天神ではあるが、
出雲にもゆかりのある神。
カミムスヒ
出雲の神々と深い関係が
カミムスヒは、『古事記』には「神産巣日神」、『日本書紀』には「神皇産霊尊」、『出雲国風土記』には「神魂命」と表記されます。
『古事記』によれば、天地開闢の際にアメノミナカヌシ、タカミムスヒとともに出現したとあって、「造化三神」と総称されます。カミムスヒは天界の神であると同時に出雲系の神とも関係が深く、たとえばスサノオに殺されたオオゲツヒメは自分の体に五穀を生じさせますが、それらを取り集めて種としたのがカミムスヒです。五穀の祖としての役割を果たしています。
またオオクニヌシとともに国づくりを行うスクナヒコは、カミムスヒの子ということになっています。『出雲国風土記』では、島根郡の加賀神崎に、四大神の一神であるサダ大神の誕生神話がありますが、この神様の母神であるキサカヒメはカミムスヒの子ということになっています。
オオクニヌシを蘇らせる
『古事記』の中で、オオクニヌシが兄弟神の八十神に焼き殺されたとき、カミムスヒはキサカイヒメとウムカイヒメを派遣してオオクニヌシを復活させます。その後、オオクニヌシが国譲りに同意し、出雲国の多芸志(たぎし)の浜辺に神殿を築いたとき、食事の世話をすることになったのがクシヤタマという神様です。クシヤタマは、臼と杵を使って火を切り出し、次のような祝詞を奏上します。「ここで私が切り出した火は、高天原ではカミムスヒの祖先神が住む立派な新しい御殿の煤(すす)が垂れ下がるまで炊き上げ・・」。ここでもカミムスヒの存在を見ることができます。自らは天神でありながら、高天原と出雲を結びつける役割を果たしているといえます。