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高山都さん・安井達郎さんの萩・石見旅
「萩の器と食」前編

モデル 高山都 / 安井達郎

高山都さん・安井達郎さん夫婦旅の2日目。今日は400年の歴史を持つ、萩の焼き物文化の今と昔をめぐります。

萩までは、昨日宿泊した津和野から車で1時間ほど。萩・石見空港から直接向かえば1時間半ほどの道のりです。撮影時期はちょうど紅葉の頃。

高山都
1982年生まれ。モデル、俳優、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。料理やうつわなど、日々の暮らしを発信するInstagramも支持を集める。趣味は料理とマラソン。著書に『高山都の美食姿』シリーズ(双葉社)など。

安井達郎
1988年生まれ。モデルとしてCMや広告、雑誌などで活躍。映像作家としてnever young beach、indigo la EndなどのMV監督を務める。近年はYouTubeでのVlog発信に加え、写真家としても活動中。

萩焼のルーツ髙麗左衛門窯で400年の歴史を学ぶ

茶人に愛される抹茶茶碗を指して「一楽、二萩、三唐津」という言葉があります。このうち「二萩」が、今日の旅先である山口県でつくられる「萩焼」のこと。

「萩焼は以前から使っていて、色も素敵ですし、使いやすくて好きなんです」と、器好きの都さん。

しかし、萩焼とは一体どのような焼きものなのでしょうか。どんな歴史があるのでしょうか。そんな萩焼のいろはを学ぶため訪れたのが、坂髙麗左衛門(さかこうらいざえもん)窯です。

出迎えてくれたのは2022年に14世・髙麗左衛門を襲名した坂悠太さん。ふたりは萩焼の歴史に真剣に耳を傾けています。

「萩焼は400年の歴史がありますが、ずっと同じものを作り続けてきたわけではないのです」と、語るのは当主の坂さん。2022年に名跡「髙麗左衛門」を30代で襲名しました。

萩焼のはじまりは今から約400年前。戦国大名の毛利輝元が朝鮮半島から呼び寄せた髙麗茶碗の陶工兄弟が、萩に窯を開いたことがはじまり。その陶工兄弟の弟・李敬(りけい)を初世髙麗左衛門とし、14世を担うのが坂さんです。

坂髙麗左衛門窯の器たち。萩焼らしいやわらかな色味が、抹茶の緑に映えます。

「江戸時代に藩の御用達として栄えた萩焼ですが、明治維新で藩の保護が弱まってからは茶道文化に支えられて発展しました。明治初期にはパリ万博へコーヒーカップを出品したこともありますし、今は現代の生活によりそう器も、多くつくられています。時代の変化の中で常に挑戦し変化してきたのが萩焼ではないかと思います」(坂さん)

そんな萩焼の400年の変遷を見られるのが、こちらのギャラリースペース。初世から、代々の坂髙麗左衛門の作品が飾られています。

400年前の初世の作。古くからの慣わしでは初世から三世髙麗左衛門の作品を「古萩」と呼び、茶人や数寄者たちの憧れの存在といわれます。

古萩の茶碗に歪んだ形が多いのは、千利休の弟子で、ゆがみを美とした革新的な茶人・古田織部の影響といわれます。ちなみに織部は名作漫画『へうげもの』にも描かれています。

400年前から代々の髙麗左衛門による器が並びます。初世の頃と今では使う土も違うそうです。

ワイングラスのような西洋のニュアンスも感じさせる八世の作品。

十二世坂髙麗左衛門の作。専門としていた日本画の絵付けを施し、萩の陶芸界に新しい潮流を作った人物。

現代の髙麗左衛門窯の茶碗たち。「薪の炎で焼く登り窯はガス窯のようにコントロールが効きませんが、その偶然性が作品に表情を与えます」と坂さん。

「萩焼は、ある意味、汚れやすいのです」と坂さん。「しかしそれこそが萩焼の魅力であると思います」という言葉に、都さん、達郎さんも耳をかたむけます。

「萩焼は焼きが甘く、土の焼き締まりが弱いんです。そのため水分が染みやすく、お茶を入れるとそれが沁みて、使うほどに色が変わっていきます。その変化が面白いんですね」(坂さん)

