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あの世とこの世の境「黄泉比良坂(よもつひらさか)」出雲神話に触れるミステリー旅

黄泉比良坂

島根県松江市にある「黄泉比良坂(よもつひらさか)」という場所を聞いたことはありますか。神話や歴史が好きな方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。NHKのドキュメンタリーでも取り上げられ、全国的にも知られるようになりました。

実はこの場所「黄泉の国への入り口」といわれる、ちょっとミステリアスな雰囲気を漂わせている場所。また、「天国への手紙ポスト」が話題となり、人々の注目を集めています。

今回はそんな黄泉比良坂と神話の世界、さらに関連する出雲神話ゆかりの神社などを巡る旅をご案内します。神話と現代が交差するこの地から、島根の新たな魅力を発見する旅に出かけましょう。

イザナキ・イザナミ神話の舞台・黄泉比良坂

黄泉比良坂は島根県にあった

黄泉比良坂は、古事記や日本書紀の神話の中で「あの世とこの世の境にある場所」として登場します。そしてそのミステリアスな場所が、島根県出雲地方にあると書かれているのです。
古事記に「伊賦夜坂(いふやざか)」と記されたその場所は、現在の松江市東出雲町揖屋(いや)にあります。
松江城や宍道湖がある松江市の中心から車で約30分。足立美術館や安来節で有名な安来市との中間に位置しています。

町はずれにあの世の入り口が?

東出雲町揖屋地内に近づくと、国道9号線沿いに「黄泉比良坂」の看板が見えてきます。看板を目印に南へ約300m進み、ゆるやかな坂道を上っていくと、やがて伝承地と語られる地にたどり着きます。
住宅街から外れた、山林のひっそりとした場所。入り口には注連縄を張った石柱が2本立ち、その先はまるで神聖な場所のよう。

黄泉平坂・伊賦夜坂 伝説地の石碑

注連縄をくぐると「神蹟 黄泉平坂・伊賦夜坂 伝説地」と刻まれた石碑が立っています。青々と茂る木立に囲まれ、静まり返っています。あたりには、神話にも登場する桃の木があり、4月頃になるとピンク色の花が咲き彩ります。
さらに奥に進むと、そこにはまるで神話の世界から飛び出してきたかのような、大きな岩が3つ並んでいます。

封印された黄泉の国への道

大岩で塞がれた黄泉の入り口

古事記の中で黄泉比良坂が登場する最も有名なシーンといえば、イザナキノミコトの黄泉の国訪問でしょう。
イザナキノミコトは、亡くなった妻イザナミノミコトを求めて黄泉の国を訪ねますが、変わり果てたイザナミの姿に驚き、黄泉比良坂を通って命からがら現世に戻ってきます。そして、黄泉の国への入り口を千引の岩(*)で塞いだとされています。
この場所にある大きな岩も、まるでその千引の岩を彷彿とさせ、周囲はどこか神秘的な空気が漂います。
(*ちびきのいわ=千人がかりで動かせるほどの大岩)

永遠の時間が流れる静寂な空間

あの世とこの世を結ぶ象徴的な場所

イザナキとイザナミの神話では、黄泉比良坂は二人が決別した悲しい場所として描かれていますが、古事記にはもう一つ登場するシーンがあります。
八十神(やそがみ)に追われたオオクニヌシノミコトは、根の国(地下にある国)へと逃れます。そこにはスサノオノミコトが待ち受けていました。スサノオの試練に打ち勝ったオオクニヌシは、「大国主」として祝福され、やはり黄泉比良坂を通って現世へ戻ります。(≫[関連リンク]古事記の神話

このように黄泉比良坂は、神話において深い意味と歴史があり、重要な役割を果たしていました。

亡き人への想いを届ける場所として

天国への手紙ポストが話題に

天国への手紙ポスト

神話上では有名な場所ですが、実は地元ではあまり知られていませんでした。それが変化したきっかけは、2011年の東日本大震災です。震災で家族や親しい人を突然失った人々が、懐かしい故人に会いたい気持ち、あるいは伝えたかった想いを胸に抱いて訪れるようになったのです。
地域の人々は、訪れる方の心を癒す機会になればと、2017年に「天国への手紙ポスト」を設置しました。

ポストの横には、その場で手紙を書けるよう便箋とペンも用意してありますが、事前に書いてから訪れるとよいでしょう。ポストに投函すると、年に1度(6月)その手紙がお焚き上げされます。
今では県内外から様々な方が足を運び、手紙を投函するようになりました。

