天孫降臨


<第ニ章>ニニギの結婚

高千穂(たかちほ)の久士布流多気(くじふるたけ)に
降り立ったニニギ命は、笠沙の岬で、
美しい乙女に出会いました。

ニニギ命が「誰の娘だ。」とたずねると、
その乙女は、
「オオヤマツミ神の娘です。
 名はカムアタツヒメ。
 またの名をコノハナサクヤビメと申します。」

ニニギ命は
「わたしは、あなたと結婚したい。
 どうだろか?」
とたずねました。

コノハナサクヤビメは、
「わたしは申し上げられません。
 父オオヤマツミ神よりお答えします。」
といいました。

ニニギ命が、父のオオヤマツミ神のところへ
使いを出して、結婚を申し出ると、
父のオオヤマツミ神は大喜びして、
コノハナサクヤビメを
姉のイワナガヒメとともに
結婚するように申し出で、
たくさんの贈り物とともに
ニニギ命の元に送り届けました。

ところが、姉のイワナガヒメを見ると
たいへん醜かったので、送り返すことにし、
コノハナサクヤビメだけを
自分の元に留めて、結婚しました。

それを知った父のオオヤマツミ神は悲しみ、
わたしの二人の娘を使わしたのには理由があります。
姉のイワナガヒメは石のように堅く長寿を意味しており、
妹のコノハナサクヤビメは、花のように栄えることを
意味します。
コノハナサクヤビメだけをお留めになったので、
天つ神の御子であられるニニギ命は、
木に咲く桜の花のように短いご寿命になるでしょう。」
と申し上げました。
このために、今に至るまで、
代々の天皇には、ご寿命があるのです。

さて、一晩を共にしたコノハナサクヤビメは、
ニニギ命に
「私は妊娠したようです。
 この子は、天つ神の御子ですので、
 わたし一人で生むべきではないと思いましたので、
 申し上げます。」
といいました。ニニギ命は、
「たった一晩だけなのだから、
 わたしの子ではあるまい。
 国つ神の子だろう。」
といいました。

それを聞いたコノハナサクヤビメは、
「わたしが妊娠している子が
 国つ神の子なら無事に生まれないでしょう。
 天つ神の御子ならば、無事に生まれるはずです。」
と言って、広い八尋殿(やひろどの)を作り、
その御殿の中に入って、戸を土で塗り塞ぎ、
陣痛がはじまると、御殿に火をつけさせました。
その火のなかでコノハナサクヤビメは
無事に御子を生みました。

火が盛んに燃えている時に生まれた子はホデリ命。
次に生まれた子はホスセリ命。
次に生まれた子はホオリ命といいました。


<第一章>ニニギの降臨へ戻る

関連情報・注釈