2023年02月16日 公開
県庁所在地・松江市のお隣、鳥取県との県境に位置する安来市。この街には、地元の人々を中心に、古くから厚い信仰が寄せられている山陰の名刹「清水寺」と「雲樹寺」があります。
左:清水寺 右:雲樹寺
2つのお寺は車で5分と近くにあり、清水寺は「鬼」、雲樹寺は「天女」にゆかりがあるお寺です。安来の鬼と天女は、実は、どちらも幸福をもたらす存在。両参りすることで良運を引き寄せるといわれます。文化財や景観など、見どころにもあふれた寺院は、新しい取り組みにも積極的で、お参りもしやすいのも魅力。さらなるご利益を求めて安来の福めぐりの旅に出かけましょう!
「鬼」の清水寺と「天女」の雲樹寺。強面の鬼と優美な天女は、一見、正反対のようですが、なぜどちらも幸運を導く存在なのでしょうか。
清水寺の鬼は「鬼大師(おにだいし)」と呼ばれる偉いお坊様の仮の姿。外からの邪気を祓うといわれています。一方、雲樹寺の天女は音楽を奏で、音色とともに天上界から内に幸運をもたらすといわれています。両寺院をお参りすることは、“災いを退け幸運を呼び込む” ということ。日常の喧騒から離れた空間で、身も心も清めて福を巡らせましょう。
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清水寺は、用明天皇2年(西暦587年)に尊隆上人(そんりゅうしょうにん)によって創建されたと伝わる天台宗の寺院です。寺伝によれば、鬱蒼とした夜の闇に、山が光っているのを里の人たちが気味悪がって、修行でこの地を訪れていた尊隆上人に相談し、上人が光の源をたどった先で、白髪の老人に観音様を託され、その像を安置するために草庵を結んだのが始まりとされています。
清水寺は山全体がひとつのお寺で、往時には48もの僧坊が山の中に建ち並んだと伝わっています。深い木立に囲まれた石畳の参道を登ると、山の中腹とは思えない堂々とした石造りの階段があり、その先に歴史ある本堂や三重塔が見えてきます。神聖な空気が漂うなか、春には桜が咲き乱れ、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色へと、四季折々で美しい色彩にあふれます。
清水寺が厄払いのお寺として信仰を集めるようになったのは、推古天皇の時代までさかのぼります。597年、推古天皇の夢に清水寺のご本尊の十一面観音が現れ、厄払いの霊験あらたかなことを悟り、新たに本堂が造営されました。
今も厄除けのご祈祷のために、県外からも多くの参拝客が訪れますが、ご祈祷後に授与品として授けていただけるのが「鬼大師のお札」です。鬼大師は清水寺ならではの呼称で、一般的には「角大師(つのだいし)」の名で知られています。
かつて世に疫病が流行った時代、ある高僧が疫病にかかり、病の苦しさ、つらさを忘れぬよう、その姿を弟子たちに書写させました。そして鬼の姿となって人々を災厄から守ったことで、以来、邪気を祓う存在として人々の信仰を集めています。
なお、ご祈祷の時間がない人は、本堂にある授与所でも鬼大師のお札をいただくことができます。
5万坪にもなる広い境内は、歴史的建造物が自然と一体となった見事な景観や、文化財にも指定されているお堂や仏像など、見どころも豊富です。その一つ一つが、 たくさんの時代を超えて現在まで大切に守られてきました。
全国的にも珍しい、中を登ることができる三重塔は高さ33m。島根県の指定文化財です。総けやき造りで、軒下に施された装飾は見ごたえ十分。また、二層、三層とそれぞれに美しい見晴らしを望めます。※1週間前の事前予約が必要
※特別な許可をいただき、安全対策を行ったうえで撮影しています。
石畳の趣きある参道は、静寂と緑の香りに包まれ、右手に清流を見ながら長い石の階段を登ります。また精進料理を楽しめる旅館も並びます。
国指定重要文化財。堂内には寺名の由来となった湧き水が今でもたたえられています(非公開)。秘仏である本尊の十一面観音像は、正月三が日と、4月29日、7月17日に御開帳。
平安時代から伝わる仏像や工芸品など、寺宝や文化財を宝物館で公開しています。一般公開は年2回あり、それ以外の期間は1週間前までの予約が必要。
石畳の参道を抜けると、まず目に飛び込んでくる稲荷社。山肌を縫うように連なる赤い鳥居は、広い境内でもひと際目を引きます。
鬼大師のお札のほかにも、御朱印、お守りなどさまざまな種類の授与品が本堂の外陣に並びます。得たいと願うご加護に合った授与品を選び、思い出とともにお持ち帰りください。
清水寺のふもとや境内には旅館や食事処があり、地元の食材を使った体に優しい精進料理を味わえます。なかでも、精進料理の一品として生まれた清水羊羹は、昔ながらの原材料と製法を守り、小豆の風味を活かした素朴な風味が人気。お土産にもおすすめです。
清水寺
〒692-0033 島根県安来市清水町528[map]
TEL:0854-22-2151
