令和改元 万葉の風薫る石見

新元号「令和」の出典の『万葉集』に注目が集まっています。実は万葉集の代表的な歌人「柿本人麻呂」は島根県ととてもゆかりが深く、全国400社はあるといわれる柿本神社の中の総社といわれる高津柿本神社があります。その上、県西部(石見地方)には人麻呂の歌や伝説が数多く残っています。歌聖とたたえられた柿本人麻呂の数ある歌の中でも、特にこの石見を舞台にした「恋の歌」が有名です。人麻呂にまつわるロマンチックな恋のパワースポットを訪れ、人麻呂の恋の歌の世界をすばらしい景観をともに味わってみてはいかがでしょうか。

万葉集と柿本人麻呂

万葉集と柿本人麻呂

万葉集とは、7世紀から8世紀後半頃にかけて約4500首もの歌が編まれた、現存する最古の和歌集です。天皇、貴族から下級官吏、防人(さきもり)など様々な身分の人びとが詠んだ歌を集めたものです。その中でも、柿本人麻呂が最愛の妻のすばらしさを歌った「石見相聞歌(いわみそうもんか)」は恋の歌の中でも最高傑作とされています。
1300年前に人麻呂が石見で詠んだとされる歌を同じ舞台に立って味わう時、きっと時代を越えた愛のすばらしさが心に湧き上がってくると思います。

人麻呂と石見

人麻呂と石見

万葉を代表する歌人・柿本人麻呂の生涯は深い謎に包まれていますが、石見へ役人として赴任し、妻を迎えたのではないかと言われています。この地で育んだ妻への愛情を、情感豊かに詠み上げた歌に託し、そしてこの地でその生涯を閉じたとも言われています。
 そんな人麻呂のことを、石見の人びとは親しみを持って「人麻呂さん」と呼んでいます。人麻呂が歌に込めた切ない思いに触れながらその足跡をたどる時、きっと新たな「令和」の旅の発見ができるはずです!

挿絵

万葉集ゆかりの地めぐりモデルコース

~万葉集ゆかりの地マップ~

石見地方の人麻呂の万葉集ゆかりの地をめぐるモデルコースは下のタイトルをクリックしてください。

モデルコースタイトル

浜田駅

浜田駅

①石見国府跡碑
伊甘(いかん)神社

伊甘神社の境内地に、「国府(石見国の役所)跡碑」があります。この神社は柿本族と同族とされる伊甘族を祀(まつ)ったとされています。きっとこの役所で人麻呂さんも仕事をしたのでしょう。

①石見国府跡碑(伊甘神社)

①石見国府跡碑(伊甘神社)

下府廃寺(しもこうはいじ)の塔の跡

現在は、その跡を残すだけとなっていますが、廃寺跡の規模から、金堂と五重塔を持った石見の中核的な寺院があったと考えられています。周りは奥が広く、広々として大きな寺や八幡官が今もあり、道を歩くと人麻呂さんになった気がします。

②下府廃寺塔跡

②下府廃寺塔跡

石見国分寺跡(いわみこくぶんじあと)金蔵(こんぞう)

国府の近くには国分寺や国分尼寺が建立してあることから、石見国府が浜田にあったことを示す有力な要素となっています。

③石見国分寺跡(金蔵寺)

③石見国分寺跡(金蔵寺)

石見畳ヶ浦(いわみたたみがうら)唐鐘(とうがね)地区

石見相聞歌(いわみそうもんか)に詠まれている地名として、韓の崎(からのさき)・海石(いくり:海中の岩礁)などがありますが、それは唐鐘・石見畳ヶ浦の景観と重なります。約2千万年前の砂岩層が、波の浸食により平たく削られた姿が続いており、絶景スポットとなっています。ぜひ訪れたい名勝地です。

④石見畳ヶ浦・唐鐘地区

④石見畳ヶ浦・唐鐘地区

⑤亀山
(秋葉神社、浜田城跡)

この城山は古くは「鴨山(かもやま)」と呼ばれていましたが、亀の縁起にちなんで「亀山」と改名されました。臨死歌である「鴨山の岩根し杴ける われをかも 知らにと妹が まちつつあるらむ(巻二 223)」の歌から、人麻呂終焉(しゅうえん)の地が浜田であったとも考えられています。江戸時代には、浜田藩の藩庁として、山頂に三層の天守が建てられていました。

⑤亀山(秋葉神社、浜田城跡)

