EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ

辺境の一棟貸し宿vol.02
ノスタルジックな街の隠れ家

せわしない日常を忘れ、心安らぐ静かな場所で自分らしく過ごす。そんなとっておきの旅にぴったりな一棟貸し宿が、島根県の石見地方にあります。東京 羽田を飛び立ち、わずか90分で萩・石見空港へ。日本の原風景を感じられる美しい辺境の地で、いつもと違う体験を。

手付かずの豊かな自然があり、何気ない風景が絵になる場所。そんな美しき辺境である、石見エリアの一棟貸し宿を紹介するシリーズ。第二弾は、ノスタルジックな温泉郷や、城下町の面影が残る街へ。一棟貸しの宿を拠点に、静かな街をのんびり散策したり、地元の人々と触れ合ったりと、自分なりの楽しみ方が見つけられるはず。

有福家[江津市]

すぐそばには温泉街 土管のある魅惑の宿

福が有ると書く、縁起の良い名前に惹かれる「有福温泉」。1370年以上の歴史を持ち、こんこんと湧く美肌の湯と、レトロな佇まいが魅力のスポットです。そんな温泉街から一歩出て、緑の中にあるのが「有福家」。もともとは温泉旅館の社員寮だったとか。リビングに構えた大きな土管は、大人も子どもも吸い込まれてゆく魅惑のゾーン。土管の中で仲間と写真を撮ったり、薪ストーブの火を眺めながら過ごしたりできる、心落ち着くプライベート空間です。
 
ウッドデッキに屋根があるのもポイント。天候を気にせずバーベキューしたり、目の前を流れる小川のせせらぎを聴きながらお昼寝したりと、楽しみ方は自由自在。「泊まられた方には、外湯の入浴チケットをプレゼントしています」と、宿を管理する齋藤慎介さん。宿と共に、地域の良さも堪能してほしいという齋藤さんの心遣いが嬉しい。しかも、ひとり2枚ずつ! 宿にもお風呂はありますが、せっかくなので有福温泉を満喫しに行っちゃいましょう。

自由にお散歩できる苔の森「MOSS LAND」。ガイドを頼んで案内してもらうことも可能(有料、要問合せ)写真:河村さん提供
https://www.instagram.com/naminocozakkaten/

さらに、有福家から歩いていける穴場スポットもご紹介。1キロほどの場所にある苔の森「MOSS LAND」。オーナーである河村正樹さんの粋な計らいで、いつでも自由に散策OK。苔は寒さに強く、秋冬シーズンも青々と繁る森が楽しめるそう。豊かな自然に囲まれた山あいの温泉郷に泊まり、石見の自然を堪能してみては。

奥に見えるのが有福家のシンボルである土管。リノベーションを手掛けたのは、地元江津市の建築デザインオフィス「SUKIMONO」。

8名まで宿泊できる。ベッドは3つ、必要に応じてお布団を用意。

キッチンスペース。2024年から朝茶漬けセットや、バーベキューの材料セットがつくプランも始まる予定。

有福家から歩いて3分の有福温泉街。レトロな外観の外湯や温泉旅館がひしめく。夜になると階段に設置された提灯がともり、幻想的な雰囲気に。

御前湯・さつき湯・やよい湯。風情ある3つの外湯で日帰り入浴が楽しめる。

INFORMATION

有福家

住所:島根県江津市有福温泉町977−1
TEL:0855-27-0720
Instagram:https://www.instagram.com/odaya_1655/

くらしのやどSHIKINOKASHA[津和野町]

職人技の光る居室で
ちょっと贅沢な暮らしを味わう

山陰の小京都と呼ばれる津和野町。なまこ壁や石畳といった、城下町の面影が残る美しい街並みが続き、古き良き日本の原風景を思わせる風趣に富んだ景色がみられます。カメラ片手に街歩きしたり、貸し自転車であちこち散策したりと、時間をじっくり使って巡りたくなるエリアです。
 
そんな昔ながらの情緒あふれる街にある、築200年以上の古民家が「SHIKINOKASHAくらしのやど」として生まれ変わり、2023年にオープン。お手入れは最小限に、建物の良さをそのまま生かした一棟貸し宿。地元の職人たちによる、オリジナルの家具や食器をしつらえた寛ぎの空間です。