最初が完成ではなく、使うことで生まれる変化を美点と捉え、使いながら育てていく。そこには時間の移ろいを愛でる心がありますし、時代の変化によりそいながら次のクリエーションを創造する萩焼の歴史に通じるものがあるようにも思えます。

都さん、達郎さんのため用意してくれた抹茶茶碗。歴代の髙麗左衛門による器から。

グレーやオレンジがかった独特の色合いは、窯の炎の微妙な変化によってもたらされるため、1つとして同じものはないそう。

「すごく格好いいですね」と器に見入る達郎さん。「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる釉薬表面に生まれるこまかなヒビに心を奪われたよう。

100年以上前から受け継がれる登り窯は、今も現役。
お庭も見学させてもらいました。

 「坂さんの“登り窯の炎はコントロールしきれないのが面白い”という話が印象的でした」と達郎さん。「偶然に身を任せることで、想像を超えていくという。作り手の方のお話は本当に面白いです。とても刺激になりました」
 
髙麗左衛門窯では、窯の訪問見学を受け入れています。気になる方はホームページから申し込みを。もちろん現地で坂窯の作品の購入も可能。作家のこだわりと、400年の歴史に触れ、作品を手にする喜びは特別な贅沢です。

 JIBITAで、萩焼の“今”に触れる

次は、萩焼の現代作家たちの多様な表現に触れましょう。伺ったのはGallery JIBITA。萩焼きをはじめ、オーナーが全国で出会った作家の器を扱う、器好きならぜひ立ち寄りたいお店です。

「陶芸ファンを増やしたくて作った場所なんです」と語るのはオーナーの熊谷さん。扱う器の中には、現代の生活様式に合うものを、作家と共同で生み出したものも多数。さっそくふたりが、気になるものを見つけた様子です。

早速手に取ったのは渋谷英一さんの器。
「現代の萩焼で最も人気のある作家のひとりです」とオーナー熊谷さん。

熊谷さんがJIBITAを開いたのは2013年。茶道具や近現代工芸メインの美術商の仕事を経験し「日本の伝統工芸の魅力が十分に伝わっていない」と感じたことが、店を始めたきっかけだそう。

続いてふたりが足をとめたのが、こちらのグレーがかった萩焼のお皿。一見、萩焼伝統の白萩の様にも見えますが少しそれとも違い、『どんな窯元なんですか?』と都さんが尋ねると、「実は、あまり言っていないのですが、僕が制作したものなんです」と熊谷さん。

写真の皿は、熊谷さんの屋号「隣窯」のもので、山陰の冬の曇天をイメージしてつくったシリーズだそう。たしかに、寒空を覆う厚い雲を思わせる、静やかな雰囲気があります。

「子どもの頃は、山陰の冬のどんよりした空が嫌いでした。それが、大人になって地元に戻ってきたら、あんなに嫌だった空がきれいだと感じて、強く惹かれるようになったんです」(熊谷さん)

 「何気なく手に取りましたが、土地の風景が反映されていると聞いて、さらに惹かれました。作家さんのこだわりに触れると器への愛着が深まります」(都さん)

「夫婦で仲良くしてもらっている友人の誕生日が近いのでプレゼントに。旅先で誰かのことを想像して買い物するって楽しいですよね」(達郎さん)

若手作家の個展や企画展も開かれ、訪れるたび新しい発見があるのも魅力。JIBITAに来ると、400年の歴史という土台の上で、萩焼が今なお挑戦と進化を続けていることが、体感できます。達郎さん・都さんも袋いっぱいにお買い物を楽しんだ様子。

萩旅の後半では、散策しながらさらにお買い物。ヴィンテージストアやギャラリーレストランで、萩の文化に触れます。

この記事で訪れた場所

坂髙麗左衛門窯

住所:山口県萩市椿東1922
TEL:0838-22-0236
https://www.sakakoraizaemon.co.jp
(見学・訪問の申込はホームページから)

Gallery JIBITA

住所:山口県萩市東浜崎町138−6
TEL: 0838-22-8725
https://www.jibita.com

Photography Yuri Nanasaki  
Edit&Text Masaya Yamawaka

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