そば
玄そばをそのまま挽く、
強い風味と歯ごたえが出雲流
島根県の出雲地方で広く食べられる郷土料理「出雲そば」は、長野県の「戸隠そば」や岩手県の「わんこそば」と並ぶ日本三大蕎麦の1つとして有名です。「挽きぐるみ」といって、玄そば(殻付きのそばの実)をほとんどそのまま製粉するので、色が黒く香りが強い独特な風味と食感が特徴です。また「出雲そば」を象徴とする代表的な食べ方が、冷たい「割子そば」と、温かい「釡揚げそば」。どちらもそばに直接つゆをかける食べ方で、一口づつそばをつゆにつけて食べる「ざるそば」などと異なります。お店ごとに個性があり、食べ歩いて違いを楽しむのもおすすめです。
出雲そば対決
出雲そば独特の
コシと風味をストレートに味わう
丸い朱塗りの漆器に冷たいそばを盛り付けるのが「割子そば」です。器1つを「1枚」と数え、3枚で1人前が基本です。海苔とネギに、大根おろしや紅葉おろし、鰹節などが薬味に添えられ、そばつゆと一緒に直接そばにかけます。重ねられた器の上から順番に食べていき、食べ終えた器に余った薬味とつゆは、次の段に移して食べます。
季節やその日の粉の状態により加える水・つなぎの量を職人が経験を基に調整します。割子そばは茹でた後、すぐに冷たい氷水でしっかりと洗い水気を切ります。麺が締まり、コシのあるそばになります。
トロッとしたそば湯に
溶け込む豊かなそばの風味
茹で上がったそばを茹で汁(そば湯)と一緒にそのまま器に盛り付けるのが「釡揚げそば」です。とろみのあるそば湯に浮かんだそばに直接つゆを回しかけ、自分の好みに味を調整しながら食べます。湯気と共に立ち昇るそばの良い香りは「挽きぐるみ」ならでは。風味豊かな「出雲そば」の特徴を一段と引き立てます。
通常、そばは茹でた後にしっかりと水洗いをしますが、釡揚げそばはたっぷりの湯で泳がせるように茹でた後、水洗いせず釡から直接どんぶりにそば湯(茹で汁)と一緒入れます。そば湯にはそばの旨み・栄養がたっぷり入っています。
しまねの風土が生む魅力的なそば3種
島根県では「出雲そば」が有名ですが、それ以外にも地域によって様々な種類があります。そばの栽培は山間や山麓など、昼夜の気温差が大きく、冷涼や寒冷といわれる気候が適しています。山々に囲まれた島根県には、標高が高く盆地状の地形により昼夜の寒暖差が大きくなる地域が沢山あります。このことがそばの実を熟成させ、旨味や香りを引き上げる要因となっています。良質な食材を育む自然環境に恵まれた島根県では、各地の風土に根差した美味しいそばを味わうことができます。
奥出雲そば
標高が高く土地のほとんどを森林が占める奥出雲町は、美味しいそばが育つ環境に恵まれた県内屈指のそば処。その出来の良さから、かつては江戸幕府への献上品として珍重されたと伝わっています。今日でも出雲地方にある多くのそば店では奥出雲産のそばが使用されています。奥出雲町内には10軒以上のお店があり、地元産のそばはもちろん、希少な在来種「横田小そば」も味わうことができます。そばを食べる為に遠方から訪れる観光客も多く、旬を迎える秋に毎年開催される「新そばまつり」は沢山の人で賑わいます。
三瓶そば
国立公園に指定される三瓶山も県内有数のそば処です。高原の寒暖差が大きな気候と、水はけの良い火山灰土壌はそば栽培に最適で、江戸時代からの歴史があります。貴重な在来種が栽培されていて、地元のお店では上品な甘みと風味豊かな三瓶そばを味わえます。出雲そばとは対照的に、実の皮を極力剥くため、淡い色とのど越しの良さが特徴です。薬味には湧き水が豊富な三瓶山麓で栽培された「三瓶わさび」が添えられます。新鮮な三瓶わさびは香り高く、爽やかな辛みと甘みが三瓶そばの美味しさを一層引き立てます。
隠岐そば
島根県の隠岐諸島で古くから親しまれている「隠岐そば」。冠婚葬祭をはじめ、人が集まる行事には欠かせない隠岐の代表的な郷土料理です。小麦粉などのつなぎを一切使わず、そば粉と水だけで打つ「十割蕎麦」で風味が強くそば本来の味を楽しめます。ダシも独特で、焼いた鯖やトビウオを使用した濃いめ味付けです。魚の身も一緒に盛り付けられ、薬味はネギと海苔、ごま、ゆずが定番です。そばのコシは弱く切れやすいので、かきこむように食べます。香ばしい鯖出汁と十割蕎麦の風味が素朴ながら味わい深い島の味です。
自分で作るともっと美味しい! そば打ち体験
こねて、のばして、切って
自分でつくれば美味しさもひとしお
各地で美味しいそばを食べることができる島根県には、ただ食べるだけでなく、そば打ちを体験できるお店や施設もあります。地元産のそば粉を使い、生地をこねてのばして切って、手打ちそばの基本的な作り方を体験することができます。もちろん初めての人でも失敗しないように、分かりやすく丁寧に指導してくれます。自分で作った打ちたてのそばは美味しさも格別です。ぜひ味わってみてください。