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島根の伝統芸能「石見神楽」を体験!実際の衣装や面を身に付け舞う

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2023年04月05日 公開

日本神話を題材に、軽快なリズムのお囃子(はやし)に合わせ、豪華絢爛な衣装と豊かな表情の面を付けて舞う島根県西部(石見地方)の伝統芸能「石見神楽」。

鑑賞だけでも十分魅力的なのですが、さらにおすすめしたいのが普段なかなかできない「神楽体験」です。衣装を身にまとい、面をかぶって舞いに挑戦したり、神楽を盛り上げる楽器の演奏を体験することができます。また、体験の最後には、石見神楽を間近で鑑賞することも。今もこの地に息づく「石見神楽」の伝統美・技の魅力をぜひ体感してみましょう。

石見神楽の特徴

豪華絢爛な衣装でのダイナミックな舞い

謡曲を神能化した出雲流神楽から影響を受けて演劇化された伝統芸能で、室町時代には既に演じられていたとも言われています。元々は神職による神事でしたが、明治政府が神職の演舞を禁じたため、地域の人たちの手に受け継がれました。
現在では神様への奉納神楽のほか、各地で定期公演が盛んに行われており、どの会場も多くの地域住民や観光客でにぎわっています。小さな子どもから高齢者まで幅広い年代に愛されている伝統芸能です。

軽快な太鼓のリズムと賑やかな笛の音をバックに、金糸銀糸の煌びやかで美しい衣装をまとった演者が舞うのが石見神楽。観る人も舞う人も次第にボルテージが上がっていくほどダイナミックで楽しいのが特徴です。

県内100以上の社中が継承


※島根県西部全域にある石見神楽社中。今回神楽体験ができるのは、石見エリア中西部の益田市です。

守護神の神社を持っている舞のグループを「社中」と言い、島根県内で石見エリアを中心に100以上もの社中が伝統芸能を継承しています。

石見神楽体験レポート! 神楽の衣装や面を身に付けて魅力を体感

体験できるのは、益田市内に11ある社中の練習場。10日前までに益田市観光協会内のサイトで予約を入れます。
この日お邪魔したのは、明治期に創設され、約半世紀前からは髙津社中の名で活動する神楽団です。現在小学1年生から75歳まで24人が所属し、女性も3人在籍しています。

 

【見る】衣装や面を手に取ってみる

思わず吸い込まれそうになる緻密な刺繍の衣装

まずは舞い手がまとう衣装を見せてもらいました。間近に見ると、金糸銀糸で施された刺繍の緻密さと大胆な色の配合に目を見張ります。描かれた亀や鶴、龍などの表情や動きも豊かです。激しい舞いの最中には、じっくり見ることのできない細やかな世界に吸い込まれそうです。1着数百万円するものあると聞き、何気なく触れていた手が思わず引っ込みました。

手にしてびっくり!驚くほど軽い面

次に面を見せてもらいました。一つの社中で所有する面は100以上。険しい表情で睨みつける神や、荒々しく牙をむく鬼、穏やかな顔つきの姫など、じっと見ていると今にも動き出しそうなくらい表情が豊かで、ドキッとします。促されてそっと手に取ると、思ったよりも軽くてびっくり。全国的には木彫面が多いのですが、石見神楽では和紙を貼り重ねて作られているため、軽くて丈夫だそうです。

 

【試着】伝統芸能の舞い手に挑戦!

[衣装]豪華な衣装で神聖な気分

まずはきらびやかな衣装を試着。1着数百万円という手にしたこともない豪華な衣装に恐る恐る袖を通すと、神聖な神様のような気分に。と思ったのもつかの間、すぐにずっしりとした重みが伝わり、手を上げることもままなりません。なんと1着あたり15kgから30kgほどもあるとか。軽やかでハードな舞いからは想像がつきません。

[面]視野の狭い面は、歩くのも至難の業

衣装が重くて座るも歩くもままならない中、面を付けてもらいました。後ろでキュッとひもを結んでもらうと、一気に視界が暗くなり、外を見ようとするものの至難の業。それもそのはず、穴が開いているのは両目と鼻の穴の小さな部分だけ。
特に鬼の面のように両目の間隔が離れていると、人間の目の位置とずれるので、片目部分でしか見ることができません。見える範囲が限られているので、ベテランの舞い手は、他の舞い手の足の動きを見ながら踊るそうです。

最近は、小さな穴を数多く開けて視野を広くした面も作られているとのこと。舞い手のニーズに柔軟に対応しているんですね。

小道具を手に、神や鬼になりきる

重たい衣装と視野が狭い面を身に付けると、身動きが取れない状態に。それでも、社中の人のアドバイスのもと、鬼棒や剣などの小道具を手にポーズを取ってみました。恥ずかしがらずに堂々と、そして少し大げさなくらいの振りが見た目にも映えるとのこと。手を上げる角度や道具の持ち方によっても、見栄えが変わると聞きました。後で写真を見ると、意外とさまになっていてびっくり。

