夜に比べて、ランチは日常のムードがある。土地の暮らしの風景に、異邦人としてお邪魔する気分は楽しい。なにより、その店のこれぞ、という料理が手軽に体験できるのも嬉しい。サッと幸福を得て、午後へ出かける。旅にはその軽やかさが似合う。というわけで、萩・石見空港に到着したら、まず立ち寄りたい昼ごはんの名店を紹介したい。

石見という土地の香りを食べる/寿司処みのり

「観光」と書くように、旅とは土地の光を観るものだ——と言う人がいる。その通りだと思う。一方で、旅の記憶に強く残るのは、むしろ「香り」ではないだろうか。
 
『魚味礼賛』は老舗の寿司職人の方が書いたとても面白い本で、これを読むと、寿司の醍醐味とは、魚の香りを味わうことなのだと腑に落ちる。そうならば、旅先でこそ土地の魚を、洗練された寿司の技術をもって、いただきたい。
 
空港からほど近い、益田駅前の飲食店街の外れに1957年創業の名店「寿司処みのり」がある。ランチのおすすめは、「おまかせ寿司定食」。益田、浜田、萩など地域であがった新鮮な魚介の寿司、自家製出汁のハーフうどん。地物野菜のサラダは、野菜そのものの味が濃い。これ以上の完璧なバランスは、ちょっとない。

ランチ不動の一番人気「おまかせ寿司定食」。寿司はその日おすすめの旬のネタが日替わり。うどんはいりこ・昆布・鰹節の出汁が効いたつゆが絶品。サラダのドレッシングも自家製と細部まで丁寧な仕事。
デザートは日替わり。取材日はチーズケーキとガトーショコラの2種がラインアップ。ともに手作り。

ぜひ、香りに意識を向けてほしい。新鮮な魚だけが持つ鮮やかな香りが際立ち、口に運ぶたび、はっとする。あまやかなシャリの風味が奔放なその香りを受け止め、地物の本わさびのシャープな辛味そしてほのかな甘味が余韻を残す。追加で自家製デザートを頼めば満足度はさらに飛躍する。

INFORMATION

寿司処みのり

住所:島根県益田市駅前町11−7
TEL:0856-22-1356
営業時間:昼11:30~14:00、夜17:30~22:00
定休日:月曜ほか ※詳しい営業日は公式Instagramで。
https://www.instagram.com/sushidokorominori/

丼上で混ぜる唯一無二のカレーうどん/うどんの萬栄

「着いたら、まず“萬栄”のうどんだ、と飛行機の中から決めていたんです」と語る人がいた。
 
「うどんの萬栄」は、益田駅のほど近く。益田のソウルフードで、小さい頃から刷り込まれている味、という人も多い。希少食材を使うわけでなくとも、その土地でしか食べられない味というものが、確かにあるのだ。
 
まず目を引くのが、太さにムラのある自家製の太麺。注文を受けてから調理する、切りたて・茹でたて。噛めば新鮮な風味が立ちあがる。そうか、うどんとは鮮度が重要な食べものだったのかと思わされる。その麺が、濃厚な甘めのつゆをグッとつかんで持ち上げる。そこに卵の黄身を絡めればすき焼きの感じにも近くなる。うまい。

注文を受けてから麺を切り、茹でる。カウンター席に座ると調理の様子がよく見える。太さにムラ感のある自家製麺は独特の食感。つゆによく絡む。
きつね、肉、揚げ、卵などの人気トッピングが乗った「特製うどん」に「カレー」をトッピング。卓上の自家製天かすをのせるのが萬栄スタイル。お腹に余裕のある人は、おにぎりの追加がおすすめ。

好きなメニューを頼めばいいけど、最初は「カレー」のトッピングを追加してみてほしい。レードルでひとすくいしたカレーがスープに浮いて出てくる。それをつゆに混ぜながらいただくのだ。
前半はそのまま。後半はカレーを甘いつゆに溶かしカレーうどんにしていく。この移り変わりが楽しい。聞けば、カレーは肉うどんの調理の際に出る肉汁で仕込んでいるという。カレーの強烈な旨みは、そういうことだったのか。こんなカレーうどんは他にない。中毒性がある。空港から直行したくなる気持ちが、よくわかる。

