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石見に残るレトロスポット
うどん自販機巡りに出かけよう

1970年台に誕生した「うどん自販機」。製造が終了した平成7年頃までに、3社のメーカーで合わせて1万2千台以上がつくられた。今も現役なのは日本にわずか60台ほど。そのうち10台が島根県の石見地方にあるというから驚きだ! ただ、自販機の老朽化は避けられない。全国的に数が減っているのが現状、石見も他人事ではない。10台全ての味を楽しめるのは、今しかないのだ。

特に人気なのが「花ヶ瀬」という地区。萩・石見空港から車で8分のこの場所には、隣り合う2店舗で合わせて5台のうどん自販機がフル稼働中! 自販機とはいえ、中身は手作り。出汁も具材もその店のこだわりが詰まっている。それでいて、一杯400円前後という驚きの安さ。さあ、魅惑のマシーンを目指し、うどん自販機巡りへ出発しよう!

自販機コーナー オアシス

自販機の神が手掛けるこだわりの一杯

年季の入ったうどん自販機が2台、4種類のメニューがある。

人気スポット、花ヶ瀬で「オアシス」を営む田中健一さん。実は、島根県西部と山口県にある全てのうどん自販機の修理をたったひとりで担う、重要な人物。全国のレトロ自販機巡りをしている魚谷祐介さんの著書「日本懐かし自販機大全(辰巳出版)」や、YouTube動画で“自販機の神”と紹介され、すっかり定着している。「動画を見てうどんを食べに来たっちゅう人ともたくさん出会った」と嬉しそうに話す田中さん。

自販機の神、田中健一さん。店を訪れる人との交流を楽しみにされている。

自販機の神は味の追求にも余念がない。肉うどんの牛肉は、田中さんいわく「キレのある甘さ」。甘辛い味付けだけどしつこさがなく、また食べたくなるのが魅力。さらに、同じうどんでも、天ぷらうどんとは味の違う出汁をわざわざ使うこだわりぶり。至極の一杯がいただける店、まさにオアシスなのだ。

左が肉うどん。右のラーメンは、自販機の神が2時間かけて作るチャーシューが絶品。中に卵も隠れている。

おにぎりやパン、アイスなども売られている。全部で16台の自販機が稼働中。

ニキシー管と呼ばれる表示盤。見れば見るほどレトロでかわいい。

のぼり旗をモチーフにしたキーホルダー。花ヶ瀬という地名が入っている。お土産にいかが。

INFORMATION

自販機コーナー オアシス

  • 住所:島根県益田市安富町2597-1

後藤商店

激レアスポット
3台のうどん自販機が立ち並ぶ店

絶滅を危惧されているうどん自販機が3台も並ぶ、珍しい光景。

オアシスと横並びに店を構える後藤商店。稀少なうどん自販機がなんと3台、6種類ものメニューがある全国でも超レアな場所! 店の前には次々と車がやってきて、食べ終わったかと思えば、もう一杯食べはじめる人もいる。メニューが豊富なだけに、この店で味の食べくらべを楽しむ愛好者も多い。

具だくさんのスタミナうどん(左)、肉そば(右)、鶏天うどん(手前)。他にも3種類。豊富なメニューにワクワク。

好みの1杯を選んでボタンを押し、たった25秒で出来上がり。取り出し口を開けた瞬間、清々しい香りが漂ってくるサプライズ! 正体は、益田市美都町特産のゆずの皮だ。「ゆずが旬のうちに皮を冷凍保存しとるんよ。いつ来んさっても香りを楽しめるよ」と、お店の方。後藤商店で一番具だくさんなのはスタミナうどん。えび天にゆで卵、牛肉、かまぼこなど、豪華なトッピングに思わず笑顔がこぼれること間違いなし!

ラーメンを除く、全てのメニューに美都町特産のゆずが入っている。取り出す瞬間からいい香り。

仕出し弁当などと共に、うどん自販機の中身を手作りしているお店。

後藤商店から1kmほどの場所にある支店。うどん自販機が1台設置されている。

INFORMATION

後藤商店 本店

  • 住所:島根県益田市安富町1905-3
  • TEL:0856-25-2603
  • 後藤商店 支店
  • 住所:島根県益田市安富町1311

ドライブイン日本海

浜田で唯一のうどん自販機
ハシゴうどんを楽しむ観光客も

国道9号線沿い。自販機16台とクレーンゲームなどが置いてある。

萩・石見空港でレンタカーを借り、国道9号線を東へ40分。時間をかけてでも行きたい理由は、そこに浜田市でたったひとつのうどん自販機があるから。しかも、山陰ブルーの海が望める景色の良い場所。実は島根のうどん自販機の店で、海が見えるのは「ドライブイン日本海」だけ。

うどん自販機が1台。おにぎりやパンも販売中。電子レンジまで用意してある。

夜中でもアツアツのうどんが食べられる、癒しの休憩所。肉そばの牛肉は、甘辛くて濃い味付けが店主のこだわり。長距離運転などで疲れたドライバーの心身に沁みるのだそう。「毎日、昼前と夕方に補充しているけど、売り切れることもあるの」と語る店主。益田のうどん自販機とハシゴして楽しむお客さんも多い店。タイミングを見計らって来店し、浜田のうどん自販機も堪能したい。

肉そばの濃い味付け肉とあっさり出汁がよく合う(左)。天ぷらうどんにはえびとちくわの天ぷらが(右)

具は麺の下に入っている。写真を撮る方は、具を探し出してからどうぞ。

店から見える美しい日本海。すぐそばにある踏切は「みきとP」のミュージックビデオに使われた、若者に人気の場所。

INFORMATION

ドライブイン日本海

  • 住所:島根県浜田市西村町1075-3
  • TEL:0855-26-0572

まだまだある
石見のうどん自販機

紹介しきれなかったうどん自販機がまだまだある。テレビ番組でも取り上げられていない穴場を紹介しよう。それぞれ出汁の味やトッピングはバラエティ豊か。うどん自販機巡りの旅を数日かけて楽しむのもおすすめだ。

島根県益田市大谷町「自販機のお店 風花」

【風花】ゆずのいい香りがする肉うどん(左)。ラーメンは醤油ベース、手作りチャーシューも美味い(右)。

島根県鹿足郡津和野町「道の駅 シルクウェイにちはら」。オアシスの田中さんがラーメンと天ぷらうどんを作って充填している。

【シルクウェイにちはら】2種類とも人気で、この日は売り切れていた。島根わさびの色をモチーフに塗装された珍しい1台。

島根県鹿足郡吉賀町柿木「ふるさと村 大谷屋」

【大谷屋】かき揚げうどん(左)とラーメン(右)。店主が「何度も辞めようと思った」と綴る貼り紙も必見。

自販機の神、オアシスの田中さんに話を聞けば、2023年の夏は修理に奔走したそうだ。10台の自販機が元気なうちに、食べに行く価値がきっとある。1人でも多くの人に、うどん自販機を楽しんでもらいたい。せっかく石見に来たなら1杯とは言わず、何軒も回って食べくらべの旅を満喫してほしい。

Photo / Yuichiro Iwatani
Text / Megumi Tsukuba
Editing / Masaya Yamawaka

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