2018年03月05日 公開
アメリカの日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」が発表する日本庭園ランキングで、島根県の「足立美術館」が毎年日本一に選ばれていることは有名ですが、実は島根県には足立美術館以外にもこのランキングに選ばれ、高く評価されている美しい庭園が沢山あることは意外と知られていません。
日本の庭を規模や知名度ではなく、庭園の質、建物との調和、利用者への対応等、純粋にその美と質によって評価する「2017年日本庭園ランキング」で、全国の日本庭園900カ所以上の中からトップ50に選ばれた、島根の名園7選をご紹介します。
庭園もまた一幅の絵画である
2003年の日本庭園ランキング以来、毎年連続して日本一に選ばれ、今や世界的にその名が知られた足立美術館。これだけの評価を受ける秘密は、毎朝開館前に職員総出で約1時間かけて掃除をするなど、5万坪に及ぶ日本庭園の細部まで行き届いた維持管理や、美術館の徹底した「おもてなし」の姿勢が高く評価されているからです。
足立美術館のこうした姿勢は、日本庭園を通して四季の自然美を感じてもらい、その感動をもって日本画の魅力を理解してもらおうと考えた、創設者・足立全康の熱い想いに端を発しています。「庭園もまた一幅の絵画である」という信念から生まれた美しい庭園や、「生の額絵」や「生の掛軸」などの楽しい仕掛けが来館者を魅了します。
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≫ 「庭園日本一」足立美術館の魅力とは
「神の湯」玉造温泉の数奇屋風造り純和風旅館
佳翠苑皆美は美肌の湯・神の湯として有名な玉造温泉にあり、棟方志功、松本清張など多くの著名人にも愛された歴史ある純和風の旅館です。
数奇屋風造りの建物に調和した美しい庭園があり、池を囲むように春は梅や桜、初夏は菖蒲、夏は緑の木々、秋は紅葉、冬は千両・白椿が配され、滝からの水の流れと共に四季の移り変わりを楽しむことができます。
「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」では「庭の質の高さ」、「建物との調和」、「利用者への対応」が高く評価されています。
島崎藤村など文人墨客に愛された老舗旅館の名庭
皆美館は開業以来約130年、「客の心になりて亭主せよ」という大名茶人・松平不昧(ふまい)公の教えを家訓に「料理旅館」一筋に歩んできた老舗旅館。同じくランキングに選ばれた玉造温泉の「佳翠苑皆美」は、元々この皆美館を本館とする別館が始まりです。
湖畔に佇む地の利を活かした、宍道湖を借景とする枯山水庭園が特徴です。明治・大正・昭和にかけて松江を訪れた、島崎藤村や芥川龍之介、志賀直哉など、多くの文化人がこの庭園と宍道湖の夕景に魅せられました。
文人が愛した絶景を楽しみながら、庭園茶寮みな美で「皆美家伝・鯛めし」に舌鼓を打つ、そんな贅沢なひと時を過ごすことができます。
120坪の大露天風呂と広大な庭園
「湯之助」とは、江戸時代に松江藩より玉造温泉を預かり、一切を取り仕切るために与えられ、大切に受け継いできた役職の名前です。
1万坪の広大な回遊式庭園の中には、120坪の混浴大露天風呂をはじめ、離れの客室や山荘特別室などが点在しており、散策に疲れたら、池のほとりの休憩所でゆっくり寛ぐこともできます。
洞窟をくぐり抜けると現れる御座所庭園は、まるで秘密の庭園。ここは昭和天皇が宿泊された歴史と格式のある、御宿泊棟専用の特別な庭園です。(※現在宿泊には使用されていませんが、御座所庭園は自由に観賞できます。)
松江藩の本陣宿を移築復元した枯山水庭園
松江藩の本陣宿を勤めた本木佐(ほんきさ)家からそのまま移して再現した庭園は、玄丹流(出雲流)独特な枯淡の美が鑑賞できます。大ぶりの飛び石、短冊石、そして臼型の人工飛石を高く打ち、地表はお留砂という奥出雲地方でとれる粗い砂を敷き詰めた枯山水の平庭です。飛び石の交差点には、ダイナミックに大きな石を配することで、互い違いに歩ける合理性とともに、力強くリズミカルな印象を与えています。
植木には松、サツキ、モクセイなどを剪定し、正面には陰陽石を据え、老松を添えるなど美観効果を高め、大らかな趣の中にも侘びた風情を持っています。傍らにある茶室との調和も和風美のひとつです。
牡丹と高麗人参の島の本格日本庭園
中海に浮かぶ牡丹と高麗人参で有名な美しく小さな島「大根島」にある、山陰最大級の池泉回遊式日本庭園。約1万坪の庭園を散策すれば、春夏秋冬の折々に牡丹をはじめとした様々な草花が咲き誇り、四季を通じて和の美を堪能することができます。
春には色鮮やかな牡丹の花が庭園の池を埋め尽くす「三万輪の池泉牡丹」、秋には紅葉ライトアップ、冬は寒牡丹やイルミネーションなど、季節ごとに庭園の魅力を最大限に活かしたイベントも開催されています。
一年中ボタンを鑑賞できる「牡丹の館」や、庭園を眺めながら郷土料理を味わえるお食事処に喫茶コーナー、牡丹や人参を用いたお土産コーナーなども充実しています。
臨済宗の名刹にある枯山水庭園
島根半島北山山麓にある康国寺は、南北朝時代に創建された臨済宗の名刹。
書院北側に設けられた枯山水庭園は、江戸時代に松江藩主お抱えの庭師・沢玄丹によって築かれたもので、茶庭の影響を強く受け、飛石を庭園の主景とした新しい様式を確立しています。
白砂の平庭には書院から三筋の飛石が連なり、左手の貯水池(錦鏡池)と背景の旅伏山(たぶしさん)へと続く森林を借景とすることで雄大な広がりを感じさせます。随所に細やかな意匠が施された、禅寺らしい簡素な中にも品のある庭園です。