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石見地方のやきものめぐり(2)

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2016年04月13日 公開

温泉津焼の窯元を訪ねよう

 

かつて大きな登り窯が建ち並び、「はんど」と呼ばれる水がめが盛んに焼かれていた温泉津(ゆのつ)。

いまは民藝運動の作家・河井寛次郎の流れを汲む、3軒の窯元がこの地で作陶を続けています。

 

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温泉津焼の始まり

登り窯

温泉津焼の歴史は、江戸時代の宝永年間(1704~1708)に3つの窯が開かれたことに始まるとされています。北前船で栄えた温泉津港に隣接しているのに加え、登り窯を築くのに適した傾斜地であったこと、付近で良質な陶土や釉薬が採れたことから、幕末から明治にかけて「はんど」と呼ばれる大きな水がめをはじめとする日用の陶器の産地として発展しました。

 

温泉津焼の歴史を紡いだ荒尾常蔵

荒尾常蔵

しかしながら戦後になってプラスチックが登場すると、はんどの需要は急速に落ち込みます。窯元が次々と廃業していくなか、その衰退を惜しむ人物がいました。河井寛次郎に師事し、京都の五条坂で作陶をしていた荒尾常蔵です。常蔵は1969(昭和44)年、温泉津に移住し、古い登り窯を改築して椿窯を開きました。一度は廃れかかった温泉津焼でしたが、こうして新たな京都の風を取り入れ、いまに続く歴史を紡いでいます。

 

現在、作陶を続けている3軒の窯元は、「温泉津 やきものの里」からいずれも数分で歩いていける距離。河井寛次郎の影響を受けた、三者三様の表現をぜひ手に取って味わってみてください。

 

椿窯

荒尾浩一さんと浩之さん

椿窯は、荒尾常蔵の長男である荒尾浩一さんが、息子の浩之さんとともに営む窯です。

辰砂

河井寛次郎が好んで使った青い「呉須(ごす)」や赤い「辰砂(しんしゃ)」といった釉薬を用い、やわらかな色合いのシンプルな形の食器を中心に作陶しています。

呉須

浩一さんが心がけているのは「当たり前の材料を使って、収納しやすく、使いやすいものをつくる」こと。

コーヒーカップ

工房に併設されたギャラリーには、飽きずに毎日使えて、それでいてちょっと贅沢な気分にさせてくれそうなお皿や湯呑、コーヒーカップが所狭しと並んでいました。

椿窯

椿窯

椿窯

椿窯

椿窯
〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ3-4
TEL:0855-65-2286
【開館時間】9:00~17:00
【休館日】不定休

 

(有)椿窯

(有)椿窯

(有)椿窯は、先代の荒尾常蔵の次男である荒尾寛さんが、長男の則和さん、常寛さんとともに営む窯です。

椿図案

常蔵が「椿窯」と名づけたのは、則和さんいわく「単に椿が好きだったから」とのこと。

イッチン

そんな常蔵がデザインした椿の図案を「イッチン」と呼ばれる技法でうつわに描いたものが、窯の定番文様になっています。

5色の釉薬

また、常蔵から受け継いだ青磁(せいじ、白)、辰砂(赤)、呉須(緑)の3色に、水色、藍色の呉須を加えた5色の釉薬も特徴のひとつ。

華のあるうつわ

透き通るような釉の色合いを生かした、華のあるうつわが印象的です。

(有)椿窯

(有)椿窯

(有)椿窯

(有)椿窯

(有)椿窯
〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ12-2
TEL:0855-65-2022
【開館時間】9:00~17:00
【休館日】不定休

 

森山窯

森山雅夫

森山窯を営む森山雅夫さんは、河井寛次郎の最後の内弟子として7年ほど学んだのち、倉敷の堤窯の武内清二郎のもとで5年修業。荒尾常蔵の誘いで温泉津に移り住み、 1971(昭和46)年に窯を築きました。

ほっとする器

妻の美代恵さんとともにふだん使いのうつわを作り続ける森山さんは「使ったときにほっとした気持ちになってもらえたら」と語ります。

美しい器

森山さんが大切にしているのは、使いやすさと見た目の美しさ。

愛着の湧く器

釉薬のやわらかな色合いがしみじみとした美しさをかもし出しているうつわは、使えば使うほど愛着が湧きそうです。

森山窯

森山窯

森山窯

森山夫妻

森山窯
〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ3-2
TEL:0855-65-2420
【開館時間】8:30~18:00
【休館日】日曜不定休

 

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