祖母を亡くした真紀が遺品の婚姻届に導かれ、失った家族の絆を取り戻す旅
東京都内で勤務する飯塚真紀は、同じく東京で働く中村和典との結婚を控えていた。そんな時、真紀の祖母が亡くなり、真紀は遺品から白無垢と婚姻届を見つける。婚姻届の夫の欄には「秋国宗一」と書かれていた。
祖母の納骨のため、生まれ故郷の出雲へ降り立った真紀。祖母の死を伝えるため婚姻届に書かれた住所を訪ねたが、「秋国宗一」は既に転居し、アパートの壁には彼が施したという、あじさいのレリーフだけが残されていた…。
東京へ戻り、祖母が残した婚姻届を改めて眺めた真紀は、送り主の住所が転々としていることに気づく。秋国は、引っ越す度に新たな住所から婚姻届を送り続けていたようだった。そして真紀は再び出雲へ向かい、シジミ漁師の大森充の協力のもと「秋国宗一」探しを続ける。
そんな中、秋国が過去に勤めていたワイナリーの社長から、「(秋国は)荒れていた。」と聞く。
社長の言葉。壁のアジサイ。真紀の頭の中で、過去の記憶が小さく開き始めていた…。
秋国の消息がつかめず弱音を吐いてしまう真紀。それを聞いた充は、ご縁の街・出雲を象徴する、出雲大社に真紀を連れて行く。
境内を歩いていると、神楽の囃子が聞こえてきた。舞台では神楽が行われている。充は避けるようにその場を立ち去っ た。
充は祖父から神楽の技術だけでなく、神聖性や古くからの伝統を教え込まれていた。しかし現代風にアレンジを加えたい神楽メンバーと対立し、神楽に迷いを感じ、練習をやめてしまっていたのだった。
秋国宗一探しが進まない真紀は、もうひとつの悩みを抱えていた。和典は真紀に対してなんでも許してくれる優しい婚約者だったが、お互いに本音をぶつけ合ったことが一度もなかった。そんな和典と結婚し生活を送れるのか、真紀は自信がなかった。
真紀は秋国が勤めていたという造り酒屋へと向かった。そこで秋国宗一の写真をみた真紀。その瞬間、子供の頃の断片的な記憶と、これまでに秋国を通じて出会った様々な人の言葉がひとつにつながった。
真紀は、秋国宗一を見つけることができるのか…。
真紀は和典と結ばれ、出雲の花嫁になることができるのか…。
充は、神楽と向き合っていくことができるのか…。
その日は奇しくも夜空を彩る湖上花火大会が行われる夜。
出雲の地で結ばれた人の縁、家族の絆、そして脈々と伝統を受け継ぐ命のつながりを感じ、三人それぞれが静かな決意を心に灯し、確かな一歩を踏み出すのだった。
佐々木 希(飯塚真紀)
1988年2月8日生まれ。秋田県出身。
2006年「プリンセスPINKYグランプリ」を受賞し芸能界入り。モデルを中心とした活動の幅を広げ、2009年には人気携帯小説を映画化した『天使の恋』で映画初主演。2016年に映画『星ガ丘ワンダーランド』、『カノン』の公開が控えている。雑誌・CM・テレビドラマなど幅広く活躍中。
井坂 俊哉(しじみ漁師・大森 充)
1979年5月10日生まれ。静岡県出身。アナザヘヴンeclipseで俳優デビュー。映画「パッチギ!LOVE&PIECE」や島根を舞台にした映画「砂時計」に出演。テレビドラマ、舞台でも活躍中。
平岡 祐太(真紀の婚約者・中村 和典)
1984年9月1日生まれ。山口県出身。2002年度第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト・グランプリ受賞後、2003年ドラマ「ライオン先生」にてデビュー。2005年度第28回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞(映画「SWING GIRLS」にて)。2015年は4年ぶりの舞台 現代能楽集Ⅷ「道玄坂綺譚」に主演する等、数々の話題作に出演。
《撮影監督》
クリストファー・ドイル(Christopher Doyle)
1952年オーストラリアのシドニー生まれ。
杜可風という中国名を持っている。
幼年期に日本文学を多読し、18歳から商船員、石油採掘などの仕事に就いた後、中国にて映画撮影の仕事を始める。
ウォン・カーウァイ監督作品の撮影で世界的撮影監督となった。また作品の内容によっては非常にスタイリッシュな画面構成や色彩構成を行うこともある。中華圏のみならず、環太平洋圏全域、近年はハリウッド映画の大作をも手がける。
《監督》
