
「国引き神話」「国譲り神話」の舞台となった稲佐の浜(薗の長浜)

『出雲国風土記(いずものくにふどき)』の「国引き神話」では、出雲平野の北にそびえる山塊と西を縁取る砂浜は、巨大な神ヤツカミズオミヅヌが、海の彼方から引き寄せた「国(土地)」と使った「綱」とされています。
また、砂浜と山塊の境に位置する浜は、オオクニヌシが高天原の使者タケミカヅチと会見して、国を譲り渡すことを承諾した『古事記』の「国譲り神話」の舞台として知られています。西方の海に弓なりに開くこの海岸線は、滑らかな砂浜から岩肌がむき出しの荒磯へとダイナミックに変化し、まさに神業によると例えられるにふさわしい景観です。
これらの海岸線は、今ではそれぞれ「稲佐の浜」や「日御碕」の名で親しまれており、いずれも日本海に沈む夕日の絶景エリアとして人々に愛されています。
しかし、出雲の人々がいにしえからこの地で日の入りにちなんだお社である「天日隅宮(あめのひすみのみや)」と「日沉宮(ひしずみのみや)」を祀り、夕日に畏敬の念を抱いていたことはあまり知られていません。
オオクニヌシが祀られる出雲大社の御本殿
稲佐の浜から眺める夕日と弁天島

稲佐の浜(薗の長浜)は南北約 10km にわたる砂浜で、かつては西へ開いた出雲の海の玄関口として多くの船や人を迎えました。「国譲り神話」の舞台となったのは稲佐の浜の北端で、この弁天島がある辺りと言い伝えられています。ここでオオクニヌシは自身の霊が住むための宮を築くことを条件に国譲りを承諾しました。
この宮が浜から東へ 1km ほど離れた出雲大社であり、『日本書紀』では「天日隅宮」と記されています。その名称から、この地がかつて日が沈む聖地として認識されていたことがうかがえます。
今でも旧暦 10 月 10 日には日没を待って、出雲大社の神職が全国から参集される八百万(やおよろず)の神々をお迎えする「神迎神事」がこの稲佐の浜で執り行われています。太古から変わらない日の入りへの思いは、今日まで連綿と受け継がれています。
アマテラスが祀られる日御碕神社の日沉宮
日本一の高さを誇る出雲日御碕灯台と夕日

日御碕の名が示すとおり、古くから「日」に縁がある岬として広く知られていたこの地には、明治時代に出雲日御碕灯台が建設され、白亜の灯台が立つ今日の美しい風景が整いました。日御碕を訪れると、灯台越しに海に沈む夕日が、次々に打ち寄せる波頭や海に浮かぶ岩礁を赤く染める、絵画のような景色を観賞することができます。
また、日御碕の西側にはたくさんの経巻が固まってできたという伝承が残る経島(ふみしま)があり、毎年 8 月 7日には、日御碕神社の神職によって夕日を背景に「神幸(みゆき)神事」が執り行われます。
日御碕神社にはスサノオを祀る神の宮とアマテラスを祭神とする日沉宮があります。日の出の太陽に象徴されるアマテラスは、ここ出雲では日の入りの夕日に象徴され、江戸時代には、日沉宮は日が沈む聖地の宮と称されるようになります。
古来より出雲の地で神聖視されてきた夕日の美しい絶景

古来、政権の中心であった大和から見ると、太陽は北西の出雲に沈みます。このことから出雲は「日が沈む海の彼方の異界につながる地」として認識されたと考えられます。中央で編まれた『古事記』や『日本書紀』で、出雲が「黄泉国(よみのくに)」と「地上世界」をつなぐ地として描かれているのは、古代の人々が出雲を「日が沈む地」とイメージしていたことに端を発するのかもしれません。
今日も出雲では夕暮れ時の挨拶として「ばんじまして」という方言が使われています。他の地域ではあまり耳にしない「こんにちは」と「こんばんは」の間を結ぶ挨拶で、夕刻に格別な思いを抱く出雲の人々の心情が垣間見えます。穏やかな表情や荒々しい姿を見せる海岸線。それを舞台に圧倒的な存在感を示す夕日。両者が織りなす美しい夕景は神により創り出されたとこの地に生きた人々は感じてきたことでしょう。
出雲の海岸線に立って海に沈む美しい夕日に祈り、出雲神話にちなんだ神社や登場地を巡ると、日が沈む聖地出雲の祈りの歴史を体感することができます。

出雲神話と深く関りがありパワースポットとしても知られる「稲佐の浜」。夕暮れ時には、砂浜が描く美しい海岸線の景色に加え、見渡す限りの夕焼け空、海に溶け込む茜色の光が織りなす大パノラマを体感できます。