黄泉比良坂は、今や神話ゆかりの地としてだけではなく、亡き人を偲び、静かに想いを伝える場所として特別なスポットになっています。
郵送でも受け付けています。下記へ手紙をお送りください。
〒699-0109 島根県松江市東出雲町錦浜583-18
 東出雲ライオンズクラブ「天国への手紙」宛

旅の思い出に、御朱印とガイド

黄泉比良坂御朱印 黄泉比良坂御朱印所(平賀公会堂)

黄泉比良坂上り口にある平賀公会堂には御朱印もあり、またオリジナルの御朱印帖も販売しています。(御朱印に書かれている「黄泉津大神」とはイザナミノミコトのこと)
地元ボランティアによる黄泉比良坂ガイドもあります。


■ 御朱印所(平賀公会堂)

[時間]土日祝日の9:30~15:30頃まで
[住所]松江市東出雲町揖屋2467

■ ガイド

[時間] 5 ~ 7 、9、11月の第2日曜 9:30出発
[集合]黄泉比良坂駐車場
[申込]0852-52-2428(松江観光協会 東出雲町支部)
詳細はこちら ≫


駐車場・休憩所

黄泉比良坂には車が5台程度止められる駐車場があります。駐車場まで上る道は幅が狭く、車のすれ違いが難しい場合もありますのでご注意ください。
駐車場横には休憩スペースもあり、黄泉比良坂についての資料や、東出雲町の観光情報なども掲示してあります。

黄泉比良坂(よもつひらさか)

島根県松江市東出雲町揖屋 [MAP]

TEL:0852-55-5840 (松江市東出雲支所地域振興課)

黄泉比良坂への交通アクセス

黄泉比良坂へ行く方法は、主に車と電車の二通りあります。現地には案内看板も設置されています。

■ 車で行く場合

  • 【松江方面から】国道9号線 東出雲町揖屋地内「黄泉比良坂」看板を目印に右折、案内に従って右折し約400m
  • 【安来方面から】国道9号線 東出雲町揖屋地内 平賀交差点を左折、「黄泉比良坂」看板を目印に左折し約400m

■ JRで行く場合

  • JR 山陰本線 揖屋駅下車、駅前交差点を右折し道なりに約1.3km、「黄泉比良坂」看板を目印に右折し約400m

案内所&レンタサイクル

まちの駅女寅

JR揖屋駅横の便利な「まちの駅」

JR 揖屋駅に隣接して情報案内所「まちの駅女寅(めとら)」があります。黄泉比良坂への行き方を確認したり、手軽にレンタサイクルを借りられて便利。東出雲のお土産・小物やカフェコーナーもあるので、休憩にもぴったりです。

詳細はこちら ≫

 

イザナミノミコトを祀る揖夜神社

1350年以上の歴史ある神社

黄泉比良坂から約1km西に位置する揖夜神社は、かつて伊賦夜(いふや)と呼ばれた同じ地にあります。
イザナミノミコト(伊弉冉命)とともに、オオナムチノミコト(大巳貴命)、スクナヒトナノミコト(少彦名命)、コトシロヌシノミコト(事代主命)を主祭神としています。
出雲国風土記では「伊布夜社(いふやのやしろ)」、日本書紀では「言屋社(いふやのやしろ)」と記され、平安時代以前から鎮座する由緒ある神社。出雲国造(いずもこくそう)との関係が深い「意宇六社(おうろくしゃ)」の一つとして、江戸時代から「六社参り」の参拝が絶えず、御遷宮には今でも国造のご奉仕があります。

国生みの母神で知られるイザナミノミコト

大社造の本殿

イザナミノミコトは、日本のあらゆるものの産みの親の神様として敬われています。
揖夜神社本殿は出雲大社と同じ大社造です。神座は(出雲大社と逆の)本殿正面に向かって右向き(南向き)になっています。また、本殿右側の玉垣そばからは、神座を正面から参拝できます。

授与品やお祭り

御朱印 穂掛祭

御朱印などの授与品は、社務所でお授かりいただけます。(休みの場合もあるので、事前に確認の上お出かけください。)
毎年8月28日には、穂掛祭・一ツ石神幸祭(船神事)が斎行されます。夜には西揖屋から神社へ、ご神体が陸船でお還りになり、神社に到着すると同時に花火が打ち上げられます。

揖夜神社

島根県松江市東出雲町揖屋2229 [MAP]

TEL:0852-52-2043

イザナミが眠る比婆山

比婆山久米神社

比婆山久米神社

古事記には、イザナミは出雲と伯耆の境にある比婆山に葬られたと書かれています。島根・鳥取の県境にある比婆山の山頂には久米神社(奥宮)が、麓には下の宮があり、安産の神様として多くの参拝者が訪れます。