⑤亀山(秋葉神社、浜田城跡)

浜田駅

挿絵

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益田駅

益田駅

鴨島(かもしま展望地

柿本人麿を祀(まつ)った鴨島はかつて益田沖にあり、万寿3年(1026年)の地震による大津波で没したという伝説が残っています。その海域を望む絶好の場所です。

①鴨島展望地

①鴨島展望地

戸田柿本(とだかきのもと)神社

宮司綾部家(あやべけ)の「家系図」によれば綾部家の娘と柿本氏の男性との間に生まれたのが人麿さんだといわれ、この小野の里で健やかに豊かに育ったという伝承が残っています。柿本人麿を中心とした人麿七体像(市指定文化財)や筆柿(ふでかき)があります。

ご朱印をご希望の方は下記までご連絡下さい。
0856-28-0307

②戸田柿本神社

②戸田柿本神社

③柿本人麿の生誕地・遺髪塚(いはつづか)

綾部家の一角には、人麿の遺髪塚があります。盆地の中の美しい田園風景には人麿さんを偲ぶ魅力がたくさんあります。

③生誕地・遺髪塚

③生誕地・遺髪塚

④県立万葉公園

高津柿本神社に隣接した公園です。万葉集に出て来る植物が150種類あります。掲示してある万葉の歌をよみながら春夏秋冬万葉の世界を楽しめます。万葉集の歌碑も30基以上あり、それぞれ詠いながら巡ることで万葉の世界にひたれます。園内にあるやすらぎの家では、お食事をとることもできます。

④県立万葉公園

④県立万葉公園

高津柿本(たかつかきのもと神社)

日本海の鴨島にあった人麿さんを祀る神社は、万寿三年(1026)の大津波で海中に陥没したと言われています。その時に流れついた人麿像を納めて再建されたという全国の柿本神社の本社とされている神社です。

ご朱印受付時間:10:00~15:00

⑤高津柿本神社

⑤高津柿本神社

益田駅

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大田市駅

大田市駅

浮布池(うきぬののいけ)

人麻呂歌集「君がため 浮布(うきぬ)の池の 菱摘(ひしつ)むと わが染(そ)めし袖(そで) 濡(ぬ)れにけるかも(巻七1429)」の一途(いちず)な恋の雰囲気の味わえるところです。絶景を眺める展望台には万葉集歌碑もあります。

①浮布池

①浮布池

②西の原

ここに立つと人麻呂歌集「大穴道(おほなむち) 少御神(すくなみかみ)の 作らしし 妹背(いもせ)の山を 見らくしよしも(巻七1247)」で詠まれた大国主神(おおくにぬし)と少彦名(すくなひこな)神が力を合わせて三瓶山も含めた国造りもなさった奇(く)しき御業(みわざ)を感じさせます。

②西の原

②西の原

静之窟(しずのいわや)(大田市静間町)

海に迫(せま)る大きく口を開けた洞窟は、万葉の歌「大汝(おおなむち) 少彦名(すくなひこな)の いましけむ 志都(しず)の岩屋(いわや)は 幾代経(いくよへ)ぬらむ(巻三355)」の世界そのものを感じさせます。(崩落の危険のため洞内には入れませんが、日本海を前にした霊妙な雰囲気を味わうことができます。)

③静之窟

③静之窟

韓神新羅神社(からかみしらぎじんじゃ)(大田市五十猛(いそたけ)町)

日本書紀によると、「素戔嗚尊(すさのおのみこと)は御子神五十猛神(みこがみいそたけるのかみ)とともに埴土舟(はにつちのふね)に乗って日本にいらっしゃった」と言われます。山陰唯一の新羅神社として、その風光明媚さとともに有名な神社です。前方の御碕には、柿本神社があったといわれます。

④韓神新羅神社

④韓神新羅神社

韓島(からしま)(大田市仁摩(にま)宅野(たくの))

人麻呂の歌の「韓の崎」の候補地です。「玉藻なす 靡(なび)き寝(ね)し児を・・・(巻二135)」の歌句は、妻と過ごしたこの島でのすばらしい日々を想わせます。

⑤韓島

⑤韓島

大田市駅

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江津駅

江津駅

①大崎鼻(韓の崎・澤瀉久孝(おもだかひさたか)氏歌碑

人麻呂さんのすばらしい恋の歌の全貌が望める絶景の場所です。石見の海の突端の岬から眺める雄大な情景は「石見相聞歌」を詠んだ人麻呂さんの思いを体感できます。燈台に設置された説明版も参考になさって下さい。

