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島根の名建築!美術館と劇場が融合する「グラントワ」の空間芸術

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2019年07月03日 公開

のどかな街並みの中に現れる赤い建物。約28万枚もの石州瓦が壁面や屋根に施された圧巻のその佇まいは、まるで鱗に覆われた巨大な生き物のようにも見えます。

益田市にある島根県芸術文化センター「グラントワ」は、「島根県立石見美術館」と「島根県立いわみ芸術劇場」からなる複合施設。美術館と劇場が一つになった施設は全国的にも珍しいといわれます。グラントワとはフランス語で「大きな屋根」を意味し、建物のアイコンでもある地元産の石州瓦を用いた赤い屋根や、その下に人々が集うことをイメージした愛称として親しまれています。

島根県芸術文化センター「グラントワ」外観
島根県芸術文化センター「グラントワ」

2005年に開館したグラントワの設計を手掛けたのは、建築家・内藤廣氏。約28万枚の石州瓦に覆われた独特の外観は、見た目のインパクトはもちろん、地元の人がずっと目にしてきた瓦の新しい表情を引き出し、かつメンテナンスのしやすさまで考慮したもの。益田の町とともに歴史をつくり、長く愛される建物になってほしいという思いがこめられています。

流れる赤の水盤

島根県芸術文化センター「グラントワ」中庭

エントランスを入ると、まず目に飛び込んでくるのが水盤のある中庭。中世ヨーロッパの広場をイメージしたもので、お祭りやバザールなどのイベントもここで開催されています。空を映す水盤は、昼と夜で違った雰囲気が楽しめるのも、この場所の魅力です。流れる水の音が小川のせせらぎのように聞こえ、時間がゆったりと流れているように感じます。

石州瓦の魅力を最大限に引き出す

グラントワの石州瓦

石州瓦は、近くで見ると色味や風合いが一枚一枚異なります。かつては登り窯で焼いていたため、風合いの異なる瓦ができ、自然とグラデーションが生まれていました。その風合いを出すため、ガス窯を使用する今も釉薬の色を調整しながら6種類の瓦がつくられています。

グラントワの石州瓦

瓦のくぼみを中心から少しずらすことで、瓦を並べたときに波うつような流れが生まれ、空の色や見る角度によって見えかたが変わるのも、美しさへのこだわりです。さらに見た目だけでなく、石州瓦はガラス質のような釉薬でコーティングし高温で焼くため、とても頑丈でめったに壊れることはなく、地震や台風に強いのが特徴です。

劇場は大きな楽器

島根県立いわみ芸術劇場の大ホール
劇場の大ホール

大ホール1500席、小ホール400席からなる、この劇場の魅力は何と言っても「音」。ホールの内からも外からも、その徹底した構造のこだわりを見ることができます。コンクリートの凹凸で形づくられた劇場は、まるで巨大な岩のようです。

島根県立いわみ芸術劇場の秘密
劇場の外から見た壁面

一枚一枚異なる木型をつくり、コンクリートを流しこむという難工事から誕生した壁面は、音響の専門家との話し合いを重ね、音の構造などをすべて考え抜いてつくられたもの。見た目にインパクトがあるだけでなく、凹凸のひとつひとつが反響板になっています。また、平坦な壁面にせず、折り紙のように折りをつけることによって、耐震性能も強化。音響とデザイン性、耐震性すべてを高めた構造です。

島根県立いわみ芸術劇場のホワイエ
ホワイエ

さらにホワイエには自然光を取り込むライトや、遠近法をつかった台形の階段など、細やかな工夫がなされています。

島根県立いわみ芸術劇場の大ホール
ステージから眺める大ホール

舞台が見やすいように工夫された「千鳥配置」の座席には、一席ずつに空調がつけられています。通常は壁や天井につけられることがほとんどですが、ホール全体の空調をまとめて調整するためにはどうしても音が出てしまいます。それをさけるべく、空調メーカーと共同開発した内藤氏の作品です。繊細な音も、ダイナミックな音も、ありのままの音を奏でるためにつくられたホールは、それ自体がまるで大きな楽器のよう。奏者にとってこの上ない舞台であると同時に、ごまかしのきかない場所でもあるのです。

音響、舞台の見え方、さらに舞台の裏側のスムーズな動線に至るまで、見えるところから見えないところまで徹底的に配慮された最高の劇場。地元のブラスバンドから世界的な音楽家まで、音楽を愛する人たちに圧倒的な支持を得ています。

空間力と企画力で唯一無二の展示を

"島根県立石見美術館の展示室A

美術館にはA~D4つの展示室があります。単なるホワイトボックスではなく、それぞれ空間コンセプトが異なります。4室ともワンフロアでつながっているため、フレキシブルな使い方ができるのも特徴の一つです。


