2022年04月11日 公開
島根半島の東端にある松江市美保関町。北は日本海、南に美保湾、中海と三方を海に囲まれ、古くから漁業と海の玄関口として栄えました。今もその昔懐かしさが残るノスタルジックな町並みと、神話に基づく神事が受け継がれている歴史ある港町です。そんな美保関の知られざる見どころを、ガイドと一緒にめぐる「まちあるきプラン」でご紹介します。
また、美保関にある「美保神社」と出雲市にある「出雲大社」のふたつを訪れることで、より良いご縁を結べるといわれています。歴史の名所、パワースポットをめぐりながらご利益を授かってみてはいかがでしょうか。
【写真】左:出雲大社 右:美保神社
「えびすだいこく両参り」とは、島根半島の両端、島根県出雲市にある出雲大社と松江市美保関町にある美保神社をあわせて参拝すること。その由縁は、出雲大社の御祭神・大国主神(だいこく様)と、美保神社の御祭神・事代主神(えびす様)が親子神であることからきています。この2つの神社をあわせてお参りすることで、より良いご縁に恵まれると言われています。
出雲大社と美保神社の間は車で約1時間30分。車での移動のほか、電車、バスといった公共交通機関での移動方法もあります。
美保神社は、事代主神(ことしろぬしのかみ)である “えびす様” の総本宮です。御祭神の事代主神(えびす様)は、出雲大社の御祭神・大国主神の御子神で、「海上安全、大漁満足、商売繁盛、学業、歌舞音曲(音楽)」の守護神として信仰されています。出雲神話では、国譲り神話で大きな役割を果たし、その神話にちなんだ美保神社の二大神事「諸手船神事」「青柴垣神事」は脈々と氏子に伝わり、現在も毎年行われています。
海上安全、大漁満足といった漁業を司る “事代主神(えびす様)” と大国主神の后神である “三穂津姫命(みほつひめのみこと)” が共に祀られています。三穂津姫命は五穀豊穣、すなわち農業を司る神様で、二柱が一緒に祀られていることで、地元の産業に欠かせない漁業と農業を一緒にお祈りができる神社でもあります。
美保神社では、毎日「朝御饌(あさみけ)祭」「夕御饌(ゆうみけ)祭」といって、朝と夕方に日々のお供えを献上し、神恩に感謝する祭が行われています。厳かな巫女舞、境内に響き渡る太鼓、笛の神楽の演奏はとても神秘的です。参拝客は拝殿外で見学することもできます。静かにそっと見守りましょう。
毎月7日には、神様のご恩に感謝し、国や人々のさらなる繁栄を祈る月次祭(つきなみさい)が行われています。またこの一日限定で、さらなるご縁が結べるよう、特別に金色であしらった鯛守(体数限定)や金字の御朱印の授与もあり、多くの人が参拝に訪れます。
毎年12月3日「諸手船(もろたぶね)神事」
天つ国の使者が船に乗って国譲りの交渉にやってくる様子を表したもので、2隻の諸手船に氏子が分乗し、互いに海水を激しく掛け合いながら美保港内を周る勇壮な神事です
毎年4月7日「青柴垣(あおふしがき)神事」
国譲りを承諾した事代主神(えびす様)が、自ら海中に青い柴垣を巡らせてお隠れになったという神話にちなんだ神事です。事代主神と三穂津姫命の依り代となった2人の當屋(とうや)が2隻の船に乗って美保関港内を一周し、参拝します。国の無形民俗文化財にも指定されています。
島根県西部の伝統芸能・石見神楽には、えびす様を題材とした演目「恵比須」があります。旅人が出雲大社巡礼の途中で美保神社に参詣し、宮人に神社のいわれを聞いていたところ、目の前にえびす様が現れ、鯛を釣り上げ寿福をあらわすというストーリーです。
鯛と「めで “たい” 」をかけて縁起が良いとされ、結婚式などおめでたい場でも上演されることがあります。
美保神社
[住所]〒690-1501 松江市美保関町美保関608
[TEL]0852-73-0506
■ 駐車場
松江観光協会美保関町支部(松江市美保関町美保関661)前の駐車場を利用
※美保神社まで徒歩2分
美保神社や青石畳通り、佛谷寺といった周辺の散策をより深く楽しむならガイド付きのまちあるきプランがおすすめです。神話や歴史、見逃してしまいそうな見どころや、地元の人ならではの雑学・豆知識など、各スポットの魅力をガイド付きで楽しむことができます。
美保神社周辺のガイド付きのまちあるきプランは、希望の日程でめぐれる「みほのさんぽ」と日程が決まっている定期ガイド「おちらとあるき」の2種類。その他にも、美保神社をもっと深く知りたい方向けには、「美保神社と境外末社をめぐる」ガイドプランもあります。
神話の時代から長い歴史のある港町・美保関。その歴史や風習など、ガイドの方の解説を聞きながらめぐれば、ふと何気ないものもとても興味深く感じられたり、一人では見逃してしまいそうな場所を知ることができたりと、驚きと発見に満ちた時間を過ごせます。ガイドとめぐる場所の中から、見どころを一部ご紹介します。
美保神社の歴史や珍しい社殿の特徴、えびす様のストーリーなど、ガイドなしでは気がつくことができない話を聞きながら参拝をします。隠れたパワースポット“幸運の亀”もぜひチェックしましょう。