大崎鼻

大崎鼻

二宮(にのみや)交流館清水克彦(しみずかつひこ)氏歌碑

ここに生まれ育ったといわれる人麻呂さんの妻・依羅娘子(別名:恵良姫(えらひめ)さん)を偲んで作られました。人麻呂さんと恵良姫さんを軸とした二宮地区の漫歩用地図も掲示されていますので古代の江津を楽しんで歩いてください。

二宮交流館

二宮交流館

君寺(きみでら)清水克彦(しみずかつひこ)氏歌碑

二宮町神主地区の恵良(えら)という所は、古代歌垣(うたがき:男女の歌の掛け合い)の場だったともいわれる高神(たかかみ)の丘があり、古墳も多数あります。恵良姫さんの誕生の地にふさわしい所です。ここから高角山(人麻呂さんが袖を振ったといわれる山)がきれいに見えます。

君寺

君寺

都野津柿本(つのずかきのもと)神社

人麻呂さんが恵良姫さんと暮らしていたと伝えられる場所です。恵良姫さんの子孫が植えたと伝える樹齢800年は優にこえる「人麻呂の松」の一部も展示されています。犬養孝氏の歌碑もあります。

柿本神社

柿本神社

高角山(たかつのやま)公園

人麻呂さんは戦後も人々の精神的な拠り所となりました。市内随一の秀麗な山、島の星山(「高角山」といわれます)に鎮座する人丸神社には二人の銅像もあり、相聞歌の世界に思う存分浸れます。

高角山公園

高角山公園

江津駅

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齋藤茂吉鴨山(さいとうもきちかもやま)記念館

齋藤茂吉氏は文献による研究と実地踏査の結果、ここ湯抱の地を柿本人麻呂終焉の地「鴨山」と定めました。万葉集の鴨山関係の資料を展示しています(水・日・祝のみ開館)。

①齋藤茂吉鴨山記念館

①齋藤茂吉鴨山記念館

②歌碑めぐり

齋藤茂吉鴨山記念館から湯抱(ゆがかえ)温泉を通って鴨山公園へ至る登り道(町道湯抱線)沿いに、人麻呂さんや齋藤茂吉氏などの歌碑が11基あります。春は桜、秋は紅葉が綺麗です。

②歌碑めぐり

②歌碑めぐり

③鴨山公園

ここから美郷町の「鴨山」を展望することができます。「人麿がつひのいのちを をはりたる 鴨山をしもここと定めむ」(齋藤茂吉氏)の歌碑があります。

③鴨山公園

③鴨山公園

道の駅グリーンロード大和

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道の駅瑞穂

道の駅瑞穂

志都(しず)岩屋(いわや)

万葉集で「大汝(おおなむち) 少彦名(すくなひこな)の いましけむ 志都(しず)の岩屋(いわや)は 幾代経(いくよへ)ぬらむ(巻三355)」と詠われている候補地です。県の天然記念物及び名勝に指定されている神秘的な巨岩や奇岩が数多くあり、神殿の後ろにある「鏡岩」の穴にはこよりを結ぶと願いが叶うといわれています。

志都の岩屋

志都の岩屋

久喜・大林(くきおおばやし)銀山

石見銀山のうち世界遺産に登録された大森銀山と同様に徳川幕府が直轄領とした銀山のうちのひとつで、100か所を越す間歩群と24個の精錬所跡が残っています。精錬所跡には溶鉱炉の跡が見られ、山の斜面にはレンガを積んだ煙道も確認できます。石見の国の銀が世界に誇ったことをここでも確認できます。

久喜大林銀山

久喜大林銀山

断魚渓(だんぎょけい)

江(ごう)の川の支流濁(にごり)川が流紋岩を侵食してできた渓谷で、岩にぶつかる凄まじい水の流れなど壮大な景観を見ることができます。濁川は古来「石川」とも呼ばれ、人麻呂さんを偲んで作った歌「今日今日と わが待つ君は 石川の貝に交じりてありといはずやも(巻二224)」の石川の貝(谷)とはここ断魚渓ではないかという説もあります。国の名勝にも指定されています。

