EDITOR'S PICKS 編集部のおすすめ
【後編】同じ名前で違う味わい!
8店8色の源氏巻ひたすら食べ比べ極甘散歩。
「津和野銘菓・源氏巻の、8店舗8種類の魅力を伝えたい」「源氏巻はどれも同じ?…否!」そんな思いでスタートした食べ歩き極甘散歩。8店舗一気に食べ比べてこそ分かる絶妙な違いを、根っからの辛党ライターが必死でレポート。後編へ。
今回紹介する店舗様
宗家
店構えから、パッケージから、美味しいがあふれてる。
太皷谷稲成神社の、一の鳥居すぐ横にある【宗家】。「40年源氏巻を焼き、源氏巻と一緒に育った」と語る店主が店頭で焼くのは、今もなお、うす板で包まれる【生源氏巻】。密封のものより日持ちは少し短いけれど、昔ながらのざっくりした包み方になんともそそられる。店主が病気で入院した時に4ヶ月間よそのあんこを使った時「味が違う!」とお客さんに怒られたこともある、たっぷりと甘く、素朴で懐かしい味わいのあんこが自慢。40年という年月の中で、橋がかけかわったり、公園がコンクリートになったりと風景は変化したという。時代が変われど「どうか変わらないでほしい」と願いたくなるお店と味わいだ。
INFORMATION
宗家
住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ60-21
Tel.0856-72-0149
峰月堂
あずきのつぶ感が絶妙!家族で丁寧に守る味。
【峰月堂】が作るのは、祖父の代からのレシピを守りつつ、時代にあわせて甘さを調整するていねいな源氏巻。いろんなフレーバーをつくるお店もあるが「シンプルな王道のつぶあんとこしあんのみ、家族で少しずつ丁寧に」作っているという。特につぶあんの小豆の皮の舌ざわりが良く、「しっかりあずきを食べてる!」感じがするのも魅力。袋の外にはSLの切符付きで「津和野発-お客様行」の文字が。こうゆうちょっとしたさりげないおもてなしの工夫に心を掴まれる。
INFORMATION
峰月堂
住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ259
Tel.0856-72-0346
藤村山陰堂
しっとり生地に、ファン多数。
時間がたってもパサパサしない、しっとりした生地が人気の【藤村山陰堂】。その秘密の一つが焼き方。通常より温度の高い銅板で、一気に8本焼く(一般的には4本が多い)という職人技。生地が銅板に乗ってる時間が長いとぱさつきやすくなるため、高温でさっと焼くのがポイント。祖父が考案した焼き方だという。さらにたまごへもこだわりがあり、若いにわとりが生んだものを使うことと、Mサイズを使うこと。白身がしっかりしたたまごを使うことで、生地がしっとりするという。季節で温度も変わるし、機械のように均一にはできない。量産できないためお店でしか扱っておらず、朝つくったぶんをその日に売って、売り切れたら閉店。ここでしか出会えないレア度の高い源氏巻だ。
INFORMATION
藤村山陰堂
住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ289
Tel.0856-72-0059
山本風味堂
おいしい味と、愛される店を、1代で築く。
先代はおらず、現店主夫婦がスタートしたお店。すべてが手焼きのため、量産できず、卸をせずに店頭でだけ購入できる。手作りのため生地の厚さや色味が変わることもあるけれど、それがまた美味しそうで、手焼きの魅力になっている。運が良ければ焼き立てが食べられることも。焼き立てはパリッとしていて、少したつとしっとりと甘みがまわっていく。「いつまでできるか分からないから」と語るように、店主のみが源氏巻のレシピと作り方を知っていて、体調にあわせてお店を閉めてることも増えたという。明るい光が差し込む風情ある店内で、あたたかい夫婦と話しながら手作りの源氏巻を食べる、その時間の尊さを感じで、ちょっぴりおセンチな気持ちになった。
INFORMATION
山本風味堂
住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ479-1
Tel.0856-72-1012
番外編 手打ちうどん つるべ
そろそろしょっぱいものが食べたい!
「糖分はもう十二分!しょっぱいものが食べたい!」そう思った矢先に見つけたそそられる暖簾。【手打ちうどん つるべ】は地元の人にも観光客にも愛される人気店。出てきたうどんがなんともいい香り!と思ったら、さりげなく地元産の柚子の皮が入っている。甘いものでいっぱいのお腹に、やさしいお出汁がしみる。。糖分過多旅・これにてフィニッシュ。
INFORMATION
手打ちうどん つるべ
住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ384-1
Tel.0856-72-2098
カステラ生地とあんこというシンプルな組み合わせだからこそ、劇的な味の違いがあるわけではない。けれど比べてじっくり味わうと、同じものが一つもない。シンプルだからこそちょっとしたバランスで味わいも変わり、どの店もそれぞれのポリシーを持って、伝統の味を守っている。
手焼きのため量産せず「無くなり次第終了」の店や、「店主の体調により不定期で営業」の店も多いので、行く場合は事前に連絡がマスト。人から人へ伝えてきた技だからこそ、跡継ぎがいないお店の店主は「自分の代で終わりだ」と話してくれた。口に運ぶ源氏巻が、なおさらおいしく、愛しく感じられるのだ。
【前編】同じ名前で違う味わい!8店8色の源氏巻食べ比べ極甘散歩。
Photo / Taku Fukumori
Text / Nozomi Inoue