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歌をやめた西行さん

 西行法師は、平安時代の末から鎌倉時代にかけて活動した人で歌詠みが得意な僧侶で有名です。『新古今和歌集』には94首の最高歌数が採録されており、家集に『山家集』があります。また、熱田の宮とは名古屋市熱田区新宮坂町にある熱田神宮のことです。これは一種の伝説ですが、有名な人のエピソードとして、だれかが創作したものが評判を呼んで、こうして伝えられているものと思われます。 (解説 酒井董美先生)
酒井董美先生のプロフィール
 
高橋ハルヨさん写真
語り:高橋 ハルヨさん
(大和村 明治35年生まれ・昭和49年収録)


 昔むかし、西行さんといってねえ、歌詠みの方がおってだったげな。歌を詠むことがとても上手で、歌で修行をしておられたげな。
 あるとき、西国を回っておられた時分に、どうもお便所に行きたくなって考えておられなさったら、ここに、そうっと窪んだところがあるから、ここでお便所をしようかと思って、山の中でお便所をしなさったげなね。
 お便所をして、ひょいっと後を見なされば、ウンコがぐりぐり歩き出したげない。西行さんは、歌をよく詠む人だから、
 西行が四国西国めぐれども 生き糞ひったはこれが初めて
と言って詠みなさったげな。そしたらねえ、ガマが下から、
駄賃取らずの重荷負いとは これがことかや
と言ったので、西行さんも生き物に一句、取られなさって、西行さんも、
「ようにしもうた。句に負けたわい。これじゃあ、わしも修行ができんかしらん。いままでえっと歌あ詠んで修行しただに」と思って、またそこから出なさって、熱田の宮へ参りなさって、また歌あ詠みなさったいうて。
 これほど涼しきこの宮を 熱田が宮とはだれが言うたか
と言って詠みなさったげな。そしたらねえ、熱田の宮の宮司さんが
 西行は西行く坊主と書いてある 東に行くとはこれはいかに
と言うて詠んでだったげなで、とうとう西行さんは歌詠みの先生だったのに、歌を詠むことをやめてだったと。それこっぼり。


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