■■
小原先生の注釈 ■■
|
あわれにもほのかに戸を叩くように鳴く水鶏であることだ。老の寝覚の暁の頃に。 |
■■
小原先生の解説 ■■
|
水鶏は夏の景物として詠まれるが、その鳴き声が戸を叩く音に似ているといわれ、鳴くことを「叩く」といい、戸を叩くようなその鳴き声から人が訪ねてくるという歌に用いられ恋歌にも使われている。
ふと目を覚まされて、まだ暗い暁の頃、訪ねてくる者もいないはずの自分を、あたかも訪れて、しかも人目を憚る如くほのかに叩くが如く鳴く水鶏の声を聞かれて、しみじみと哀れを覚えられた御気持ちに浸っていられる。その御心には人懐かしい、また人恋しい御気持ちがあられたのである。 |
|