世界的に貴重な地形や地質、特有の生態系、人の営みが「ユネスコ世界ジオパーク」に認定される島根県の離島・隠岐諸島。西ノ島町、海士町、知夫村があるエリアは島前と呼ばれ、隠岐の島町が位置するエリアは島後と言われます。島前、島後のワークスポットを訪ね歩く１泊２日の旅に出かけました。

【島前（どうぜん）編】
●海士町
松江市の七類港から３時間１０分ほどフェリーに乗り、初めに訪れたのは島前エリアの海士町。人口約２３００人の小さな島ですが、「ないものはない」を町のスローガンに、限られた資源の良さを上手く活かして移住者を積極的に呼び込む元気なまちです。

オープンは２００９年。UIターン者が増える中で「ふらっと立ち寄っておしゃべりしたり、盛り上がったりできる場所がほしい」という住民の願いに応え、町がかつての保育園を改修。「マーレ」はイタリア語で海を意味します。

「すみれぐみ」や「遊戯室」と書かれたプレート、園庭などかつての名残を感じられるのが魅力で１４年からはスタッフが常駐するように。今では木曜日を除く週６日間開設し「海士町のあそび場」として親しまれ、島民が気軽に訪れて交流したり、週末にはイベントでにぎわったりと地元でも人気のスポットです。

１７年には入口そばの倉庫を、勉強や仕事で活用できるよう整備。カウンター４席、テーブル６席、ソファー２席を備え、Wi-Fiを完備。

昔の保育園とあって、カウンターからは園庭を見渡せるほか、平屋で段差がなく、絵本やおもちゃのある子ども部屋もあり「緑に囲まれた空間で子連れでも安心してのんびり仕事ができるのが特長です」とスタッフの濱中裕代さん。施設内には誰でも使える和室、自由室、地元で使われなくなった食器などを数百円で販売する部屋「古道具やさん」、ビリヤード台のある多目的スペース「遊戯室」もあり、仕事の息抜きもできそうです。

開設時間は基本的に木曜日を除く日の午前１０時～午後５時で、島外からの個人利用も無料。島の出身者が帰省中に仕事で使うなど、ワークスポットとしての活用も増えているそうでテレワークが普及する中、観光を含めたワーケーション利用の広がりに期待し、施設を後にしました。

●西ノ島町
次に訪れたのは隣の西ノ島町。島前３島を結ぶ内航船に乗り、１５分ほどで玄関口・別府港に到着。タクシーで１０分ほど、町の中心地・浦郷区にある、西ノ島町テレワークオフィスを訪問しました。

今年４月にオープンしたばかり真新しい施設は２階建てで、コワーキングスペースは１階に１８席、２階に８席を用意。浦郷港のすぐそばとだけあって、窓からは海を見渡せ、気持ちが安らぎます。

１階には会議室があるほか、２階にはサテライトオフィス４室を整備。Wi-Fi、電気ポット、冷蔵庫、電子レンジ、ロッカー、会議用設備（４３インチモニター、８０インチモニター、プロジェクター、ホワイトボード）と充実した設備も魅力的です。

テレワークオフィスを整備したのは、西ノ島町。町産業振興課の松本寛海主任主事が経緯を教えてくれました。人口減少が進む島の活性化に向け、企業誘致を促進しようと、国のテレワーク関連の交付金を活用し、旧福祉施設を改修。サテライトオフィスに島内外の２社が入ったり、町の呼びかけで島外の事業者が体験に訪れたりと、順調な滑り出しだと言います。
　
「ネットのスピードも速く、自然豊かな離島の落ち着いた環境でストレスフリーで仕事ができます」と松本主任主事。今後は旅先で仕事するワーケーション利用を含め、施設の盛り上がりに期待しています。