平成20年4月に、大国主大神が御本殿から御仮殿に御遷座される「仮殿遷座祭」が執り行われました。そして翌21年から、御本殿は大きな素屋根に覆われ、本格的に修造工事が進められてきました。
御本殿大屋根の修理は、檜皮(ひわだ)の撤去、野地板などの修理を経て、新しい檜皮による葺き作業も終わり、いよいよ平成24年3月より、この修造期間御本殿を覆っていた、大きな素屋根の解体が始まります。
そして来年平成25年5月10日には、大国主大神が修造の終わった御本殿にお還りになる「本殿遷座祭」が執り行われます。
素屋根解体を前に、「平成の大遷宮」最後の特別拝観が、2月17日から29日まで実施されることになりました。
次のご遷宮は60年先。御本殿を間近に拝観できる、今回最後の機会をぜひお見逃しなく!
新しい檜皮葺きが終わった御本殿大屋根。間近に見ると、その重厚な迫力と古からの技術の見事さに圧倒されます。
過去の修造を知る職人も記録もない中、工事前の調査によって先人の様々な技と工夫が明らかになりました。御本殿大屋根には「ちゃん塗り」と呼ばれる特別な工法が使われていたことが分かり、今回の修造では「ちゃん塗り」を施した約130年前の大屋根が再現されました。
檜皮は防水性に優れており、伝統的木造建築の最高の屋根材とされます。
御本殿大屋根の面積は約180坪、軒先の厚さは約1mにもなり、約64万枚という膨大な檜皮が葺かれています。
一般的には2尺5寸(約75cm)の長さの檜皮が用いられますが、出雲大社では、3尺5寸(約105cm)や4尺(約120cm)という破格なサイズの檜皮も使用され、1枚1枚、丁寧に竹釘で固定されます。
檜皮がきれいに1列に並べて葺かれ、大屋根のゆるやかなカーブや軒先のそりなどが、檜皮の葺き方だけで見事に形作られている様を間近に観ると、その匠の技に感嘆せずにはいられません。
鬼板や千木・勝男木などを覆う銅板には、松ヤニやエゴマ油、鉛、石灰を混ぜた「ちゃん塗り」塗装が施されます。
銅板は表面に緑青(ろくしょう)ができると丈夫で長持ちしますが、緑青ができるまでの期間を、この「ちゃん塗り」が保護してくれるのです。
大屋根上部の鬼板や千木などは墨を混ぜた黒色のちゃん塗りですが、破風板を覆う銅板には、緑青を混ぜた「ちゃん塗り」が施されています。
檜皮を固定するために使用される竹釘。
金属製の釘は、錆びて檜皮との間にすき間ができてズレが生じてしまうため使わず、伝統的な竹の釘が使用されます。
燻した竹は腐らず虫もつきにくく、また丈夫なので、檜皮同士だけでなく木材に固定する用途にも使用できます。