アマテラスとスサノオ


<第一章>うけい

神やらいに追い払われたスサノオ神は、
「それならば、アマテラス大神に
 おいとまを申し上げてから、
 根の堅州国に参ろう。」
と、高天原に昇ることにしました。

スサノオ神が、天に昇ろうとする時、
山川はとどろき、大地は震えました。

これを聞いたアマテラス大神は、とても驚いて
「わが弟が昇り来る理由は、きっと善い心ではあるまい。
 わたしの国を奪おうと思ってのことだろう。」と、
すぐに髪をみずらに結い直し、
左右のみずらや左右の手に
勾玉のついた長い玉飾りを巻き付けて、
背中や胸にたくさん矢の入った筒を背負い、
弓が鳴るように振り立てて、
堅い地面を踏みならして、
雄々しく叫んだ。

荒々しく足を踏みならして、
スサノオ神を待ち受けていたアマテラス大神は
「何のために高天原に上ってきたのだ」と聞くと、
スサノオ神は
「私にやましい心はありません。
母の国に、おいとますることになったので、
昇ってきただけです。他心はありません。」
と申し上げました。

アマテラス大神は
「そうならば、おまえの心が清く明らかだと、
どのようにして知ればよいだろう。」
とおっしゃいました。

スサノオ神は
「お互いに、うけいをして、子ども生みましょう。」
と答えました。
うけいとは言った言葉の可否で吉凶を占う、占いのことです。

こうして、二神はそれぞれ、
天の安の河をはさんでうけいを行うことにしました。

まずアマテラス大神は、
スサノオ神の腰に下げている十拳剣を貰い受けると、
三段に折って、天の真名井で振りすすぐと、
噛みに噛んで、狭霧を吹き出し、神を生みました。

その狭霧に誕生した神は、
ダギリヒメ、イチキシマヒメ、タキツヒメの三女神。

今度は、スサノオ神が
アマテラス大神の左右のみづら・頭・両手首に巻いていた
玉飾りを貰い受けて、天の真名井で振りすすぎ、
噛みに噛んで、狭霧を吹き出し、神を生みました。

狭霧に誕生した神は、
アメノオシホミミ、アメノホヒ、アマツヒコネ、
イクツヒコネ、クマノクスビの五男神。

そこでアマテラス大神は、スサノオ神に
「この後から生まれた五柱の男子は、
私の持ち物から生まれたので、我が子である。
先に生まれた三柱の女子は、
おまえの持ち物から生まれたので、おまえの子である。」
と、おっしゃいました。 


<第二章>天の石屋戸へ続く

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