2018年07月02日 公開
2018年7月17日(火)に6年ぶりの架け換え・奉納が予定されている出雲大社神楽殿の「大しめ縄」。その大きさは日本最大級で全長13.6メートル、重量5.2トンに及びます。
数年ごとに交換されるこの「大しめ縄」は島根県の飯南町を舞台に1年以上の歳月と延べ1000人の町民の手によって作られています。
今回、初の一般公開となる制作現場をレポートしながら、日本一とも言われる巨大なしめ縄の作り方をはじめ、奉納までの日程や現場の「大しめ縄創作館」についてご紹介します。
しめ縄専用の水田から刈り取られる「赤穂餅」の稲
大しめ縄作りは材料となる稲藁(ワラ)を作るための田植えから始まります。「赤穂餅」というもち米の品種で、色艶が美しく粘りがあるこの稲藁を使います。成長すると人間の背丈ほどの高さになり、これを稲穂が実る前に収穫し乾燥させます。
また、飯南町は標高500メートルの高原地帯。昼夜の寒暖差によって美味しいお米が育つだけでなく、稲藁はしっかりと脂分を貯え、強くしなやかなものになります。今回の奉納に向けて、昨年5月に田植えが行われ、8月に収穫されました。
お祓いの儀式が執り行われ無事に伐採された飯南町産の檜
しめ縄を吊るす「吊り木」の素材は飯南町産の檜。4.5トンの重さに耐える必要があるため、木質に粘りがあり強度に優れた檜が選ばれます。さらに根本の太さは直径65センチ以上、かつ20メートル以上真っ直ぐに成長していることが条件になります。今回、吟味を重ねて選ばれたのは樹齢150年の見事な檜です。
制作現場の飯南町 大しめ縄創作館
今年の3月には大縄の中芯作りが始まりました。中芯にはしめ縄専用の「赤穂餅」の稲藁に加え、飯南町産のコシヒカリのハデ干し藁も使用されます。まずは、藁を束ねて直径30センチほどの長い束を何本も作ります。
1本作るのに1カ月以上かかる大縄の中芯作り
次に太さ4センチほどの麻ロープが入った藁束を一番中心にして、周りに藁束を重ねていきます。1束づつ固くしっかりと締めながら徐々に太くしていき、直径1.5メートル、長さ16メートルの大きな束を2本作ります。
菰編み(写真左)と菰つなぎ(写真右)
中芯を巻くために編まれる菰(コモ)も縦16メートル、横3.6メートルとかなりの大きさです。菰には色艶よく美しい、質の良い藁を選別して使います。代々受け継がれる独自の技術で藁をしっかりと編み込み、繋いでいき1枚の大きな菰にします。
大しめ縄に取り付ける飾りとなる円錐形の「〆の子」も制作中です。こちらも並みの大きさでなく、高さ1.8メートル、直径1.8メートル、重さ300キロ。1つの〆の子に使われる藁の量はおよそ1000平米分で、これを3つ作ります。
〆の子の形ひとつをとっても最終的な大しめ縄のプロポーションに大きく影響します。出雲大社の大しめ縄の優雅さは、作り手の経験と技術により生まれます。
中芯と菰、〆の子が大しめなわ創作館いっぱいに横たわり、徐々に完成が見え始めています。7月15日(日)の「大撚り合せ」、7月17日(火)の「架け替え・奉納」を控え、出雲大社 神楽殿の大しめ縄作りはいよいよ大詰めを迎えようとしています。(※2018年6月15日時点の状況です。)
ここから先は、前回の架け替え・奉納(2012年7月)までの様子をご覧いただきながら、今後予定されている制作工程や奉納までの日程をご紹介します。「大しめなわ創作館」では引き続き制作の様子を見学することができます。
「大しめ縄」と「吊り木」を固定するロープを隠し、見栄えを良くする為に取り付けられる「飾り縄」。飾りといっても直径8センチの立派な藁縄で全部で12本作ります。
菰で巻かれて綺麗に仕上がった大縄
菰と中芯が出来上がると、次は菰で中芯を巻く「菰掛け」が行われます。これが終わると大詰めの「大撚り合わせ」を待つばかりです。
大しめ縄を形づくる全ての要素が完成すると、いよいよ一発勝負の「大撚り合わせ」が行われます。作業場から引き出される大縄は1本1.7トン以上の重さです。
2本の大縄の元を支柱に固定し、片方をクレーン2台で持ち上げ、片方を人の力で転がして撚り合わせる作業が繰り返されます。緊張に包まれる現場の中、総勢80名でおよそ5時間に及ぶ作業となります。
吊り木に固定された大しめ縄がクレーンで持ち上げられます。型くずれなく吊り下げられているか、全体の形はどうか、緊張の瞬間です。大型の特殊トレーラーに積み、飯南町から出雲大社へ運ばれます。
通常のしめ縄は撚り合わせの時に〆の子を取り付けますが、あまりの大きさの為セットして搬送することが難しく、現地で取り付ける難作業となります。早朝8時頃に出発し、10時頃に出雲大社へ到着する予定です。
大しめ縄の取り外し作業が行われる出雲大社の神楽殿
まずは古い大しめ縄が取り外されます。役目を終えた大しめ縄は飯南町の森へ安置され、やがて土に還ります。(場所は非公開)
新しい大しめ縄に〆の子を取り付け、飾り縄を取り付け全体を整えたら神楽殿の梁に吊り下げます。
最後に神楽殿の拝殿で神事が執り行われ、出雲大社の神職が紙垂が取り付けて奉納は終了となります。架け替えには丸一日を要し、終わる頃には日が暮れています。
※「大撚り合わせ」及び「架け換え・奉納」が行われる日は晴天が必須条件です。雨天予報の場合は日程が変更されます。
大しめ縄が作られている飯南町にある「大しめ縄創作館」は、しめ縄づくりの技術と文化を伝承する施設。制作のほか、展示・販売やしめ縄づくり体験等を行っています。
ここでは出雲大社神楽殿の大しめ縄に限らず、日本国内から海外まで多くの神社のしめ縄が制作されています。今回の架け替え・奉納を終えた後も制作の様子は常時見学することができます。
しめ縄作りの体験は、子供でも短時間で簡単に作れるコースから本格的なコースまであり、職人さんが完成まで丁寧に教えてくれます。家庭の神棚や正月飾りに利用できるものも作ることができます。
簡単なデコレーションも楽しめる小型の「輪じめ」
出雲大社の大しめ縄と同じ本格的な「大黒じめ」
〒690-3206 島根県飯石郡飯南町花栗54-2 [MAP]
TEL:0854-72-1017
【営業時間】10:00~17:00(年末年始を除き無休)
【関連リンク】 ≫ 公式ホームページ
※しめ縄飾り製作体験は1人1200円から。10名以上での体験は要予約。
飯南町の観光情報はこちら
≫ 飯南さとやまにあ(飯南町公式観光ガイド)