[開山時間]8:00~17:00(最終入山 16:30)
雲樹寺は、約700年の歴史を守り続ける臨済宗妙心寺派の古寺です。後醍醐天皇から「国済」、後村上天皇から「三光」の国師号をたまわった稀代の名僧、孤峰覚明(こほうかくみょう)によって1322年に創建されました。
雲樹寺に残る伝説によると、孤峰覚明は土地を荒らしていた蛇を追い出して雲樹寺を創建。その様子を眺めていた大亀は甲羅を脱いで僧侶となり、その時の甲羅は雲樹寺の池にある丸い石になったと伝わります。
また、日本に現存する中では最古の「朝鮮鐘」が安置されるなど、貴重な文化財も多く残っています。
本堂裏の「元禄の庭」は裏山と一体となった枯山水庭園。4月はツツジ、5月はサツキが咲き誇ることから、「サツキ寺」「ツツジ寺」の別名も持っています。庭園美はもちろん、落ち着いた雰囲気があり、見ているだけで心が安らぎます。本堂、開山堂、庭園は「拝観」の申し込みが必要ですが、ご住職のユーモアたっぷりの案内も雲樹寺の魅力。楽しみながら仏教の教えを学べると人気を集めています。
孤峰覚明を祀る「開山堂」には、約1300年前に鋳造された国指定重要文化財の朝鮮鐘が安置されています。鐘の上部に刻まれているのは、天女のレリーフ。天女は仏教界では天上世界の女性を指し、このレリーフでは、それぞれに楽器を持ち、音楽に乗せて目に見えぬ幸せを人々の心の内に運ぶ存在として描かれています。
実はこの朝鮮鐘、孤峰覚明が中国から持ち帰った際に、中海(なかうみ)に一度沈んでしまいました。その後50年もの間、海底に眠っていたのですが、幸運にも引き揚げられて雲樹寺に奉納されたのです。もしかすると、幸運をもたらす天女のはからいがあったのかも。朝鮮鐘は拝観時にしか見学できない貴重なものなので、参拝の際はぜひ拝観することをおすすめします。
古い歴史を持つ禅宗寺院の荘厳さを保ちつつ、芸術的な庭園、クスッと微笑むようなユーモアや親しみやすさが共存。コンパクトな境内ながらも、見どころは豊富で楽しみながら散策できます。
雲樹寺の魅力の一つでもある、ご住職や職員の方の案内付きの拝観は、受付窓口で随時申し込みができます(拝観料500円)。ユーモアにあふれた語り口は親しみやすく、お寺の歴史や、「祈りの場」としての役割、また人としてのあり方など、仏教の教えをより深く身近に感じながら、学ぶことができます。
本堂裏に広がる「元禄の庭」は、山の斜面を利用してツツジやサツキが植えられ、春から初夏にかけて、打ち寄せる波のように重なりあって咲き誇ります。その他にも、春先のヤマザクラ、夏のスイレン、また手水舎に奉納される花手水など、境内のいたるところで四季折々の美しい花々が見られます。
創建当時から700年にわたり雲樹寺に佇む四脚門(よつあしもん)。これは門としての格式がとても高く、山陰では珍しい形式。天皇家ゆかりの寺院ならではといえ、国の重要文化財に指定。
威風堂々とした構えの山門の上部には、後醍醐天皇宸筆とされる雲樹寺の正式名称「天長雲樹興聖禅寺」の額が掲げられ、参拝者を出迎えます。雲樹寺という名前は、全国でもここだけと言われています。
山門の近くの祠に祀られている「酒断ち地蔵」は、欲望の化身である鬼を踏みつけています。酒に飲まれることなく、いかなる時も自分を見失わないようにとの呼びかけも。
仏殿の奥にある新しい庭園「瑞雲苑」には、小さな石像があちらこちらに。石像たちは地元の方が自ら掘って奉納しているとか。ユーモラスな表情に心が和みます。
ネコをかたどったオリジナルの開運だるまや、愛らしい授与品が揃います。多くはご住職が考案されたもので、白羊羹もそのひとつです。ご住職が一つ一つ手書きした包装紙にくるまれた羊羹は、柚子の爽やかな風味が口の中に広がります。
参拝した証となる御朱印には、通常版のほかに、天女をモチーフにしたオリジナルキャラクターが登場する御朱印など種類も豊富で、ついつい目移りしてしまいそう。同じく天女が描かれている特製御朱印帳は地元の藍染の老舗・天野紺屋とのコラボ商品。ここだけの特別な品です。
雲樹寺
〒692-0056 島根県安来市清井町281[map]
TEL:0854-22-2875
[参拝時間]8:30~17:00
※写真は第1弾のものです
「鬼と天女の福めぐり」をした際にぜひいただきたいのが、特別御朱印と御朱印台紙です。数量限定・御朱印台紙(価格:1500円)は清水寺、雲樹寺のどちらでも購入できます。両寺院にお参りして、鬼と天女の特別御朱印を授けていただき、台紙に貼り付ければ完成!
「ご縁の日限定」の御朱印も登場!
第2弾では、特別御朱印が「通常版(朱色)」と「ご縁の日限定(金色)」2種類登場!販売終了時期は未定、価格は各500円となります。
【ご縁の日限定】
毎月17日 ※雲樹寺は4月24日も販売します
世界的に有名な足立美術館や、美肌の湯であるさぎの湯温泉など安来市には歴史、文化、芸術と見どころ満載!