2022年08月12日 公開
松江市から車で約30分、中海に浮かぶ大根島(だいこんしま)は、約20万年前の噴火によって形成された火山島。かつては船でのみ渡ることができた小島には、その特異な成り立ち、立地から、独自の文化が形成されています。
最近ではそり立つ壁のような「江島大橋」、日本の伝統美が光る「日本庭園 由志園」が島根観光の目玉として国内外から注目度上昇中。島内には地元民すら知らないワクワクがいっぱいです。今回は絶景&奇景の2大名所を中心に、松江旅の穴場、大根島の魅力をまるっとご案内します!
東西約3km、南北約2km、車で一周しても30分ほどのコンパクトな大根島。隣接する江島も含め、今から約20万年前に噴火した玄武岩の火山岩からなる平坦な島です。
黒土(くろぼく)と呼ばれる豊かな土壌に恵まれ、「高麗人参」をはじめとする農産物、「牡丹」の栽培も盛んです。特に牡丹は約300年前から続く、島の名物であり、島内には牡丹園も複数点在。牡丹の最盛期となる初夏には、あちこちで気品あふれる牡丹の花景色を見られます。
本土とは陸路で繋がっていて、国宝・松江城からは車で約30分。鳥取県境港市の「米子鬼太郎空港」からは車で20分ほど。ちょうど松江市内と境港市の中間点に位置します。JR松江駅・JR境港駅から大根島方面の路線バスが運行していますが、あちこち巡るなら車での周遊がおすすめ。
約1万2000坪もの広大な敷地に、日本の伝統美を散りばめた「日本庭園 由志園」。池を中心に、滝や枯山水庭園などを配し、季節の移ろいとともに花木が彩りを添えます。
昭和42年、創業者が1台のブルドーザーで造園に着手し、昭和50年に築山式の日本庭園が完成。その後アップデートを重ね、現在の池泉回遊式日本庭園に。清流・斐伊川の流れ、奥出雲の大渓谷・鬼の舌震など、出雲地方の風情あふれる名所が表現されています。
庭園はぐるり回って30分ほどですが、通年で牡丹が見られる「牡丹の館」、お休み処では雑貨も販売しているので、じっくり楽しむことができます。
ゆっくり観賞したあとは、施設内の茶房や食事処へ。美しい庭園を眺め美味しいランチ&カフェタイムも過ごせば、心穏やかにリフレッシュできそうです。
牡丹を池に浮かべた催しやイルミネーションと、四季折々に移り変わる美しい庭園をいかしたイベントも必見です。
牡丹の最盛期に合わせた催しで、一年を通してもっとも多くの来訪者がある名物。池泉が見えないほどに、赤やピンク、白の牡丹を浮かべています。GW最終日には、黄色い牡丹を浮かべた「黄金の池泉牡丹」が登場予定。
6月上旬~8月下旬にかけて、ドライミストの噴霧を実施。まるで霧の中を歩いているような幻想的な景色がお待ちかねです。夜間には島根では珍しいサマーイルミネーションも。プロジェクションマッピングなど、見どころも多彩。
燃えるような紅葉に包まれる秋。岩や水面とのコントラストが際立ち、いっそう日本庭園の造形美を観賞できるのもこの時期の醍醐味です。11月中旬~12月上旬にはライトアップも行われ、とりわけ水面に映る紅葉の姿は必見!
130万球のLED電球を用いたイルミネーションは、島根県屈指の規模を誇ります。大山を模した電飾、光の回廊など、ロマンチックな景観の中をお散歩してみて。またこの時期、冬に花開く寒牡丹も見ごろになります。
園内にある予約制の食事処では、季節の旬を盛り込んだ会席料理が評判で、お手軽なミニ会席も人気です。
そのほか、気軽に予約なしで利用できる「竹りん」もあり、こちらでは地元産のそば粉使った出雲そば、うなぎ料理といった郷土豊かな品をラインナップ。日本庭園を眺めながらランチが楽しめますよ。
気軽にひと休みなら茶房「一望」もぜひ。大窓越しに臨む庭園は、まるで絵画のように美しく心身ともにリフレッシュできます。特産品である高麗人参を用いたスイーツ、濃厚な抹茶をアフォガード風にかけていただくアイスクリームぜんざいなど、和スイーツが揃い踏み。次の場所へ向かう前に、まずはひと休みしておきませんか?
