EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ

石見のディープな夜を歩く。
名店の宝庫「新天街」ではしご酒

山陰随一のハイレベルな飲み屋街が石見にある……そんな噂を聞きつけ益田市へ。
羽田から萩・石見空港までは90分。空港のそば益田駅前の「新天街」に歩を進めれば、
そこは知る人ぞ知る 名店がひしめく飲んべえの楽園。
ネオン煌めくローカル酒場の深淵を覗きに、いざはしご酒! 

実はこの新天街、わずか200メートルの2つの路地に、80軒以上の飲食店が立ち並ぶ。チェーン店が少ない地域で個人店がしのぎを削り、レベルの高い料理を出す店が軒を連ねるように。さらにその中でも、ひと癖もふた癖もある店が人々に受け、今の形になったマニアックな飲み屋街だそうだ。どこから立ち寄っても面白い店に出会える予感がする。

一軒目 ニュートネ

絶品おつまみを肴に
多趣味なオトナが集う店

ディープなはしご酒の1軒目。怪しい予感が漂うピンクのネオン。

17時、新天街の西の端からスタート。怪しいピンクネオンに誘われるも、店内は一見すると和風居酒屋のようだが……「実は店のオーナーがDJで、ここでクラブイベントもできるようになっとるんです」と店長の石川さん。よく見れば天井にはミラーボール、奥の座席はDJブースに早変わりする造りだそうだ。噂どおり、新天街は癖のつよい店の宝庫!テンションも上がったところで、益田の海で獲れたヤイトガツオのたたきとビールで乾杯。大豆の味わいが濃厚なざる豆腐をすくい、目の前で揚げてくれる厚揚げが絶品。気になっていた店名の由来を聞くと、同じ場所にあった居酒屋『利根』の良さを残したくて『ニュートネ』と命名したとのこと。「先代から引き継いだ看板メニュー『利根のうどん』は締めに人気」。店長の言葉に、またニュートネに来る楽しみまでできた。

照明の色が変わりクラブにもなる、こだわりの店内。釣り・スキー・ボクシング、他にも多趣味な人は大歓迎だそう。
益田で獲れたヤイトガツオ(スマガツオ)のたたき。全身がトロと評されるくらい脂がのっている。
地元メーカー『やまや食品』のざる豆腐を目の前で揚げた絶品厚揚げ。ポテトサラダは味に惚れて入社したスタッフもいる人気ぶり。
店長の石川和弘さん。釣りが好きで、自身が釣った魚を店で提供することもある。

INFORMATION

ニュートネ

二軒目 寿司処みのり

川と海の恵みに合う
石見の地酒

キラキラと輝く、活きのよいアジやイカの握り。

益田市には水質日本一に何度も選ばれた高津川と、新鮮な魚介類が揚がる益田港がある。せっかくなら川と海の幸、両方を贅沢に味わいたい。新天街をくまなく探索し、東の端から少し進んだところに見つけたお寿司屋さんへ。益田に来たら必ず食べておきたいのが鮎。清らかな高津川で育った鮎は臭みがないのが特徴。一緒に合わせるのは400年以上の歴史をもつ酒蔵で造られる「宗味」の純米酒。石見の旨い魚と地酒の相性は抜群。地元の人が大好きな脂ののったアジや、甘い剣先イカの握りもぜひ。シメには名物「なみだ巻き」を。匹見や日原でつくられる島根わさびがたっぷりだ。「いつも食べとる人にはもっと入れる」と板長の中村さん。すりおろした山盛りのわさびを見せられれば誰もが驚く。だが勇気を出して、パクッと一口でいってみよう。辛さのあとからくる甘みを存分に感じられるはず。

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高津川で獲れた鮎や、濃厚な鴨島蛤、サザエのつぼ焼きが並ぶ。浜田市にある石州瓦の窯元『亀谷窯業』の器も魅力的。
島根わさびをふんだんに使ったなみだ巻き。
店名が書かれたピアスを着けるマネージャーのにしむらさん(左)。板長の中村さん(右)との掛け合いも見どころ。
2023年リニューアルし、1階をバリアフリー化。個室・大部屋ともに用意されている。

INFORMATION

寿司処みのり

三軒目 キャバレー赤玉

ディープ、モア・ディープ!
石見の夜はステージで熱唱

真っ赤な座席が印象的。益田市に残る、昭和のムード全開の場所。

ローカル飲みの最後はスナックでカラオケが定番?いや、益田の新天街には、全国的にも少なくなったキャバレーが現役で残っている! 創業80年以上の異空間で歌うという攻めた選択肢があるのが新天街の懐の深さ。 扉を開ければ、予想を超える空間の広がりや大きなダンスホールに驚くはず。かつては大勢の女性たちによる華やかなショーがあり、2階も満席になるほど賑わったそう。現在のショータイムは生バンドの演奏や大道芸、石見神楽の舞など、年に数回の特別なお楽しみ。キラキラ光る異世界でのパフォーマンスに、令和の時代も変わらず心を奪われる。「お酒を頼むときはライターに火をつけて高く上げるんよ」と、実際にやって見せるホステスさんの二の腕が色っぽい。石見弁で話す気さくな彼女たちに寄り添ってもらいながら、ステージでカラオケを熱唱するのが赤玉流。あえて昭和の名曲を選び、石見の夜に深く深く浸る……。

扉を開けると昭和の世界が待っている。入店を迷っている時間はもったいない。
益田産のアムスメロンも乗っている。赤玉グラスはお土産として購入することもできる。
ホステスさんに寄り添われ、ステージでカラオケを歌いあげる。
「レトロブームのおかげでショーに出てくれる方が増え、開催日も増えています」と話す、赤玉の代表社員、天野寛徳さん。

INFORMATION

キャバレー赤玉

日付が変わる頃、まだ光るスナックや飲み屋の看板に誘われながらも、再訪の思いを固めて次の楽しみにとっておく。旅先での夜、石見の食材を生かした料理や旨い酒、癖のつよい名店と出会えた新天街。 この世から飲んべえがいなくならない限り、ここはディープな街であり続ける。

Photo / Yuichiro Iwatani
Text / Megumi Tsukuba
Editing / Masaya Yamawaka

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