③断魚渓

③断魚渓

於保知(おほち)盆地展望台

石州瓦の赤い屋根と緑が調和した於保知盆地を眺めることができます。運がよければ雲海を眺めることもでき(秋・早朝)、人麻呂さんの妻の歌「直(ただ)に逢はば逢ひかつましじ石川に雲立ち渡れ見つつ偲はむ(巻二225)」にふさわしい情景です。また「たたら製鉄」に使用するための砂鉄を採集した「鉄穴(かんな)流し」の跡地と人々の生活が融合してできた文化的景観としても見る価値があります。

於保知盆地展望台

於保知盆地展望台

⑤薬草・薬木公園

自生の薬草や薬木の散策路があり、そこを歩いていくといたるところに「たたら製鉄」の跡地や「鉄穴流し跡」なども見ることができます。中心のオープンスペースではちょっとした水遊びもできます。近くには「香木の森公園」があり、200種以上のハーブのあるハーブガーデンが楽しめるほか、いわみ温泉「霧の湯」もあり、ハーブ湯などが楽しめます。

薬草薬木公園

薬草薬木公園

瑞穂IC

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周遊観光~ひと足のばして~

八雲立つ風土記の丘/出雲国庁跡

八雲立つ風土記の丘/出雲国庁跡

『古事記』や『日本書紀』と並ぶ歴史書であり、733年(天平5)に完成した『出雲国風土記』は、現存する風土記の中で唯一完全な形で残っています。編纂の最中に出雲国司として赴任した、門部 王(かどべのおおきみ)は、「飫宇(おう)の海(うみ)の河原の千鳥汝(な)が鳴けば我が佐保川の念(おも)ほゆらくに」と、出雲の地で都を思った歌を詠んでおり、万葉集にも掲載されています。
八雲立つ風土記の丘展示学習館では、出雲国風土記の写本や奈良時代の様子を再現した模型など、県内の古代史を語る多くの資料が展示してあるほか、周辺には出雲国庁跡や出雲国分寺跡が保存・整備されており、万葉集編纂当時の出雲国を感じることができます。

【住所】

松江市大庭町456

【石見からのアクセス】

最寄り駅JR松江駅までは、JR特急で1時間30分~2時間30分
JR松江駅から一畑バス(八雲行)約18分、風土記の丘入口下車徒歩2分
JR松江駅からタクシーで15分

伯耆国府跡

伯耆国府跡

「貧窮問答歌」や「子を思ふ歌」など庶民の生活や家族の愛情を詠んだ歌で有名な万葉歌人 山上憶良(やまのうえのおくら)は、伯耆国の国司として赴任した人物です。
伯耆国府跡には、伯耆国庁跡といった遺跡や復元された建物が歴史公園として整備されており、万葉の雰囲気を感じることができます。

【住所】

鳥取県倉吉市国府、国分寺、不入岡

【石見からのアクセス】

最寄り駅JR倉吉駅までは、JR特急で2時間00分~3時間00分
JR倉吉駅から路線バスで25分

因幡万葉歴史館/因幡国庁跡

因幡万葉歴史館/因幡国庁跡

万葉歌人 大伴家持(おおとものやかもち)が万葉集の最後を飾る歌を因幡国庁で詠んだ鳥取市国府町は、奈良・平安時代に国庁が置かれ、因幡国の古代文化の中心地です。
因幡の古代の歴史や文化を紹介した博物館で、万葉植物の庭園や古代衣装の試着体験も楽しめるほか、周辺に因幡国庁跡や大伴家持歌碑も整備されています。

【住所】

鳥取県鳥取市国府町町屋726

【石見からのアクセス】

最寄り駅JR鳥取駅までは、JR特急で2時間30分~3時間30分
JR鳥取駅 駅前バスセンターから3番のりば「日ノ丸バス」
「中河原線」…「因幡万葉歴史館」で下車
または「因幡万葉歴史館入口」で下車、徒歩5分
鳥取駅よりタクシーで約20分

太宰府政庁跡

新元号「令和」の出典は、太宰府にて催された梅花の宴の際に詠まれた歌です。
ゆかりの地である太宰府政庁跡は、全国から改めて注目されています。

【住所】

福岡県太宰府市観世音寺4丁目6-1

【石見からのアクセス】

JR特急でJR新山口まで行き、新幹線に乗り換えJR博多駅下車
博多駅バスターミナルより西鉄バスに乗車、都府楼前駅 下車、徒歩約15分
総行程3時間30分~4時間30分

[参考書籍]
人麻呂さん石見に生きて恋して(川島芙美子著・山陰中央新報社発行)