EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ

気づけば長居。
店主との距離感が心地いい、大田市の2軒。

山陰のドライブといえば、海沿いの国道9号線。ですがただ目的地に向かって走るだけじゃもったいない。国道からちょっと外れた場所に、思わず立ち寄り、気づけば長居してしまうお店があるんです。会話から花束を作ってくれる個性的な花屋。バーガーを頬張りながらついつい話し込んでしまう店。共通するのは、店主との距離感がちょうどいいことでした。

海を望み、会話を楽しむ花の店「botan」

SNSで見かけた、窓いっぱいに広がる海と花の景色。

その一枚の写真に惹かれて向かったのは、国道から港町へと少し入った坂の上にある「botan」です。

港町の静かな住宅地の中に、ひっそりと佇んでいます。

白い建物の扉を開けた先へ進むと、左手に大きな窓。窓いっぱいに広がる日本海に、思わず足が止まります。

晴れた日は海の青がいっそう鮮やかに見えます。十字の窓枠が海をひとつの景色として切り取り、その手前にドライやプリザーブドの花々が並びます。
店内のアクセントになっているターコイズグリーンの壁。実はここ、最初は白い壁になるはずだったそう。

「お花屋さんというより、インテリアや雑貨を選ぶ感覚に近いかもしれません」と店主の大垣さんは言います。並んでいるのは、持ちが良く、日々の暮らしに自然と馴染むドライフラワーやプリザーブドフラワー。

花屋に一人で入るのは、少し緊張します。おしゃれな店ほど、普段花を買わない自分が入っていいのか迷うものです。でも大垣さんは「見るだけでもどうぞ」と笑顔で迎えてくれました。

「ただこの景色を見て、癒やされて帰るだけでもいい」と大垣さん。実際、近所の人が休み時間にふらっと訪れたり、夕方の海を眺めに来ることもあるのだそう。

やわらかな色合いでまとめられたブーケや小さなアレンジメントは、華美ではなく、かといって地味でもない。「『ただ可愛いから』と手に取ってもらえるのが一番嬉しいんです」。その言葉通り、並んでいるのは気負わずに飾れるものばかり。

旅先で花を買おうと思う人は、多くないかもしれません。でも、もし気になるものがあれば、ドライフラワーは軽く、潰れにくい。生花のように「枯らしてしまうかも」という緊張感もなく、旅の思い出として持ち帰るのも悪くありません。

店内にはドライフラワーだけでなく、多肉植物や雑貨も並びます。父の代から続く焼き物工房の面影を残す店内には、温かみのある器や鉢も。

窓からの光は時間とともに移り変わり、同じ場所でも時間によっては店内の色合いが変わります。鉢の中にさりげなく佇む河童の置物など、店内のディスプレイには大垣さんの遊び心が感じられます。

「どちらからいらしたんですか?」とさりげなく声をかけてくれる大垣さん。そんな話をしながら、ブーケを仕立ててもらいました。

店の外はすぐ海。砂浜に降りることもでき、海風を感じながら過ごす時間も楽しめます。

旅の途中でも、帰り道でも。「botan」は、気負わず立ち寄れる花屋でした。

※オーダーの花束はその場で制作するため、平日にのみ対応されています。

INFORMATION

プリザーブドフラワー botan

住所:島根県大田市鳥井町337-3
Instagram:https://www.instagram.com/botan.puri/

漁師町でハンバーガーを頬張りながら、会話を楽しむ「WAMOTO」

「botan」から車で数分。漁港に面した一角に、漁師町の風景の中で少し雰囲気の違う建物が。その違和感に引かれて入ったのが「WAMOTO」です。店の前には漁船が並び、港の空気がそのまま流れ込みます。

町の一角にある「WAMOTO」。港のすぐそばにある小さな店です。港町の風景の中で、南国のような色合いの看板が目印。
「WAMOTO」のすぐ目の前にある静間の漁。ゆっくりと時間が流れる場所です。

迎えてくれるのは、村本さん夫妻。東京での暮らしを経て妻・志磨さんの地元である大田市に戻り、この店を営んでいます。明るくおしゃべり好きで、注文の合間にも町や海の話を気さくに語ってくれます。

人気はハンバーガー。注文を受けてから焼き上げるパティは、ブラックペッパーと塩を効かせたしっかりめの味付け。レタスやトマトとともにバンズに挟み、オリジナルソースでまとめたシンプルな構成です。

全粒粉入りの香ばしいバンズに、たっぷりのレタスと厚切りトマト。

看板メニューのレギュラーバーガー。チーズなどのトッピングを追加して、自分好みにカスタムすることもできます。

ここは港町だけあり、地域の人たちは日常的に魚を食べています。外で食べるなら、むしろ肉がいい。そんな話を聞いて、最初は魚のすり身を使ったフィッシュバーガーを考えたこともあったそう。けれど試作を漁師さんに食べてもらうと、「これはちょっといけませんね」と一言。それで今のバーガーになりました。その漁師さんが、今ではてりやきバーガーを買いに来るというのも、この町らしい話です。

高さのあるバーガーに、最初は少し戸惑います。包み紙を開こうとすると、横から「そのままだと飛び出すから」と声がかかりました。言われた通りにかぶりつくと、肉の旨みとじっくり焼かれたオニオンの甘みが広がります。

食べ方ひとつにも声をかけてくれる、その距離の近さ。気づけば、それも含めてこの店の居心地のよさなのだと感じていました。

明るく気さくな志磨さんと雄二さん。二人との会話も、この店の楽しみのひとつ。
木の梁が見える店内。カウンターなどは、二人で少しずつ手を入れて作ってきました。

午前中は地元の常連客でにぎわう、静間漁港のすぐそば。

アメリカンな雑貨は、志磨さんが東京で買い集めたもの。

INFORMATION

Stay&Cafe WAMOTO

住所:島根県大田市静間町287-1
Instagram:https://www.instagram.com/WAMOTO_m.s/

Photography / Teppei Sasaki
Text / Saori Kano

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