長い夜とあるから、この夜は秋の夜と思われる。もっとも、夜明けを待たれる御気持ちからは秋の夜に限らないが。愁の深い長い夜、夜明けを待たれるが、なかなか明けない。その中にやっと鶏の暁を告げる鳴き声が間近に聞こえる。夜が明けるのだ。待ち焦がれていた夜明け。よくぞ鳴いてくれた鶏。鶏に親近感を覚えられて、「友や」と言っていられるのだ。眠れない長い夜の間には、一人心の中に思われることが多く、そして愁を深くしていられる。夜が明ければ、その思いが消えると言うものでもないが、夜の闇の底よりも、明るい昼には、気の紛れることもあるものである。夜明けを待たれる心情、それは切ないものであった。 |