床材に花梨を使用した展示室A

展示室Aは、グラントワのテーマカラーをイメージした赤茶の空間。古美術などを展示することを想定し、壁はさりげなくアイボリー色になっています。

島根県立石見美術館の展示室B

展示室Bは、静かな黒い空間。天井は3.5mと低く、床も絨毯張りで足音が響かず、小さな作品をじっくりと集中して見ることができるよう工夫がなされています。

島根県立石見美術館の展示室B
シックで落ち着いた雰囲気の展示室B

島根県立石見美術館の展示室C
展示室Cで展示される「ファッション」のコレクション

展示室Cは、明るく白い空間。天井も高く、壁が動くなど、自由度の高い部屋。自然光を活かした展示なども可能です。

A~Cは基本的にコレクション展、一番大きな展示室Dは企画展が行われます。グラントワの収蔵品の主な柱は、大きくわけて「森鷗外ゆかりの作品」、「ファッション」、「石見地方の美術」の3種類。特にファッション関係のコレクションに重点を置いている美術館は珍しく、ファッションを芸術・文化として幅広い概念で捉えた作品が収蔵されています。

コレクション展では歴史あるメゾンのドレスをはじめ、歴史的資料、雑誌、写真、美人画や現代美術などバラエティ豊かな作品の数々がドラマチックに飾られます。

島根県立石見美術館の展示室D
展示室D 

展示室Dは、企画展が開催される最も広い空間。内容にあわせて仕切りも動かせ、企画にあったふさわしい空間を演出することができます。

多いとは言えない収蔵品数でも県内外から多くの人が足を運びたくなるのは、建物の魅力と、企画の面白さ、その二つが合わさった独創性がなす技です。

劇場と美術館、だけじゃない楽しみ方

グラントワのライブラリー
ライブラリー

館内には、グラントワ限定グッズや石見地方ならではのアイテムが並ぶミュージアムショップがあります。また、スイーツやランチが楽しめるレストラン、ライブラリーなどもあり、1日ゆっくり過ごすこともできます。美術館や劇場だけでなく、地元の人がカフェとして気軽に利用することもあります。

グラントワのミュージアムショップ
ミュージアムショップ

町と人、文化の垣根を越える

グラントワのロビー
ロビー

「音楽と町の境界をフラットにする」を目指すグラントワでは、さまざまな珍しい試みが行われています。館内で定期的に開催される音楽祭「いつでもどこでも音楽祭」は、人々が行き交う美術館のエントランスや大ホールホワイエで開催され、鑑賞は無料。美術館と劇場の垣根を超えるコラボレーション企画「ミュージア」という事業もその一つです。これまで、美術館の企画展などから着想を得て、オリジナルのパフォーマンスやコンサート、ワークショップなどユニークな企画を制作・実施し、大きな反響を呼んでいます。

開けた場所で行うことで、生の演奏にふれる機会をつくっています。また、子供や大人、弦楽、邦楽などの団体育成活動を行なっているのも、グラントワの特徴のひとつです。

グラントワの生け花

県内外から多くの人々が訪れるグラントワ。館内をさりげなく彩る生け花は、町の人が庭に咲いているものを活けることも。観光地としてはもちろん、館が誕生当初から目指した通り、市民とのつながりが強い施設です。

町と直結するグラントワ

正面のエントランスを入って右を見ると、益田駅前の通りと一直線でつながっています。町の人たちに暮らしの延長で気軽に足を運んで欲しい、日常の中にとけこみ、町と一緒に育っていく存在になってほしいとの思いが軸にあってこその「町と直結する」さりげない設計です。

グラントワの外観を、ある人は「鎧を着た大魔神」といい、ある人は「赤い大きな魚」といいました。見る人の想像力をかきたてるこの赤い大きな建物は、何度訪れても違う表情で迎えてくれます。

建築物としての魅力と、音を極めた劇場、キレのある企画の美術館、それを支える人々の愛情が細部までやどったこの場所に、ぜひ一度足を運んで、まるごと堪能してみてください。

グラントワの草間彌生

島根県芸術文化センター「グラントワ」

〒698-0022 島根県益田市有明町5-15 [MAP]

TEL:0856-31-1860(グラントワ代表)/ FAX:0856-31-1884

[開館時間]8:45~22:00

[休館日]毎月第2火曜日および第4火曜日、年末年始 (火曜日が祝日の場合は、その翌日以降の最初の休日でない日が休館日)

<島根県立石見美術館>

[開館時間]9:30~18:00(展示室への入場は17:30まで)

[休館日]毎週火曜日、年末年始

<島根県立いわみ芸術劇場>

[開館時間]9:00~22:00

[休館日]毎月第2火曜日および第4火曜日、年末年始 (火曜日が祝日の場合は、その翌日以降の最初の休日でない日が休館日)

島根県芸術文化センター「グラントワ」 公式ホームページ

 

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