[蛇胴・大蛇]長さ17メートル!持つだけで精一杯の蛇胴

舞台では、大迫力のスピードで所狭しとダイナミックに動き回る大蛇。実は、約1.8mのピースを9本つないで1頭の蛇胴にしているそうです。1ピースをバランス良く持つだけでも大変なのに、つないで17mにもなったものを動かしながら、とぐろを巻いたりうねったりするなんて至難の業です。しかも自分の体を隠しながら、舞台を走り回るなんて、その技には驚きを隠せません。

ダイナミックな舞いを支える石州和紙

舞台上を走ったりジャンプしたりして激しく舞う石見神楽。そんなダイナミックな動きに欠かせないのが石見地方の伝統工芸品、石州和紙です。衣装や面、蛇胴のいずれにも、強靭で肌触りが柔らかく、軽い和紙が使われており、舞い手の動きをスムーズにしています。たとえば、長さ約17mもあるのに重さは約12㎏の蛇胴。和紙と竹だけで作られているからこその軽さですが、軽量自在に伸縮し、うねりたつ蛇の姿を見事に表現します。

 

【楽器演奏体験】楽器演奏は阿吽の呼吸がカギ

石見神楽では、大太鼓、締め太鼓、手拍子、笛の4種類の楽器が使われます。太鼓を叩かせてもらいました。神楽では大きな音が響き渡りますが、バチは意外と細い!つい左右どちらかに集中してしまって、交互にリズミカルに叩くのは見ているのと違って難しいこと。

演目では、複数人がそれぞれ違う楽器を持って横並びで演奏します。楽譜はなく、指揮者もいないため、メンバーによる阿吽の呼吸が大切とか。息が合うようになるまでいったいどれほど練習を重ねたのでしょう。

 

【演目鑑賞】間近で味わえる大迫力の舞い

体験の仕上げは、練習場の一角にある舞台での神楽鑑賞です。演者との距離は最短で1mほど。息遣いが聞こえるくらいに間近で臨場感抜群です。

笛の音を皮切りに5人による囃子が始まると間もなく、神楽幕から茅の輪と剣を手にした神様が登場しました。大迫力の舞に思わず引き込まれます。30kgをゆうに超える衣装をまとい、面をした状態で舞っているとはとても思えないスピードと迫力。そして時に力強く、時に穏やかな調子を奏でる見事な囃子。これを舞い手や奏者の熱が伝わるくらいの近距離で体感できるのです。なんと贅沢なことでしょう。

衣装や面、そして楽器が心身と一体となり、同時に舞い手や奏者とぴったりと息があってこそ生み出される舞台なのだと実感しました。

● 今回体験・鑑賞した演目「鍾馗(しょうき)

中国・唐の時代、病に臥していた玄宗皇帝の夢の中に1人の神が現われ、鬼を退治しました。この神が鍾馗です。鍾馗は後世、厄鬼を追い払う神と信じられるようになりました。神楽では、鍾馗が茅の輪を通して厄神を捉えます。

 

石見神楽体験を終えて・・・

ダイナミックな動きとリアルな演出で見る人を楽しませてくれる石見神楽。社中の方の説明を受け、その裏側にあるのは石見神楽の柔軟性だと実感しました。伝統を受け継いでいくことは言葉で語る以上に難しいこと。でもただ技術や文化を継承するだけでなく、その時々の舞い手や面・衣装の作り手、そして鑑賞する人々の想いを大切にしながら、少しずつ形を変えてきたからこそ多くの人に愛されているのです。

元々神様に奉納する歌や舞である神楽。厳かなイメージが強く、神様に奉納するための神事を想像し、敷居が高いと感じる方も多いかもしれません。そんな神事の “体験” なんて身構えてしまいそうですが、地元の人からも親しまれている石見神楽だからこその体験プログラム、試してみない手はありません。

 

[問合せ先]

一般社団法人 益田市観光協会

〒698-0024 島根県益田市駅前町17-2(益田駅前ビルEAGA1階)
TEL:0856-22-7120/FAX:0856-23-1232

神楽鑑賞に出かけよう! まずは公演スケジュールをチェック

島根県西部の石見地方や広島県北西部には計200以上もの神楽団体があり、地域の秋祭りなどで奉納されるほか、観光施設などでの定期公演やホールなどでのステージ披露も行われています。同じ演目でも社中が違えば衣装や舞も変わるので、その違いを見つけてみるのも面白いかも。

また、ストーリーを知らなくても十分楽しめますが、事前に演目の意味合いを知っていればより深く鑑賞することができます。石見神楽にはさまざまな演目がありますが、ほとんどは日本神話のヒーローもの。スサノオノミコトが、暴れまわるヤマタノオロチを華麗に退治する「大蛇(おろち)」や、神二人と鬼二人が対決する「塵輪(じんりん)」などいわゆる「勧善懲悪」ストーリーが多いので、初めて石見神楽を鑑賞する人にも分かりやすく、楽しめます。公演スケジュールと共に、演目内容もチェックしてみましょう。

石見神楽体験の他にも!まだまだ楽しい益田の旅

益田市では、このほかにも体験・現地ツアーがいっぱい!アウトドアで思いっきり体を動かしたり、もの作りをしたり、益田市の文化に触れたり、とお好みでさまざまな体験メニューから選べます。

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