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日本刀鍛錬見学&マイ包丁作り!奥出雲町でたたら製鉄の歴史を体験

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2024年03月15日 公開

奥出雲町は鳥取県・広島県と接し、中国山地に位置する自然豊かなエリア。ヤマタノオロチ神話をはじめ、数々の伝承の舞台でもあります。周囲を高い山々に囲まれ、木炭の原料となる木々と、土壌に含まれる良質な砂鉄が豊富だったことから「たたら」と呼ばれる製鉄法が行われてきました。今なお息づく鉄と刃物の歴史、魅力にふれられる、たたらと刀剣館での「日本刀鍛錬見学」と川島忠善刃物製作所での「包丁作り体験」の2つの体験をご紹介します。

古式製鉄「たたら製鉄」文化が今なお息づく奥出雲町へ


【写真】上:黒刀「月下の笹」(奥出雲たたらと刀剣館 展示品)左下:展示室(奥出雲たたらと刀剣館)右下:原口鉄穴残丘

「たたら製鉄」とは、日本で独自に発展した製鉄方法。特に島根県出雲地方は「たたら製鉄」の中心地であり、もっとも隆盛した幕末から明治初期には、全国の約8割の鉄が奥出雲町をはじめとする中国山地で製鉄されていました。砂鉄や木炭などの製鉄素材を採取するために切り開いた山地は現在、棚田の美しい景観へ。史跡だけでなく、何気ない田園風景の中に、かつての遺構が点在。周遊するだけでもその鉄文化にふれられます。


【写真】左:たたら炉 地下構造模型 右:吹子(ふいご)模型

奥出雲町とたたら製鉄をひも解くうえで、まず訪れたいのが「奥出雲たたらと刀剣館」。古代から現在まで続く、たたら製鉄の歴史や概要を、豊富な資料を通じて解説しています。地元の刀匠(とうしょう)による刀と日本刀の解説、巨大な実寸大のたたら炉の断面模型、実際に踏むことができる天秤鞴(ふいご)や踏み鞴、たたら場を再現したミニチュアなど。鑑賞するだけではなく、体験を通して成り立ちを知ることができます。

刀匠の妙技を間近で!「日本刀鍛錬実演公開」で刀の魅力を深堀り

「奥出雲たたらと刀剣館」では、毎月第2日曜と第4土曜に、現役の刀鍛冶職人である小林刀匠による刀の鍛錬実演を開催中。刀鍛冶の歴史や文化から豆知識まで、小林刀匠の軽快なトークにも注目してみてください。展示と合わせて見学すれば、刀剣と「たたら製鉄」をより深く体感できます。

「奥出雲たたらと刀剣館」で受付を済ませて別棟(見学会場)へ

開催当日、受付で見学したい旨を伝えれば、誰でも予約不要で見学可能。受付を済ませたら、展示物が並ぶ本館の奥にある別棟へ向かいます。なお、月2回定期開催のほかに、定期開催以外の日程で見学もできます(要事前予約)。

現役の刀匠自ら刀鍛冶の工程やポイントを解説

「日本刀鍛錬実演」では、20ある日本刀の作刀・研磨工程のうち、「鍛錬」の様子を実演・公開。所要時間は約50分で、最初の10分は各工程と「鍛錬」の説明を小林刀匠から受け、実演20分、質問コーナー&解説が20分ほど。

吹子を使って炉の中を高温にしていく

「日本刀鍛錬実演」の楽しみのひとつが、送風装置の吹子(ふいご)を使った実演。取手を押す・引くと、簡単な動作ではあるものの、空気を送り出す度、真っ赤な炎が大きくなる様子は迫力満点!鍛錬の状況により、送風装置の吹子(ふいご)体験ができる場合があります。希望者は刀匠から手ほどきを受けた後、実際に吹子で炎に空気を送り、燃焼温度を適正温度に上げていきます。
ちなみにこの吹子、かつては文字通り子どもが担う役割だったそう。小林刀匠いわく、以前は長男が務めていたとのこと。

“とんちんかん”は、刀剣づくりに由来あり!

熱した鉄が1200~1300℃まで温度が上がったところを見計らい、いよいよ鍛錬開始。向こう槌(※)や電気ハンマーを使い、鉄を鍛えていきます。鉄が酸化しないよう灰汁や泥水をつけてから炎で熱し、叩く、後はこの繰り返し。通常の鍛錬では2~3人で向こう槌をします。その際、リズミカルに “トン、トン、トン” と打っていきますが、息が合わないと相槌の音が鈍ります。そんな、息が上手く嚙み合わない、揃わない音が「とんちんかん」の語源になったといわれています。

鍛錬の状況により、向こう槌を振るう体験ができる場合があります。体験できる際は、いい音を響かせるように向こう槌を振るってみてください。

※向こう槌:主鍛冶の反対側に立っている助手が使う大きな金づち。またはそれを使う人。

実演公開でしか聞けない裏話も

鍛錬実演後は刀匠と見学者による解説・質疑応答タイム。刀鍛冶の歴史や、日本と海外での刀の違いといった一般的な解説だけでなく、現役の刀匠ならではのエピソードも聞けます。一子相伝で継承されてきた刀剣の歴史・文化の奥深い話もあれば、刀匠の普段のお仕事内容や、刀剣の販売価格などの裏側トークも。時間内であれば質問も回答してくれるので、気になったことは聞いてみましょう。

※今回は取材のため特別に吹子(ふいご)や向こう槌を体験させていただきました。
実演日当日の鍛錬の状況によっては、体験できる場合があります。

奥出雲たたらと刀剣館
[住所]仁多郡奥出雲町横田1380-1
[TEL]0854-52-2770
[営業] 9:30~17:00(最終入館16:30)
[定休日]月曜(祝日の場合は翌日)/12月28日~1月4日
※令和6年4月~9月は火曜。その後は、定休日が変更になる可能性があります。
[入館料金]高校生以上530円、小中生260円、未就学児無料 ※日本刀鍛錬実演日の実施日以外

日本刀鍛錬実演日(定期開催)
[時間]第2日曜、第4土曜 10:00~、13:00~
[日本刀鍛錬実演日の入館料金]高校生以上1,270円、小中生630円
※見学を希望されない方は通常の入館料金のみ

[備考]開催日の任意設定が可能な“日本刀鍛錬実演”は最少催行人数1名~、料金20,000円

【川島忠善刃物製作所】旅の記念にマイ包丁作り体験はいかが?