INFORMATION

うどんの萬栄

住所:島根県益田市あけぼの本町3−15
TEL:0856-23-4103
営業時間:11:30~20:00 定休日:不定休

ランチもおやつもお土産もぜんぶ/モヌッカ

空港に着いたらすぐ遊びに出かけたい。でもお腹は減っている。二人旅なら相手と空腹のタイミングがズレることも多い。旅は思うように進まない。その進まなさを乗りこなす力が、旅人には問われる。
 
しかし、安心してほしい。萩・石見空港に来るなら、「モヌッカ」がある。腹ペコでも、時間がなくても、あとでお腹が減りそうで心配でも、お土産も買いたくても、ぜんぶモヌッカがどうにかしてくれる。
 
モヌッカは焼きたてのパンが並ぶ評判のベーカリー。朝の便で羽田を出発すれば、萩・石見空港に着くのが10時台になる。そこから店へ向かえば人気のパンが出揃う時間帯になる。

ドライフルーツや季節のフレッシュフルーツを使ったパンは、ドライブ中のおやつにも。
自家製コンフィチュール。左側が贈答用の高級品種「シャインマスカット」を使ったもの。右側が、濃厚さが売りのオリジナル品種「黒太郎」。焼き菓子との相性もいい。

ランチならパストラミサンドなどボリュームあるサンドイッチが定番。有塩バターと板チョコをバゲットに挟んだ「ショコラブール」はリピーターの多い人気の品。つい具材に注目しがちだが、パンの生地そのものが、抜群に美味しい。噛むたび小麦の旨みが広がる。土や風を感じる力強い風味が、生地にある。
 
個人的には旬のフルーツを使ったパンは必ず1つは食べたい。そもそもモヌッカの母体は老舗のぶどう園「田中葡萄園」で、フルーツは本領なのだ。さらに忘れてはいけないのが自家製の「コンフィチュール」。シャインマスカットなど贈答用の葡萄を贅沢に使えるのはぶどう園ならでは。「黒太郎」などオリジナル品種のコンフィチュールもあり発見する楽しさもある。もちろんパンと合わないわけがない。
 
コーヒーも買えるからイートインスペースで食べてもいいし、天気が良ければテイクアウトして近くのビーチまで車を走らせるのも、いい。焼き菓子はドライブ中のおやつになるし、コンフィチュールはお土産にもなる。

INFORMATION

パン&コンフィチュール Monukka(モヌッカ)

住所;島根県益田市高津4-2-7
TEL:0856-23-6530
営業時間:9:30~17:00(パンの焼き上がりは10:30〜) 木・金・土曜、第4日曜の営業

顎を使ってこそわかる、益田の蕎麦の底力/竹の家

「田舎の蕎麦の食べ方を、わかっていない人が多い」と、益田に暮らす食通の人が嘆いていた。曰く、江戸の蕎麦はその繊細さを持ち味とするなら、田舎蕎麦の魅力は噛んで味わう野趣にあるという。「こっちの蕎麦は、顎で食べるとええよ」とその人は言った。その食通の人が東京から来たゲストをよく連れて行くといって教えてくれた店が「竹の家」である。

奥出雲のそばを石臼で挽いてつくる、手打ち麺。甘めのつゆに負けない、蕎麦本来の風味が楽しめる。写真はざるそば。
3色割子そばと天丼のセット。ボリュームもあり人気。

食べてみると、その人の言わんとすることがよくわかった。麺がうまい。本当に、うまい。噛むほどに旨みが立ちのぼり、後から後から増してくる。噛んで、噛んで、その先に、高原のような爽やかな風味が鼻腔を駆け抜ける。飲み込むのがもったいない、と思う。
次から次へ新しい刺激を求める都会的なスピード感のままでは、この蕎麦の本当の美味しさには出会えない。もちろん、ザッと啜っても十分にうまい。のどごしも良い。しかし、そうした瞬間的な快楽の先には、時間をかけてのみ辿り着ける幸福がある。倍速で再生しても映画の本当の魅力はわからないのと同じではないか……と、そんなことを考えながら、そばをいただいていると、隣の席から「この店は、夜のつまみもぶち美味いんよ」と声が聞こえた。思わず、益田の夜の楽しみがひとつ増えた。

INFORMATION

竹の家

住所:島根県益田市駅前町19-7 
TEL:0856-23-3131
営業時間:
昼 11:30〜14:00(LO13:30)
夜 18:00〜20:30(LO20:00)※2階宴会場の予約が無い時のみ営業
2階宴会場(予約のみ)17:30〜21:30
定休日:日曜 ※月祝の場合は、日曜営業・月曜休み

Photo Yuri Nanasaki
Text Masaya Yamawaka

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