詳細はこちら ≫

 

揖夜神社と合わせて古代出雲の聖地・意宇六社参り

黄泉比良坂や揖夜神社のある地域は、奈良・平安時代には意宇(おう)郡と呼ばれ、出雲国庁がある古代出雲の中心地でした。国庁周辺にある、熊野大社や八重垣神社などの六つの神社は、「意字六社」として特別な崇敬を受け、これらを巡る「六社参り」はご利益があるとされています。
揖夜神社を含む意宇六社を巡りながら、神話に彩られた古代出雲を感じてみませんか。

熊野大社

古くから出雲大社と並ぶ、出雲国の大社として由緒ある神社

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六所神社

出雲国庁に隣接し、出雲国の総社と記されている

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眞名井神社

真名井の滝は、神水と言われ神事に用いられた

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神魂神社

イザナミノミコトを祀り、最古の大社造として国宝に指定

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八重垣神社

鏡の池の「縁占い」が人気。恋愛成就の最強パワースポット

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3分で読める!イザナキの黄泉国訪問神話

イザナキはイザナミを訪ねて黄泉の国へ

世の始まりの時、イザナキノミコトとイザナミノミコトの夫婦神は、力を合わせて日本の島々や神々を産み出しました。ところが、火の神を産んだ時にイザナミは大やけどを負い、それが原因で亡くなってしまいます。
悲しみに暮れるイザナキは、愛する妻イザナミを忘れることができず、黄泉の国へ訪ねて行きます。

イザナキの黄泉国訪問

黄泉がえりの約束

イザナキがもう一度帰ってきてほしいと懇願すると、イザナミは「決して姿を見ないでほしい」と言い残して、黄泉の神の元へ相談に行きます。
ところが待てど暮らせど帰って来ないので、待ちきれなくなったイザナキがのぞいてみると、イザナミは世にも恐ろしい姿に変わり果てていました。恐ろしくなったイザナキは慌てて逃げ出します。

イザナキ・イザナミと千引の岩

永遠の別れ

辱めを受けて怒ったイザナミと黄泉の軍勢が追いかけて来ます。イザナキは、何とかそれを振り切って黄泉比良坂を抜け、命からがら現世に逃げ帰りました。
この時、黄泉比良坂の坂本にあった桃の実を投げて、難を逃れたといいます。
イザナキは大きな千引の岩で入り口をふさぎ、イザナミとは永遠の決別をすることになるのです。

東出雲町の名物

おすすめのお土産

東出雲の干し柿

東出雲は干し柿の里として有名で色・大きさ・味ともに日本一といわれます。

かまぼこ

「揖屋かまぼこ」は町を代表する特産品で県下一の生産高を誇ります。

黄泉比良坂せんべい

まちの駅女寅で、黄泉比良坂にちなんだ手焼きせんべいを旅の思い出に。

周辺観光情報

松江エリアと安来エリアの間に位置する東出雲町。黄泉比良坂を訪れる際は、2つのエリアを含めて旅行プランを立てると、充実した旅を楽しむことができるでしょう。

松江エリアの紹介

水の都ともよばれる美しい歴史の町 松江エリア。夕日百選の「宍道湖」や「国宝 松江城」が町のシンボルとなっています。松江城を囲むお堀を遊覧船で巡れば、武家屋敷や江戸時代の町並みが広がり、情緒あふれる城下町の風景に歴史ロマンを感じられます。
「縁占い」ができる神社や、「願い石・叶い石」がある神社など多くのパワースポットが点在。自然に触れたい人は、牡丹が有名な庭園や屋内で花が楽しめるスポットがあります。ご当地グルメを味わうなら、宍道湖のシジミや出雲そば、和菓子などがおすすめ。さらに、神の湯と称えられた玉造温泉をはじめ、温泉地も複数あるのでぜひ堪能してください。

安来エリアの紹介

安来エリアは、たたら製鉄や港町として栄えた歴史があり、独自の文化が育まれてきました。豊かな自然とともに、質の高い文化・芸術や匠の技が今に息づいています。横山大観をはじめ多数の名品を所蔵する足立美術館や、戦国時代屈指の難攻不落の山城、良運を引き寄せるといわれる鬼と天女の両参りなど、多彩な観光スポットがあります。
安来名物といえば、ユーモアたっぷりに踊る「どじょうすくい」とどじょう料理です。また、県内最大のいちご産地でもあり、いちご狩りを楽しめるスポットや、いちごスイーツのお店も人気です。

 

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