浜田市の楓の木のソファーとテーブル。浜田市弥栄町で活動する木工作家の沖原昌樹さんにより製作。

お部屋を包むふわりとした温かみの正体は、壁紙や障子に使われている手漉きの石州和紙。お庭には石見の庭師さんが手掛けた美しい苔庭が広がり、別の窓からは緑あふれる「ポタジェガーデン」が。これはフランス式の家庭菜園のことで、目に美しく食べられるハーブ類、さまざまな野菜や実のなる樹木が育てられています。庭に足を踏み入れて、自由に見学するのもOK。オーナーの俵志保さん曰く、「些細な暮らしもちょっと贅沢と思える場になれば」。縁側に腰掛けて庭を眺めながら、石見の美味しい地酒を味わうのも良さそうです。

浜田市の庭師、白須信男さんが手掛けた苔庭(写真:俵さん提供)

ポタジェガーデンでは、種苗店の店主でもある俵さんがハーブや野菜を育てている。ザクロや柿といった実のなる木もたくさん。(写真:俵さん提供)

宿のポタジェガーデンで採れた、新鮮な野菜たっぷりの朝食。朝食はオプション。(写真:俵さん提供)

浜田市の西田和紙工房による石州和紙の障子越しに、柔らかな朝日が入る寝室。宿泊は5名まで。

キッチンは自炊もOK。俵さんがデザインし、江津市にある石見焼の窯元「石州嶋田窯」とコラボしたオリジナルの食器が揃う。

津和野駅前で、55年以上レンタサイクル店を営む「かまい商店」。津和野川沿いをサイクリングするのもおすすめ。

INFORMATION

くらしのやどSHIKINOKASHA

住所:島根県鹿足郡津和野町後田 ロ590
TEL:050-3695-8645
ホームページ:https://shikinoka.jp/stay

燈 tomoru[温泉津町]

風情ある懐かしの街に
暮らすように泊まる

世界遺産・石見銀山の一角、温泉津(ゆのつ)町。大正時代からこの街に建つ古民家を再生し、2021年に誕生したのが「燈」です。宿のスタッフ、近江風夏さんは「この地に暮らすように泊まってほしい」という想いを持っているといいます。内装リノベーションは「有福家」も手掛けている「SUKIMONO」による施工で、テーブルや椅子といった家具も手作り。さらには階段を上ると屋根裏に秘密の小部屋が。ここで仕事したらいいアイデアが生まれそう……と思ったら、やっぱりワーケーションとしても人気だそう。洗濯して裏庭に干して……と、まさに暮らすように泊まれる一棟貸し宿。初めて泊まる人も、どこか懐かしさを覚えるようなホッとする空間です。

江津市にある建築デザインオフィス「SUKIMONO」による手作り家具。食器棚には温泉津の窯元「椿窯」の器が並ぶ。

また、歩いて5分の場所には、ノスタルジックな雰囲気漂う温泉津温泉が。湯巡りと共に、食事も温泉街の周りで楽しむのがおすすめ。移住者が営む飲食店が増え、そのクオリティたるや、あれもこれも食べたいから連泊しちゃおうかなレベル! 2023年オープンの「港の食堂KAN」は、名物・漁師めし定食が人気。広島県から移住してきた店長の松野莉央さん曰く、「温泉津は人が温かい。どこのお店に入っても、きっと面白い出会いがあるはず」。温泉津に宿を借りて街を巡れば、地元の人々との触れ合いも楽しめそう。

こもって仕事するのにもぴったりな屋根裏部屋。頭を低くして入る、こじんまりとしたスペースで、子どもの頃に憧れた隠し部屋のよう。

洗濯機があり、連泊にも便利。洗濯物が干せる裏庭は、焚き火やバーベキューもOK。

藍染のベッドスローも「SUKIMONO」の作品。宿泊は5名まで。

港の食堂KANで人気の漁師めし定食。季節によって変わる新鮮な海の幸が魅力(https://www.instagram.com/kan_yunotsu/

港の食堂KANの店長、松野莉央さん。彼女がつくる「温泉津プリン」は数量限定!

温泉津温泉街で飲食店などを営むみなさん。個性あふれる店主と話したくて、泊まっているうちに住みたくなってしまう街。

INFORMATION

燈tomoru

住所:島根県大田市温泉津町温泉津ロ119
TEL:050-1807-9277
ホームページ:https://tomoru.work

石見の職人のあたたかな手仕事に触れ、地元の人々との語らいを楽しみ、美しい自然の中で気の向くままにゆるりと過ごす。郷愁を感じる街の一棟貸し宿に泊まり、日々の慌ただしさから解放される旅はいかがでしょう。

Photo / Yuichiro Iwatani
Text / Megumi Tsukuba

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