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小原先生の注釈 ■■
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野辺の草木を紅に染めるという雁の涙には色は無いことだ。物思いに沈んでいて、白露が一面に置いている隠岐の里には。白露が一面に置いているだけで、紅葉など一向していない。 |
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小原先生の解説 ■■
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雁が鳴いて空を渡って行くその声を聞かれながら、庭前の草木に一面に置いている白露を眺められての詠と思われる。院の歌の「露」には「涙」の意を持っている。雁の紅涙が地上の草木を紅葉させるというが、この隠岐では雁が空を鳴いて通るが一向紅葉をしない。雁の涙には色が無いのだ。それで一面に白露ばかりである。その露は我が涙なのだ。自分は涙を流しているばかりであるとの歌である。院の御眼には紅葉は映らないのである。涙と同じ白露だけが見えるのであった。 |
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