EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ
せわしない日常を忘れ、心安らぐ静かな場所で自分らしく過ごす。そんなとっておきの旅にぴったりな一棟貸し宿が、島根県の石見地方にあります。東京 羽田を飛び立ち、わずか90分で萩・石見空港へ。日本の原風景を感じられる美しい辺境の地で、いつもと違う体験を。

手付かずの豊かな自然があり、何気ない風景が絵になる場所。そんな美しき辺境である、石見エリアの一棟貸し宿を紹介するシリーズ。第二弾は、ノスタルジックな温泉郷や、城下町の面影が残る街へ。一棟貸しの宿を拠点に、静かな街をのんびり散策したり、地元の人々と触れ合ったりと、自分なりの楽しみ方が見つけられるはず。
有福家[江津市]
すぐそばには温泉街 土管のある魅惑の宿

福が有ると書く、縁起の良い名前に惹かれる「有福温泉」。1370年以上の歴史を持ち、こんこんと湧く美肌の湯と、レトロな佇まいが魅力のスポットです。そんな温泉街から一歩出て、緑の中にあるのが「有福家」。もともとは温泉旅館の社員寮だったとか。リビングに構えた大きな土管は、大人も子どもも吸い込まれてゆく魅惑のゾーン。土管の中で仲間と写真を撮ったり、薪ストーブの火を眺めながら過ごしたりできる、心落ち着くプライベート空間です。
ウッドデッキに屋根があるのもポイント。天候を気にせずバーベキューしたり、目の前を流れる小川のせせらぎを聴きながらお昼寝したりと、楽しみ方は自由自在。「泊まられた方には、外湯の入浴チケットをプレゼントしています」と、宿を管理する齋藤慎介さん。宿と共に、地域の良さも堪能してほしいという齋藤さんの心遣いが嬉しい。しかも、ひとり2枚ずつ! 宿にもお風呂はありますが、せっかくなので有福温泉を満喫しに行っちゃいましょう。

https://www.instagram.com/naminocozakkaten/
さらに、有福家から歩いていける穴場スポットもご紹介。1キロほどの場所にある苔の森「MOSS LAND」。オーナーである河村正樹さんの粋な計らいで、いつでも自由に散策OK。苔は寒さに強く、秋冬シーズンも青々と繁る森が楽しめるそう。豊かな自然に囲まれた山あいの温泉郷に泊まり、石見の自然を堪能してみては。
くらしのやどSHIKINOKASHA[津和野町]
職人技の光る居室で
ちょっと贅沢な暮らしを味わう

山陰の小京都と呼ばれる津和野町。なまこ壁や石畳といった、城下町の面影が残る美しい街並みが続き、古き良き日本の原風景を思わせる風趣に富んだ景色がみられます。カメラ片手に街歩きしたり、貸し自転車であちこち散策したりと、時間をじっくり使って巡りたくなるエリアです。
そんな昔ながらの情緒あふれる街にある、築200年以上の古民家が「SHIKINOKASHAくらしのやど」として生まれ変わり、2023年にオープン。お手入れは最小限に、建物の良さをそのまま生かした一棟貸し宿。地元の職人たちによる、オリジナルの家具や食器をしつらえた寛ぎの空間です。

お部屋を包むふわりとした温かみの正体は、壁紙や障子に使われている手漉きの石州和紙。お庭には石見の庭師さんが手掛けた美しい苔庭が広がり、別の窓からは緑あふれる「ポタジェガーデン」が。これはフランス式の家庭菜園のことで、目に美しく食べられるハーブ類、さまざまな野菜や実のなる樹木が育てられています。庭に足を踏み入れて、自由に見学するのもOK。オーナーの俵志保さん曰く、「些細な暮らしもちょっと贅沢と思える場になれば」。縁側に腰掛けて庭を眺めながら、石見の美味しい地酒を味わうのも良さそうです。
燈 tomoru[温泉津町]
風情ある懐かしの街に
暮らすように泊まる

世界遺産・石見銀山の一角、温泉津町。大正時代からこの街に建つ古民家を再生し、2021年に誕生したのが「燈」です。宿のスタッフ、近江風夏さんは「この地に暮らすように泊まってほしい」という想いを持っているといいます。内装リノベーションは「有福家」も手掛けている「SUKIMONO」による施工で、テーブルや椅子といった家具も手作り。さらには階段を上ると屋根裏に秘密の小部屋が。ここで仕事したらいいアイデアが生まれそう……と思ったら、やっぱりワーケーションとしても人気だそう。洗濯して裏庭に干して……と、まさに暮らすように泊まれる一棟貸し宿。初めて泊まる人も、どこか懐かしさを覚えるようなホッとする空間です。

また、歩いて5分の場所には、ノスタルジックな雰囲気漂う温泉津温泉が。湯巡りと共に、食事も温泉街の周りで楽しむのがおすすめ。移住者が営む飲食店が増え、そのクオリティたるや、あれもこれも食べたいから連泊しちゃおうかなレベル! 2023年オープンの「港の食堂KAN」は、名物・漁師めし定食が人気。広島県から移住してきた店長の松野莉央さん曰く、「温泉津は人が温かい。どこのお店に入っても、きっと面白い出会いがあるはず」。温泉津に宿を借りて街を巡れば、地元の人々との触れ合いも楽しめそう。
石見の職人のあたたかな手仕事に触れ、地元の人々との語らいを楽しみ、美しい自然の中で気の向くままにゆるりと過ごす。郷愁を感じる街の一棟貸し宿に泊まり、日々の慌ただしさから解放される旅はいかがでしょう。
Photo / Yuichiro Iwatani
Text / Megumi Tsukuba