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蟹のふんどし

 出雲市塩冶町出身の母親から聞かされた話だとのこと。関敬吾博士の昔話の分類では「笑話」の中の「愚人譚」に属し、さらに「愚か聟(息子)」の項目の中に位置づけられています。類話は全国的に広く分布しており、お馴染みの話のひとつです。 (解説 酒井董美先生)
酒井董美先生のプロフィール
五十殿卯三郎さん写真
語り:五十殿卯三郎さん(湖陵町 昭和2年生まれ・平成6年収録)


 これはね、おばあさんというか、母親から聞いた話ですけど、寝苦しい晩などに、卯三郎や、昔なあ、バカな婿がおったそうで、それが婿入りするときになあ、そこのお父つぁんが、
「あそこはなあ、浜に近くていつも(料理に)蟹が出る。蟹が出るときにはなあ、蟹には雌蟹と雄蟹とおってなあ、雌蟹というものは、大きな前向けて何というのだろうか、座布団みたいなもん抱えているけど、雄蟹にはおまえがしているふんどしと同じようなふんどししているそうなわ。それでなあ、食うときになあ、その雌蟹のときには、前の座布団みたいな腰巻きをはずして、雄蟹のときにはふんどしはずしてなあ、そしでそのものをはずいたものを、膳の横へ向けて何か椀があればなあ、その椀の蓋の上へ置いて、からを割ってから食でるものだよ」
「ああ、そうかね。ふんどしはずしてねえ。ふんどしはずすんだねえ」
 結局、そこへ行って、「ふんどし、ふんどし、ふんどし・・・・」と思って、まあ、行ったもんだげな。
 そうしたところが、案の定、蟹が出た。
 (はあ、ふんどしなあ、ふんどしなあー。見たところが、座布団ではなくて、自分がしているふんどしと同じようなふんどし・・・はあ、そうか。ふんどしはずしてなあー、それで、横へ向けて椀の蓋をおいて、その上へ置く。うーん。ふんどし、ふんどしかー)
 そこで、バカ婿のバカというところだがなあ。蟹のふんどし、はずせばよかったけれど、自分のふんどしはずして、、それでも嫁さんのとこへ向けて婿入りしたのだから、せめてふんどしは四つなり八つになり畳まなければいけないということだけは覚えていたらしいわ。やっぱり、そこのところは親のしつけだねえ、いくらバカでもはずしたものは畳むという、そこのところ、そのバカ婿・・・、ただ蟹のふんどしというところが途中で迷ってしまったというのが、バカだったらしいわ。
 それを、結局、近所の者がびっくりして、
「おまえ、何をするのか」
「いや、”蟹のふんどしというものははずして食うもんだ”ということを、家のおばあさんに聞いたものだから」


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