オオクニヌシ


<第四章>国作り

オオクニヌシ神は、国作りのために
あちこちに出かけていました。

ある時、出雲の御大(みほ)の岬にいらっしゃった時、
波のむこうから、天のガガイモの船に乗って、
雁の羽をまとって近づいて来る神がいました。

名を問うけれども答えません。
オオクニヌシ神に従ってやって来た諸神(もろもろのかみ)も
皆「知りません。」と言うばかり。

すると、ヒキガエルが
「クエヒコなら、きっと知っているでしょう。」
とオオクニヌシ神に申し上げました。

そこでクエヒコを呼び寄せて聞いてみると
「この神は、カミムスヒ神の御子(みこ)で
 スクナビコナ神ですぞ。」
と答えました。

そこで、カミムスヒ神に申し上げると、
「確かに、わたしの子です。
 手の間からくぐり抜けて行ってしまった子です。
 この子は、葦原中国(あしはらなかつくに)で
 勢いのあるあなたと兄弟となって、
 国を作り固めるだろう。」
と言いました。

こうしてオオアナムヂ神とスクナビコナ神の二柱の神は、
一緒に、国を作り固めることにしました。

そうして、しばらくすると、スクナビコナ神は
常世の国に行ってしまいました。

ちなみに、
このスクナビコナ神の正体を知っていたクエヒコは、
今にいう案山子(かかし)のことです。
この神は、歩くことはないけれども
天下のことはなんでも知っている神なのです。


一方、オオクニヌシ神は、嘆いて言いました。
「これから私一人で国を作り固めていけるだろうか。
 どこかに、わたしと一緒に、よい国をつくってくれる
 神はいないだろうか。」

すると海面が光り輝いてやって来る神がいます。
その神が言いました。
「わたしをよく祭るなら、わたしが、あなたと一緒に、
 よい国をつくり、完成させましょう。
 そうしなければ、国を完成させるのは難しいでしょう。」

それを聞いたオオクニヌシ神は言いました。
「どのようにして、あなたを祭ればよいでしょう。」
その神は答えて言いました。
「大和を青々とした垣根のように囲んでいる
 東の山の上に、わたしを祭りなさい。」
この神は御諸山(みもろやま)の上に
鎮座している神だったのでした。


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関連情報・注釈