心清らかに、出雲大社の早朝参りからスタート!古代出雲の歴史に触れながら
観光を楽しんだ後は稲佐の浜へ。出雲大社に祀られるオオクニヌシノオオカミも
御本殿では稲佐の浜の方角を向き鎮座しています。絶景に心奪われるだけでなく、
遥か昔より神聖視されてきた夕日に祈りを捧げ、さらなるご利益を期待しましょう。


凛とした空気の中歩く松並木の参道や朝日が降り注ぐ社殿はとても美しく神秘的です。御祭神は、だいこくさまとして慕われる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)で、あらゆる縁を結ぶ縁結びの神様としても広く知られています。出雲大社の早朝参りで、素敵なご縁のご利益を授かりましょう。
● 住所/島根県出雲市大社町杵築東19
● 電話/0853-53-3100(8:30〜17:00) ● 駐車場/あり
● 参拝時間/【3月~10月】 6:00〜20:00
【11月~2月】 6:30〜20:00
● 詳細リンク/スポット情報
上宮
出雲大社から稲佐の浜へ向う道から少し入った場所にあります。 上宮(かみのみや)では、日本各地の神々の総称である「八百万の神」が自らが鎮座する土地の様々な縁結びについて大国主大神やその他の神々と話し合います。
出雲大社前駅の近くにある、古民家を改装した人気のパン屋さん。店内に漂うパンの香ばしさが食欲をかきたてます。
ブーランジェリー ミケ
● 住所/島根県出雲市大社町杵築南1342-7
● 電話/0853-31-4288
● 営業時間/9:00〜18:00(売り切れ次第終了)
● 定休日/火曜日(不定休あり)
● 駐車場/あり
● 詳細リンク/Facebookページ

出雲大社の東側に隣接する古代出雲歴史博物館は、参拝の前後に必ず行っておきたい場所のひとつ。かつて創建された出雲大社御本殿の模型や、遺跡から発掘された銅剣や銅鐸などの展示はもちろん圧巻の見ごたえ。館内を一通り見学したら3階の展望テラスへ。出雲大社や八雲山を一望でき、壮大なスケールで築きあげられた出雲の歴史を体感できます。
国宝の銅剣や銅鐸、銅矛419点を一堂に展示。古事記などの神話を大迫力の映像で見ることができるシアターもあります。
● 住所/島根県出雲市大社町杵築東99番地4
● 電話/0853-53-8600
● 営業時間/9:00~18:00(3~10月)、9:00~17:00(11~2月)
● 休館日/第3火曜日(変更の場合有り)● 料金/大人610円、大学生410円、小中高生200円 ● 駐車場/あり
● 詳細リンク/スポット情報

神域に湧き出る 清らかな水
出雲大社の東にある社家通り沿いにある、「島根の名水百選」にも選ばれている湧き水です。出雲大社の神事に関わる神聖な清水とされ、「神水」として遠方からこの水を汲みに来る人も多く見られます。
● 住所/島根県出雲市大社町杵築東194
● 電話/0853-53-2112(出雲観光協会)
● 駐車場/なし
石畳の美しい出雲大社前の神前通りは、出雲ならではのご縁を結ぶ数々お店が軒を連ね、お土産や縁結びグッズを選びに最適。多くの人が集まる出雲の観光スポットのひとつです。
神前通り沿いにある「縁結びブレンド」が人気の自家焙煎コーヒー専門店「Cafeまるこ」は、地元の女性にも人気のカフェ。香ばしい焙煎されたコーヒーの匂いでひと休みしたくなるお店です。地元素材をふんだんに使った「出雲ぜんざい氷(夏季限定)」は美味しいだけじゃなく、そのふわふわな可愛いフォルムにきっと癒されます。
Cafeまるこ
● 住所/島根県出雲市大社町杵築南780-9
● 電話/ 0853-53-0510
● 営業時間/火~金 10:00 – 17:00、
土・日09:00 – 17:00
● 定休日/月曜日
● 駐車場/神門通り交通広場をご利用ください。
● 詳細リンク/公式ホームページ
屏風岩
稲佐の浜から北へ約5分ほど歩いた先にある屏風岩。屏風に似ていることからこの名で呼ばれています。出雲国を造ったとされる大国主大神と高天原からの使者として派遣された武甕槌神(たけみかづちのかみ)は、この岩を背にして、国譲りの交渉をしたと伝えられています。
● 詳細リンク/スポット情報

出雲大社より西へ徒歩で約15分、国譲り、国引き神話の舞台となった稲佐の浜が見えてきます。稲佐の浜では、旧暦の10月10日の夜「神迎神事」が行われ、全国の八百万の神々をお迎えする場所として知られています。神話の舞台となり、神々が降り立つ地「稲佐の浜」から弁天島を望み、日本海へ沈む夕日はとても神秘的で、神々のパワーを感じることができます。
● 住所/ 島根県出雲市大社町杵築北稲佐
● 電話/0853-53-2112(出雲観光協会) ● 駐車場/あり
● 詳細リンク/スポット情報
一際目立つ大きな岩、弁天島。昔は海に浮かぶ島でしたが、今は島の前まで歩いていけるようになり、身近な存在に。「豊玉毘古命(とよたまひこのみこと)」が祀られています。