鳥居と鳥居の間にある登録有形文化財の井戸「廻船御用水」。かつて長い干ばつが続いた際に美保大明神のお告げがあり、掘ってみたところ水が湧き出たことから「おかげの井戸」と呼ばれ、地元の方々に永く大切に守られています。飲用はできませんが、近くに設置されたポンプを動かせば水に触れることができます。
神門をくぐる際、すぐ頭上に「祓解(ばっかい)」というヒラヒラとした紙垂(しで)が見えてきます。この「祓解」の下を通ることで、身を清められると言われています。
御本殿は大社造りを2つ並べた美保造り。現在の社殿は文化10年(1813年)に建造された国の重要文化財です。向かって右側の左殿に三穂津姫命、向かって左側の右殿に事代主神(えびす様)が祀られています。
御本殿の裏手でガイドさんが案内してくれるのが、ちょっと見つけにくい湧水の通り道にある亀の石像。決して枯れない湧水にかけて恋愛や商売のパワースポットとしてお参りする人が絶えないとか。
御本殿の前にある拝殿は昭和3年(1928年)に造営されました。船小屋を模した壁と天井がない造りが特徴です。境内に音がよく響く構造になっていて、えびす様が歌舞音曲の神様でもあることから、音楽の奉納が多く行われています。
美保神社参道にある門から北東に延びる道は江戸時代の参拝道の名残です。門から直進で150m、途中左に曲がり佛谷寺までの約100mを「青石畳通り」と呼び、不規則な石畳と江戸時代の面影を残す町並みが、ノスタルジックで落ち着いた雰囲気です。雨に濡れると石畳が青みを増すことからその名が付いたとされ、雨の日のしっとりとした美しさは格別です。
美保神社の前から青石畳通りに敷かれた石材は主に2種類。一つは福井県で採掘された笏谷石(しゃくだにいし)で、江戸時代末期に北前船で運ばれてきました。もう一つは、美保関で採掘された凝灰岩(ぎょうかいがん)。2種類の石はよく見ると表面が異なるので、ガイドさんに見分け方を教えてもらうと面白いですよ。
各戸の軒下に掲げられた木の看板。その家の屋号や由来、家紋などが書かれています。美保関を訪れた文人や著名人の句も展示されていて、その句が詠まれた背景や裏話などをガイドさんから聞くと、著名人の人となりが垣間見えそうです。
ところどころに現れる建物と建物の間の小道=「中ざや」は、かつて港と青石畳通りの行き来を便利にするために作られたものだそう。建物の中を抜けるように作られているため薄暗く、ランプの灯りがほのかにきらめき、フォトジェニックな写真を撮影することもできます。立ち入りOKな中ざやはガイドさんに聞いてみましょう。
美保神社から青石畳通りを進み、広い十字路から左に曲がり100メートルほど歩くと突き当たりに見えてくるのが佛谷寺です。後鳥羽上皇や後醍醐天皇の行在所にもなった古刹で、大日堂には重要文化財に指定された5体の仏像や、およそ800年前の仏像が安置されています。
大日堂には、約1200年前の平安時代に造られた山陰最古の仏像(重要文化財)が5体鎮座しています。一本の木を彫って造る「一木造り」で、出雲様式の仏像です。ガイドさんや佛谷寺の方の解説とともに、仏像の後ろに回ることもできるため、なかなか見ることができない背後まで鑑賞を楽しめます。
※ガイドプランでも入場を希望される方は、事前に予約が必要です。
江戸時代の悲恋物語で人形浄瑠璃(じょうるり)の題材にもなっている「八百屋お七」。そのヒロインのお七が放火という大罪を犯すほど恋焦がれた恋人・吉三にまつわる地蔵です。ガイドさんから2人の悲恋物語を聞くと、吉三とお七に想いをめぐらせ、そっと手をあわせたくなります。
美保神社には、境内の外にもご祭神を祀る末社が13社あります。その中で9社はガイドと一緒に約1時間のプランでめぐることができます。末社には、美保神社の御祭神・事代主神のほかにさまざまな神様が祀られています。それぞれの歴史や御祭神、末社周辺を含めた知識を得ることができるのが魅力。美保神社をもっと知りたいという方におすすめです。
美保神社周辺をはじめ美保関町内の飲食店では、新鮮な魚介類を海鮮丼や地魚料理などで味わうことができます。港町・美保関に訪れる際は、海産物のグルメやお土産もお楽しみください。
美保神社の鳥居のすぐ目の前に広がる美保湾。海のほとりに立つ常夜塔や赤い浮島橋、山々の緑と海が織り成す風景は美しく、まるで絵画のよう。美保湾を船が行き交うのどかな光景に心が和みます。
歴史ある外観が目を引く本館は、国登録有形文化財。隣にある新館7階には、日帰り入浴ができる展望大浴場があります。入浴しながら、港の景色、名峰・大山の絶景を楽しめます。
※現在、本館は宿泊者以外の立ち入りはできません。
明治31年に造られた石造の灯台。明治の面影をとどめた風格ある建物は、青空や海によく映えます。灯台に隣接した建物は現在「灯台ビュッフェ」として営業。日本海の絶景を眺めながらランチやカフェが楽しめます。