伝統技術を継承する職人と一緒に思い出の品づくり

鉄の産地としてだけでなく、農工具をはじめとする刃物づくりも盛んだった奥出雲町。その文化は今なお継承され、「川島忠善刃物製作所」では伝統技術を体験できる「包丁づくり体験」が通年で体験することができます。「島根県ふるさと伝統工芸品」に指定される妙技を用いた包丁は、オンリーワンの思い出の品になります。実際、結婚記念日や誕生日といったメモリアルなイベントで体験する方もいらっしゃっています。

切れ味だけでなく柄の丈夫さが特徴の雲州忠善刃物

「包丁作り体験」では6つある工程のうち、整形と研ぎ工程を除いた、「柄を作る・刃を作る・焼き入れ・柄を入れる」作業を、職人とマンツーマンで体験できます。特に注目は包丁の柄を作る工程。「川島忠善刃物製作所」で作られる雲州忠善刃物は、鋭い切れ味と、ステンレスを電気溶接した強度の高い柄が特徴です。その要となる柄を、職人の指示のもと、実際に釜で金属を熱しながら作っていきます。

体験希望日の1週間前までに予約のうえ来店

所要3時間の体験のラストでは、包丁に名前を彫っていきます。希望があれば、自身で名前を刻むこともOK。体験時の服装は露出の少ない動きやすい服装で、足元はスニーカーなどの運動靴を準備しましょう。これまで体験参加された方の中には、あまりの満足度の高さに、受付元の奥出雲町観光協会へ仕上がりの品を持ち込んだ方までいたそうです。

包丁作り体験(川島忠善刃物製作所)
[住所]仁多郡奥出雲町三成712-7
[TEL]0854-54-2260(奥出雲町観光協会)
[営業]9:30~、13:30~ ※1週間前までに要予約
[定休日]日曜、祝日、年末年始 ※体験日は要相談
[料金]33,000円

 奥出雲町内のたたら関連スポット

出雲地方を治めた松江藩には当時、9鉄師を抱えていました。鉄師(てっし)とは「たたら製鉄」の経営者のことであり、とりわけ絶大な影響力を誇ったのが、田部家・櫻井家・絲原家の「たたら御三家」。そのうち、奥出雲町には櫻井家、絲原家に関するスポットがあります。

絲原記念館


【写真】左:絲原家住宅 右:絲原記念館

絲原家は奥出雲町有数の山林大地主であり、400年以上の歴史を持つ名家です。「奥出雲たたらと刀剣館」から車で10分ほどの場所にあり、名家・絲原家が伝承してきた資料を収蔵・展示する資料館、その奥手には自然の山々を借景とした出雲流庭園があり、一般公開されています。さらに、カフェ「茶房十五代」を併設し、スイーツやドリンクでひと休みできます。カフェでは「たたら製鉄」で生まれた金属・玉鋼を使ったアクセサリーも販売中。光が乱反射する美しい見た目から、SNSを中心に話題になっています。


【写真】左:カフェ「茶房十五代」 右:アクセサリー

[住所]仁多郡奥出雲町大谷856-18
[TEL]0854-52-0151
[営業] 9:00~17:00(最終入場16:00)、カフェ10:00~16:00
[定休日]水曜、展示替え日(3月・6月・9月に各5日間)、年末年始(12/30~1/5)、他不定休あり(詳細はHP確認)
※記念館は改修工事中のため、2024年3月末(予定)まで休館中
[料金]【絲原記念館・庭園・洗心乃路共通券】大人1000円、高大生700円、小中生300円、未就学児無料
※12~3月は大人800円、高大生550円、小中生250円(洗心乃路は冬季休業)

可部屋集成館・櫻井家住宅と庭園


【写真】櫻井家住宅

絲原記念館から30分ほどのところに、松江藩の鉄師頭取をつとめた、櫻井家があります。櫻井家は屋号を「可部屋」といい、可部屋の鉄は鉄砲(火縄銃)の一大生産地だった近江国・国友の鉄炮鍛冶からも高い評価を得ていました。可部屋集成館には、たたら製鉄に関する歴史資料、歴代当主が収集した格調高い美術工芸品などが収蔵・展示。隣接する櫻井家住宅は18世紀のはじめに建てられたもので、国の重要文化財に指定され、庭園は国の名勝となっています。1803年に櫻井家に御成りになった松江藩主・松平治郷(不昧)公は、この庭に流れる滝に「岩浪」という銘をつけています。
また、最近ではTBSドラマ「VIVANT」のロケ地のひとつとして注目を集めました。


【写真】左:庭園 右:可部屋集成館

[住所]仁多郡奥出雲町上阿井1655
[TEL]0854-56-0800
[営業]9:00~16:30 (3月下旬~12月上旬)
[定休日]月曜(祝日の場合は翌日)、12月中旬~3月中旬
[料金]【集成館・庭園共通券】大人1000円、高大生650円、小中生450円
【集成館】大人700円、高大生400円、小中学生300円
【庭園】大人400円、高・大学生300円、小中学生200円


雲南市にある「田部家」についてはこちら

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