入浴前の肌は皮脂膜で守られますが、温泉に入ると皮脂は湯の中に溶け出します。温泉成分が肌に取り込まれると、表皮にふくまれる物質も湯の中に溶け出します。このため、入浴してすぐの肌は表皮に温泉成分が浸透ししっとりふっくらとしていますが、徐々に皮脂膜が無くなり肌が乾燥しやすくなってしまいます。つまり湯あがり10分以内にしっかりと保湿ケアをし、美肌成分を肌に閉じ込めることが美肌づくりのポイントです。
温泉には美人の湯、美肌の湯と呼ばれる要素があり、その決め手は泉質です。泉質は10分類あり島根県ではそのうちの8種類の泉質を含む温泉に出会えます。まずは、温泉の三大美容要素に注目。古くから「三大美人泉質」と呼ばれている泉質「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」ここには、美肌のために欠かせない大切なパワーが隠されています。さらに、約60ヵ所ある島根県の温泉にはその他の泉質も豊富で、それぞれの特徴により、たくさんの美容力が期待できます。
炭酸水素塩泉は、肌の汚れや古い角質を落としてくれる石けんのような作用が期待できる温泉、お肌がスベスベつるつるになります。pH8.5以上のアルカリ性の温泉も同じような作用が期待できます。
硫黄泉と炭酸ガスを豊富に含んだ二酸化炭素泉は、血行を促進して体のめぐりがよくなります。血の流れがよくなれば、酸素や栄養の供給も順調になり、滞りがちな老廃物が運び出されて、クリーンな体、クリアな美肌へ導くサポートをしてくれます。
温泉の水分を肌へ運び化粧水のような作用が期待できる硫酸塩泉はしっとり美肌のサポーター、塩化物泉は、塩の成分が薄いヴェールのように肌を包み、肌の水分や熱を逃げにくくしてくれますので、湯あがり後も”しっとり” “ほかほか”が持続します。
時には心身のバランスを調整することで癒されたり、活性化して肌に活力をチャージしたい時もあります。含鉄泉や放射能泉で体をじんわり温めて自律神経のバランスを整えたり、pH3未満の酸性泉で、肌を殺菌し、適度な刺激で活性化を促したりすることもツヤツヤ美肌の後押しになります。
温泉に入る行為で生じる体へのはたらきを「物理作用」と呼びます。具体的に物理作用には、次の3点が挙げられます。
温泉に入って体が温まることで、血行や代謝の機能が促進し、疲労回復につながることを温熱作用といいます。家庭のお風呂でも温熱作用は得られますが、温泉では成分がお湯に溶け込んでいるため温熱効果がさらに高まるのです。なお、熱いお湯にはリフレッシュ作用が、ぬるいお湯にはリラックスできる作用があります。
温泉に入ると、全身にかかる水圧。その水圧を利用しマッサージ効果を得ることができます。水深が深くなるほど圧力は増すため、湯船の中で体を動かして水圧を与えることで血行が促されます。特に、脚には全血液の三分の一が集中しているため、水圧を与えることでリンパの流れを促せば、むくみやだるさの解消につながります。
温泉では浮力が働きます。広くて深い湯船につかることで、浮力により体が軽く感じ、緊張している筋肉がほぐれてリラックスできるのです。頭を支えに全身をリラックスさせて体を浮かせる「浮遊浴」という入浴法では、無重力のふわふわ感を心地よく味わうことができます。
温泉に行くという行動そのものが持つ、日常生活から離れることで気分転換になる作用を「転地作用」といいます。温泉に入るとき、のどかな景色に包まれながら自然に触れることで、日頃のストレスから解放され、心身をリフレッシュすることができます。
温泉に溶け込んでいる成分から化学的作用(薬理作用)を得られます。つまり温泉に入るだけで、肌の汚れや古い角質を落としてなめらかに整えるクレンジング作用や、シミやくすみの悩みの助けとなる血行促進作用、肌に水分を運んでしっとり美肌をサポートする保湿作用など、さまざまな美肌づくりへのサポートが期待できる美容法となりえます。
監修:石井宏子(温泉ビューティ®研究家)