日本庭園 由志園
〒690-1492 松江市八束町波入1260-2 [MAP]
[TEL]0852-76-2255 [営業時間]10:00~17:00(最終受付16:30)※季節により変動
[定休日]12/30・31
[料金]大人800~1400円、小中高生400~700円、未就学児無料 ※イベント時は変動
まるで壁のような道。その正体は、大根島のお隣に浮かぶ江島と、鳥取県境港市を結ぶ「江島大橋」。全長1446m、橋脚と橋桁が一体になったPCラーメン構造の橋では中央径間長が日本一位、世界でも3番目の長さを誇ります。自動車メーカーのテレビCMに登場し、現在、そり立つ壁のような見た目から「ベタ踏み坂」の愛称で国内外から人気。
「江島大橋」の供用開始は2004年。それ以前は、中浦水門橋という跳ね橋が架かっており、当時は船が通るたび通行止めになっていたそう。この道路事情を解消すべく1997年から着工されたのが「江島大橋」。「風」をイメージしたデザインで、橋の最高部は水面からの高さ約45メートルと巨大。島根県松江市側のこう配が急になっています。
橋のたもとから最高部までは徒歩おおよそ15分。最高部手前は広めの展望スペースになっており、島根半島や天気のいい日には中国地方の最高峰・大山も遠望できます。
専用駐車場はないので、橋近くの「ファミリーマート江島大橋店」駐車場を利用しましょう。
ジェットコースターのような「ベタ踏み坂」を撮れるのはドコ?島根と鳥取、どっちから撮るのが正解?そんな疑問に答えるべく、実際に現地でフォトポイントを探してきました!
「江島大橋」は島根側と鳥取側で勾配が異なります。島根側6.1%、鳥取側5.1%と、島根側の方が急こう配なので、写真撮影をする際は島根側(江島・大根島)で撮影するのがおすすめです。
「江島大橋」近くの土手から撮影した写真。ベタ踏み坂らしい写真は撮れないものの、橋の長さは表現できます。
撮影した場所はここ≫
急こう配の写真撮影をするなら、橋からグッと離れて大根島の北西岸へ。望遠レンズがあれば、道路が天に昇っているようなベタ踏み坂の写真が撮影できますよ。肉眼でも楽しめますが、写真を残すなら望遠レンズは必携。
撮影した場所はここ≫
時間や季節によって見え方も異なる江島大橋。撮りたい、見たい景観に合わせて訪れればまた違った楽しみ方ができます。
一年に2回、5月下旬と7月中~下旬にのみ、橋に火が灯ったような光景に出合えます。ダイヤモンド朝日と言われ、多くの写真愛好家が早朝から詰めかけるそう。
天に向って延びる橋を眺めるなら昼がベストタイム。橋の輪郭もクッキリ見られます。正面からではなく、角度を変えて撮影すれば、「風」をテーマにした大橋のフォルムを撮影できます。
照明が点灯し、闇夜にぼんやりと橋のシルエットが浮かび上がる夜間も見もの。あえて橋のたもと、見上げるような角度から撮影するのもおすすめです。
江島大橋
松江市八束町~鳥取県境港市 [MAP]
[TEL]0859-42-3705(境港管理組合)
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「江島大橋」のたもと近くに立つ「山美世」は、松江市におけるうなぎの有名店。使用するうなぎは、ミネラルを含む大根島の地下水で、数日間泳がせるこだわりぶり。
うなぎ料理の命とも言うべきタレも、大正3年の創業以来、改良を重ね現在の名店の味へ。蒸さずに焼き上げる関西風なので、より香ばしさと、うなぎが持つ本来のうま味を堪能できます。
そのほか、店の敷地内には「うなぎ神社」なる場所も。“人生がうなぎ上りになりますように!” そんな願いを込めてお参りしてみて。
うなぎ処 山美世
〒690-1401 松江市八束町江島1128-10 [MAP]
[TEL]0852-76-3198 [営業時間]11:00~15:00(LO14:30)
[定休日]1/1~1/7、11/16
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島民に聞いたガイドブックに載っていない珍スポットをご紹介。大根島ツアーと合わせて巡ってみて。
溶岩によって形成された隧道。世界的にも希少な生物も生息しています。事前予約で見学可。
予約先:0852-55-5523(松江市文化財課:平日8:30~17:15)