奇岩や絶壁が続くダイナミックな景観に思わず息をのむ日御碕の海岸線。白亜の灯台と海・空が織りなす爽やかなコントラストが、日沈と共に情緒溢れる景色へと移りかわる様子に、神秘的な時の流れを感じることができます。

出雲神話にふれながら日御碕の海岸線を楽しむ絶景ドライブ!
神秘的な夕日の存在は思わず手を合わせたくなる、まるで神様の様な存在。
神話の世界に思いを巡らせた1日の終末、夕日に祈ることで、
「神々の国しまね」の所以を感じることができるでしょう。


「国引き神話」で国(土地)を日本海から綱で引き寄せ島根半島を造られた神「八束水臣津野命(やつかみずおみづぬのみこと)」を主祭神として祀っている神社。北極星や北斗七星に祈る信仰「妙見信仰」として知られ、戦国時代から武家の崇敬を集めていました。「武道・スポーツ上達の守り神」「勝負に勝つ神」として広く信仰を集め、北斗七星をデザインした勝守を求め多くの人が参拝に訪れています。ハートのキーホルダーが一緒になった「恋みくじ」は「恋に勝つ!」として女性に人気。境内の奥には「夫婦石」が祀られ、子授け、安産の石として知られています。
● 住所/島根県出雲市西園町上長浜4258
● 電話/0853-28-0383 ● 駐車場/あり
● 詳細リンク/スポット情報
キーホルダーつきの「恋みくじ」やかわいいキャラクターのお守りもありますよ。
緑に囲まれた静かで清々しい神社。国引き神話にちなんだ「ジャンボ綱引き大会」も開催されています。

夕日にちなんだお社である「日沉宮」が祀られている日御碕神社。
「日の本の昼を守る」伊勢神宮に対して、日御碕神社は「日の本の夜を守る」とされ、古来より出雲は日が沈む聖地として認識されてきました。
朱色の美しい楼門をくぐると正面に天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀る「日沉宮」、右手の階段上に素盞嗚尊(すさのおのみこと)を祀る「神の宮」を見ることができます。桃山時代の面影を残す神社建築は荘厳な雰囲気を漂わせています。
木製のだるまの中におみくじが入っている「だるまみくじ」(300円)
● 住所/島根県出雲市大社町日御碕455
● 電話/0853-54-5261 ● 駐車場/あり
● 詳細リンク/スポット情報

島根半島最西端にそびえる美しい石造りの灯台です。100歳を超えた今もなお現役で海の安全を守っています。地中海を思わせる碧い空と青い海、美しい白亜の灯台。その高さに思わず息を呑みます。灯台内の163段の階段を登った先の展望台からは日本海を水平線まで見渡せ、360度広がる絶景を堪能できます。
【出雲日御碕灯台】
● 住所/島根県出雲市大社町日御碕1478
● 電話/0853-54-5341
● 営業時間/9:00〜16:30 ● 駐車場/あり
● 料金/一般公開:大人(中学生以上)200円、
小人 無料、灯台資料展示室 無料
● 詳細リンク/スポット情報
伯陵園(はくりょうえん)
海岸には「伯陵園」と呼ばれる松林と遊歩道があり、波の音を聴きながら自然が作り出す造形美を満喫することができます。

天照大神が現在の日御碕神社に祀られる前に鎮座していたという経島。形状が仏教の経巻を積み重ねたように見えるためその名が付いたと伝えられています。また、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定され、毎年11~7月中旬には数千羽のウミネコを間近で見ることもできます。
● 住所/島根県出雲市大社町日御碕1478
● 駐車場/あり
● 詳細リンク/スポット情報
展望所
鳥見台(とりみだい)
日御碕遊歩道上にある展望所鳥見台(とりみだい)から、経島やダイナミックに飛来するウミネコの群れを見る事ができます。
宇龍、熊野神社(うりゅう・くまのじんじゃ)
「宇龍」は、日御碕の東に位置する港町。漁が盛んな木造家屋の密集した漁村集落。その宇龍港内の権現島に鎮座する日御碕神社境外摂社の熊野神社は、陸地から離れているため通常の参拝はできません。神事や例祭が行われる日のみ、船が権現島まで並び一般の方も参拝できます。
猪目洞窟(いのめどうくつ)
弥生時代から古墳時代の人骨が20体以上見つかり、「出雲国風土記」の「黄泉の坂、黄泉の穴」と推定される場所の一つです。古代には、この洞窟は「あの世」につながると信じられていたようです。「猪目洞窟遺物包含層」として国の史跡にも指定されています。