堀内 博志(ほりうち ひろし)
1974年9月3日生まれ。
島根県出雲(旧・平田)市出身。
2010年、初の長編映画となる『反抗』を製作・監督。ぴあフィルムフェスティバル2010入賞。沖縄映画祭入賞。TAMA NEW WAVE 「ある視点」選出フランス・パリでの上映を果たす。2011年、多くのミュージシャンから熱い支持を受けながらも、40才の若さで亡くなった伝説の天才フォークシンガー加地等の晩年を追った、ドキュメンタリー映画「加地等がいたー僕の歌を聴いとくれー」を製作・監督、都市部で上映され話題となる。
同年、長編映画第二作『私の悲しみ』を製作・監督。TAMANEW WAVE 2011にてベスト女優賞、グランプリの2冠の偉業を達成。
他「耳をかく女」「山崎ファミリア」「絶対領域」など。
脚本・監督・編集を手がけた映画 『縁 The Bride of Izumo』が、全国公開映画デビュー作品となる。
出雲大社から10キロ西方にある神社。映画の中ではこの神社が真紀の子供の頃の実家近くとして描かれた。天照大神と素戔嗚尊がまつられており、昼を司る「伊勢神宮」に対して日没を治める社として位置づけられている。社殿は国の重要文化財。
出雲神話の国引きと国譲り神話の舞台でもあり、また神在月である旧暦10月には神々を迎える浜でもある。オープニングの男が舞うシーンで使われた。
縁結びの神・大国主命をまつる神社。出雲の国譲り神話に登場する出雲大社の高層神殿は、高さ48メートルあったといわれる。現在の本殿も24メートルを誇り、神社建築では国内最大。神楽殿には日本最大級の大しめ縄がかかっており、44トンの重さがある。
古代出雲の国宝級遺跡や資料が展示されており、出雲の考古学や出雲大社の歴史を知る上で必見の施設。見どころは荒神谷遺跡から発掘された銅剣や、出雲大社の宇豆柱など。出雲観光案内所の曽田と真紀が出会うのは、出雲大社の高層神殿の模型前だった。
県内ぶどうのワイン工場。敷地面積は畑を除く施設だけで4万6千㎡という広大なもので、多目的に利用されている。約10種類のワイン、ジュースの試飲が出来るほか、お土産物も揃い、観光の立ち寄りスポットとして人気がある。秋国宗一の元勤め先として登場した。
郷土の土や釉を使い、日常の暮らしの中に映える器を作り続ける窯元。原材料の粘土作りから、成形・焼き・販売までを一か所の工房で全て行う。出西ブルーと呼ばれるコバルトカラーの器が人気。秋国宗一の元勤め先として真紀が訪れるシーンに登場。
国内では唯一のキルトを扱った美術館。出雲屋敷を改装し展示室にした趣のある佇まい。真紀が祖母の澄子の本心を知り、家族の温かさを三代から教えられるシーンにぴったりの、和風建築独特のしっとりとした情感あるスポット。
銘酒「ヤマサン正宗」の蔵元である酒持田本店は、平田町の“木綿街道“沿いに蔵を構える。明治期の創業でその歴史は約140年。映画の中では秋国宗一が過去に勤務していた場所として真紀が訪れ、杜氏の詰所にあった写真で真紀の過去の記憶が蘇る、物語の展開に大事な場面として描かれるスポット。
旧日銀松江支店だった建物を利用した複合施設。西洋クラシカルな外観が目印。「カラコロ」とは松江大橋を渡る下駄の音を表現しており、小泉八雲の随筆の一文から名付けられた。現在はカフェやギャラリーがあり、真紀と和典のデートシーンに使われた。
日本で7番目に大きく、海水と淡水が混じり合う汽水湖。宍道湖からの恵みは出雲の人々の生活を古代から支えてきた。特に「宍道湖七珍」のひとつ、「しじみ」の漁獲高は日本一を誇る。その宍道湖に浮かぶ小島が嫁が島で、その名の通り嫁にまつわる伝説がある。
毎年8月に開催される、西日本最大級の花火大会。2日間で9千発が打ち上げられ、宍道湖岸どこからも見ることが出来る夏のビッグイベント。湖上に設置した台車から打ち上げ、水面に映る光で華やかに、形状も扇形や放射線状に広がるものなど種類豊富。
雲州平田駅から徒歩2〜3分の駅チカの居酒屋。堀内博志監督の実家。創業17年。地場の食材を使ったあらゆるメニューを取り揃える。老若男女が集まる居酒屋。
松江市の住宅街にあり、元テニスコートの中に建てられたカフェではランチやカフェが楽しめる。エスプレッソやラテが人気。物語の中では祖母の澄子が生前キルトを展示していたカフェとして登場する。