料金:大人500円、中学生以下無料
住所:松江市八束町寺津
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国の特別記念物に指定される溶岩隧道。周囲は柵で囲まれ、現在は入り口部分のみが見学可能。
住所:松江市八束町遅江
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防波堤代わりに設置された廃船。雑誌で取り上げられ難破船として話題になりました。
住所:松江市八束町入江
「女性が上陸すると海が荒れる」と伝わり、現在も女人禁制となっている島。
住所:松江市八束町入江
島の北側、「江島大橋」の撮影ポイント近くに浮かぶ小さな島。竜宮様が祀られています。
住所:松江市八束町二子
眺望自慢のカフェでひと息ついたり、島グルメを買ったり。「由志園」&「江島大橋」の2大人気スポットと一緒に、巡ってみてくださいね。
ウォーターフロントに立つ眺望自慢のカフェ。店内からの眺めはもちろん、白いコンテナの店舗の外観も含め、どこを切り取っても絵になります。7~9月頃はテラス席もオープンし、湖面をなでる涼風を受けながらまったりランチ&カフェタイムも。地元の特産品を活用したメニューも多く、特におすすめは八束町産「はまぼうふう」を使った「はまぼうふうと大山ベーコンのゆずこしょうパスタ」。清涼感ある独特な風味がクセになります。
〒690-1404 松江市八束町波入768-2 [MAP]
[TEL]0852-61-8382 [営業時間]10:00~18:00(LO17:00)
[定休日]月・火曜日
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大きくとられた窓からは中海を眺められる絶好のロケーション。店内では手作りの焼きドーナツが味わえます。バリエーションも豊富で、プレーン、チョコ、抹茶などの定番に加えて、季節限定ドーナツもラインナップ。ドーナツはテイクアウトもできるので、ドライブのおともにもどうぞ。また、さをり織り製品の製造・販売も。ティーブレイクと合わせて、ゆったりショッピングも楽しいお店です。
〒690-1406 松江市八束町二子1025-1 [MAP]
[TEL]0852-61-0182 [営業時間]10:30~15:00
[定休日]日曜日
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農業の好適地である大根島で、さまざまな農産物を栽培する「ふぁーむ大根島」が手掛けるアンテナショップ。自社栽培の農産物のほかに、島内で収穫されたしいたけやニンニクといった野菜もずらり。お土産にピッタリな加工品には、島で採れた大根のカレー、パクチーを使ったタバスコ「パクスコ」などを扱っています。商店が少ない島内で、生活に欠かせないお店としての役割を担うだけに、地元住民と交流できるチャンスがあるかも。
オーナーの遊び心いっぱいのゲストハウスは、築90年を超える古民家。土間をはじめ伝統的な日本建築が残り、心安らぐ空間になっています。最近では日帰り利用もOKのフィンランド式サウナ、フリースペース、ワークスペースなどが続々とオープン。小さな島で話題をふりまいています。さらに、月~水曜日には「島のぱすた屋さん」も営業中。ジビエや自家製味噌などを使ったパスタが味わえますよ。なお、サウナ利用時は事前に要確認。
周辺を田畑に囲まれたのどかなロケーションの中、のんびり時間が過ごせます。寝室は男女共用・女性専用ドミトリーがあり、いずれも無垢材を使った内装、インディゴブルーの色使いと、安らぎのスペース。共有キッチンで、地元の食材を買い込んでの料理作りも楽しめます。また、ミニベロに乗って楽しむ「島サイクリング」も人気。旅行ガイドブックなどには載っていない、穴場スポットへもすいすい。ジオサイトや出雲古代史にもふれてみて。
コンパクトな島内に、見どころがギュッと凝縮された大根島。それだけに各スポットを巡っても、半日程度あれば充分に満喫できますよ。島の近くには歴史深い港町・美保関町、そして「江島大橋」を渡れば “妖怪の街” こと鳥取県境港市・水木しげるロードへもすぐ。島根・鳥取旅のメインにプラスして、お出かけ計画を立ててみてくださいね!